オートレース?
動き始める
夕方のバイト帰り。
遼はまた、あのバイク屋 「MOTO GARAGE」 の前で原付を止めていた。
黒いレーサータイプのバイク。
夕陽を浴びて、まるで生き物みたいに光っている。
遼(心の中)
(……やっぱ、かっけぇな)
その時――
風見「お、今日も来たな。風を掴みに」
遼「……その口癖、まだ言うのかよ」
風見「一生言うぞ。俺の生き方だからな」
風見駿(22)。
フリーターで、バイク屋のバイト。
元オートレーサー志望。
心臓の持病で夢を断念した男。
飄々としてるけど、
どこか芯の強さを感じる。
風見「なぁ遼。
お前、バイクに興味あるだろ」
遼「……まぁ、ちょっとは」
風見「ちょっとじゃねぇな。
その目は“走りたい”目だ」
遼「……走りたいって、どこをだよ」
風見は工具を置き、
バイクのタンクを軽く叩いた。
風見「サーキットでもいい。
峠でもいい。
でも――」
風見は少しだけ真剣な顔になった。
風見「“オートレース”って知ってるか?」
遼「……オートレース?」
遼は聞いたこともない単語だった。
風見「バイクで競う公営競技だよ。
専用のマシンで、専用のコースを走る。
スピードも、迫力も、他とは桁違いだ」
遼「へぇ……そんなのあるんだな」
風見「あるさ。
俺はそこを目指してた。
でも……心臓のせいで無理だった」
遼「……」
風見は笑って続ける。
風見「でもな、夢を諦めたわけじゃねぇ。
サーキットで走るたびに思うんだよ。
“風を掴む”ってのは、どこでもできるってな」
遼「……風を掴む、ね」
風見「そう。
バイクに乗って、風を切って、
自分の世界を走る。
それができたら、人生変わるぞ」
遼はその言葉に、
胸の奥が熱くなるのを感じた。
遼「……オートレースって、どんな走りなんだよ」
風見「気になるか?」
遼「……まぁ、ちょっとな」
風見はニヤッと笑った。
風見「よし。
今度、動画見せてやるよ。
“風を掴む走り”ってやつをな」
遼「……別に期待してねぇけど」
風見「嘘つけ。
その顔、完全に掴んでるぞ」
遼は否定しなかった。
その日、遼は初めて知った。
“オートレース”という世界があることを。
そして――
その言葉が、
遼の未来を決定的に変えていく。
初めて




