幼馴染
温かみ
遼がバスケ部の練習を終え、
体育館裏でひとり水を飲んでいたとき。
「……遼」
柔らかい声がした。
振り返ると、
ほのかが立っていた。
遼「……なんだよ」
ほのか「今日、部活……大変だったんでしょ?」
遼「別に」
ほのかは遼の“別に”が嘘だとすぐ分かる。
昔から、遼の表情を読むのが得意だった。
ほのか「……顔、ちょっと赤いよ。
誰かとケンカした?」
遼「してねぇよ」
ほのか「嘘。
遼、怒ったときだけ目が少し鋭くなるもん」
遼「……観察すんなよ」
ほのかは小さく笑った。
名前は 藤沢 ほのか。
遼と同い年。
穏やかで、優しくて、
人の気持ちに敏感なタイプ。
小学生の頃は、
遼の家の前で待ち合わせて一緒に登校したり、
放課後に公園でバスケをしたり、
兄のサッカーの試合を一緒に見に行ったり――
まるで“セット”のように仲が良かった。
でも、中学生になってから、
少しずつ距離ができていった。
遼がバスケ部の練習を終え、
体育館裏でひとり水を飲んでいたとき。
「……遼」
柔らかい声がした。
振り返ると、
ほのかが立っていた。
遼「……なんだよ」
ほのか「今日、部活……大変だったんでしょ?」
遼「別に」
ほのかは遼の“別に”が嘘だとすぐ分かる。
昔から、遼の表情を読むのが得意だった。
ほのか「……顔、ちょっと赤いよ。
誰かとケンカした?」
遼「してねぇよ」
ほのか「嘘。
遼、怒ったときだけ目が少し鋭くなるもん」
遼「……観察すんなよ」
ほのかは小さく笑った。
ほのか「ねぇ遼。
最近……ちょっと無理してない?」
遼「……は?」
ほのか「部活も、勉強も、家のことも……
全部ひとりで抱え込んでる感じがする」
遼「……別に抱え込んでねぇよ」
ほのか「ううん。
遼は昔から、つらい時ほど“平気”って言うから」
遼「……」
ほのかは遼の横に座り、
少しだけ距離を空けて言った。
ほのか「小学生の頃みたいに、
なんでも話してくれなくてもいいよ。
でも……遼が苦しそうなの、見てられない」
遼「……俺は苦しんでねぇよ」
ほのか「じゃあ、なんで泣きそうな顔してるの?」
遼「……っ」
遼は思わず顔をそらした。
(……なんでこいつは、こんなに分かるんだよ)
ほのか「……バスケ、辞めるんでしょ?」
遼「……なんで知ってんだよ」
ほのか「遼のこと、見てるから」
遼「……」
ほのか「遼が殴ったって噂、聞いたよ。
でも……遼が誰かを殴るなんて、よっぽどのことだよね」
遼「……あいつが、兄貴のこと馬鹿にしたから」
ほのか「そっか……」
ほのかは遼の横顔を見つめた。
ほのか「遼はさ、
誰よりも優しいのに、
誰よりも自分を責めるんだね」
遼「……優しくなんかねぇよ」
ほのか「優しいよ。
だから、殴ったんだよね。
兄貴のこと、大事にしてるから」
遼「……」
ほのかは立ち上がり、
遼の前にそっと手を差し出した。
ほのか「遼。
無理しないでね。
私、ずっと味方だから」
遼はその手を取らなかった。
でも――
その言葉だけは、胸に深く刺さった。
寄り添う




