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風を追う — オートレーサーを目指す少年  作者: sasaki


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50/50

― 風を掴むどころじゃない。魂を揺さぶられた瞬間 ―

0.01秒

風見の MT-09 の後ろに乗って、

遼は川口オートレース場に連れてこられた。

スタンドに座ると、

風見が言った。

風見「遼。

ここから先は、言葉いらねぇぞ。

“感じる”だけでいい」

遼「……大げさだろ」

風見「まぁ見てろって」

遼は半信半疑だった。

だが――

その数秒後、

遼の価値観はひっくり返る。

風見の MT-09 の後ろに乗って、

遼は川口オートレース場に連れてこられた。

スタンドに座ると、

風見がコースを見ながら言った。

風見「遼。

オートレースはスタート勝負”だ。

ここが一番痺れる」

遼「スタート勝負……」

風見「クラッチミートの一瞬で勝負が決まる世界だぞ」

遼はゴクリと喉を鳴らした。

8台のマシンがスタートラインに並ぶ。

選手たちは前傾姿勢だ。

遼(心の中)

(……緊張感がヤバい……なんだこの空気……)

風見「遼、よく見とけ。ここからレースが始まるぞ。」


パンッ!!(スタート音)

同時に、8人がスタートする。

ドガァァァァァァン!!

遼「っ……!!?」

空気が爆発したような音。

地面が震える。

胸に衝撃が走る。

遼(心の中)

(一瞬ででこんなに違うのかよ……!

原付の発進とは別世界だ……!)

風見「これが“0.01秒の世界だ”。

クラッチの操作、アクセルの開け方――全部が一瞬で決まる」

遼は目を見開いたまま動けなかった。

先頭の選手が、

信じられない角度でマシンを倒し込む。

ガァァァァァッ!!(火花)

遼「……倒れねぇのかよ……!」

風見「倒れねぇよ。

“流してる”んだ。

タイヤの限界を感じながらな」

遼(心の中)

(怖ぇ……

でも……

なんだこれ……

めちゃくちゃ……かっけぇ……!!)

インに刺す。

アウトから巻く。

スリップに入って一気に抜く。

ドォォォン! ドォォォン!

遼の心臓はずっとバクバクしていた。

遼(心の中)

(速い……

怖い……

でも……

なんでこんなに胸が熱くなるんだよ……!)

風見「遼。

お前、今……

“走りたい”って思ってるだろ」

遼「……っ……思ってる……

めちゃくちゃ……走りてぇ……!!」

風見は満足そうに笑った。

風見「だろ?

クラッチ握った瞬間から、

人生変わるんだよ」

レースが終わり、

観客席から声が上がる。

遼はまだ立ち上がれなかった。

興奮で足が震えていた。

遼「……風見さん……

俺……」

風見「言えよ」

遼「……俺も……

あそこで走りたい……!!」

風見はニッと笑った。

風見「よし。

じゃあ遼。

“走り方”教えてやるよ」

遼の人生は、

この瞬間に決まった。






一瞬の勝負

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