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風を追う — オートレーサーを目指す少年  作者: sasaki


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47/50

風をつかんだか?

レーサー

ピザ屋のバイトを始めて数週間。

遼は配達のたびに、

風を切る感覚に少しずつ魅了されていった。

そんなある日の夕方。

雨上がりの道路を原付で走っていた遼は、

ふと視界の端に“それ”を見つけた。

店名は 「MOTO GARAGE 」

シャッターは半分開いていて、

店先には数台の中古バイクが並んでいる。

遼は無意識に原付を止めた。

遼(心の中)

(……なんだ、この店。雰囲気が違う)

店の奥には、

黒いレーサータイプのバイクが一台。

夕陽を浴びて、

まるで“呼んでいる”ように輝いていた。

遼は吸い寄せられるように近づいた。

遼「……かっけぇ……」

その瞬間――

背後から声がした。

――「お、風をつかんだか?」――

振り返ると、

作業着姿の青年が立っていた。

年齢は22歳くらい。

髪は少し伸び気味で、

どこか飄々とした雰囲気。

青年「その顔、完全に“風を掴んだ”顔だな」

遼「……は? 何それ」

青年「俺の口癖。

バイクに惹かれた瞬間のことを、

“風を掴む”って言うんだよ」

遼「……変な口癖」

青年「だろ? でも当たってるだろ?」

遼は否定できなかった。

風見「俺、風見。

この店でバイトしてるフリーター」

遼「……フリーター?」

風見「そう。

元々オートレーサー目指してたんだけどな」

遼「……え?」

風見は笑って肩をすくめた。

風見「心臓に持病があってさ。

受験資格が通らなかった。

だから今はサーキットで走ってる。

“本気じゃない走り”なら問題ないからな」

遼「……そうなんだ」

風見「でもよ、夢は諦めてねぇよ。

“風を掴んで走る”ってのは、

どこでもできるからな」

遼はその言葉に、

胸が少し熱くなるのを感じた。

風見「お前、バイク好きになるタイプだな」

遼「……なんで分かるんだよ」

風見「目がいい。

バイク見た時の目が、俺と同じだった」

遼「……」

風見「興味あるなら、触ってみるか?」

遼「えっ……いいのか?」

風見「いいよ。

バイクは“触った瞬間”に人生変わるからな」

遼はゆっくりと、

黒いレーサータイプのバイクに手を伸ばした。

金属の冷たさと、

どこか生き物のような存在感。

遼(心の中)

(……すげぇ)

風見は満足そうに笑った。

風見「ほらな。

風、掴んだだろ?」

遼は何も言えなかった。

ただ、胸の奥が熱くてたまらなかった。


遼はまだ知らない。

この出会いが、

自分の未来を大きく動かすことを。



アルバイト

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