― 風を掴むどころじゃない。魂を揺さぶられた瞬間 ―
0.01秒
風見の MT-09 の後ろに乗って、
遼は川口オートレース場に連れてこられた。
スタンドに座ると、
風見が言った。
風見「遼。
ここから先は、言葉いらねぇぞ。
“感じる”だけでいい」
遼「……大げさだろ」
風見「まぁ見てろって」
遼は半信半疑だった。
だが――
その数秒後、
遼の価値観はひっくり返る。
風見の MT-09 の後ろに乗って、
遼は川口オートレース場に連れてこられた。
スタンドに座ると、
風見がコースを見ながら言った。
風見「遼。
オートレースはスタート勝負”だ。
ここが一番痺れる」
遼「スタート勝負……」
風見「クラッチミートの一瞬で勝負が決まる世界だぞ」
遼はゴクリと喉を鳴らした。
8台のマシンがスタートラインに並ぶ。
選手たちは前傾姿勢だ。
遼(心の中)
(……緊張感がヤバい……なんだこの空気……)
風見「遼、よく見とけ。ここからレースが始まるぞ。」
パンッ!!(スタート音)
同時に、8人がスタートする。
ドガァァァァァァン!!
遼「っ……!!?」
空気が爆発したような音。
地面が震える。
胸に衝撃が走る。
遼(心の中)
(一瞬ででこんなに違うのかよ……!
原付の発進とは別世界だ……!)
風見「これが“0.01秒の世界だ”。
クラッチの操作、アクセルの開け方――全部が一瞬で決まる」
遼は目を見開いたまま動けなかった。
先頭の選手が、
信じられない角度でマシンを倒し込む。
ガァァァァァッ!!(火花)
遼「……倒れねぇのかよ……!」
風見「倒れねぇよ。
“流してる”んだ。
タイヤの限界を感じながらな」
遼(心の中)
(怖ぇ……
でも……
なんだこれ……
めちゃくちゃ……かっけぇ……!!)
インに刺す。
アウトから巻く。
スリップに入って一気に抜く。
ドォォォン! ドォォォン!
遼の心臓はずっとバクバクしていた。
遼(心の中)
(速い……
怖い……
でも……
なんでこんなに胸が熱くなるんだよ……!)
風見「遼。
お前、今……
“走りたい”って思ってるだろ」
遼「……っ……思ってる……
めちゃくちゃ……走りてぇ……!!」
風見は満足そうに笑った。
風見「だろ?
クラッチ握った瞬間から、
人生変わるんだよ」
レースが終わり、
観客席から声が上がる。
遼はまだ立ち上がれなかった。
興奮で足が震えていた。
遼「……風見さん……
俺……」
風見「言えよ」
遼「……俺も……
あそこで走りたい……!!」
風見はニッと笑った。
風見「よし。
じゃあ遼。
“走り方”教えてやるよ」
遼の人生は、
この瞬間に決まった。
一瞬の勝負




