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風を追う — オートレーサーを目指す少年  作者: sasaki


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44/50

暴力

煽り

練習が終わり、

遼がボールを片付けていると、

後輩の一人がわざとらしく近づいてきた。

生意気な後輩・佐野

「相馬先輩ってさぁ……

なんでスタメンなんすか?」

遼「……は?」

佐野

「声出さないし、チームの輪にも入らないし。

正直、先輩より上手い人いっぱいいると思うんすけど」

遼「……」

佐野

「監督に気に入られてるだけっすよね?

“相馬家の息子”ってだけで」

遼の胸が、ズキッと痛んだ。

(……また“家”かよ)

佐野は続ける。

佐野

「兄貴は全国大会のスターでしょ?

でも相馬先輩は“普通”っすよね。

なんか、かわいそうっすね」

遼「……やめろよ」

佐野

「え? 図星でした?」

遼「やめろって言ってんだよ」

佐野はニヤッと笑った。

佐野

「悔しいなら、もっと努力したらどうすか?

兄貴みたいにさ」

その瞬間――

遼の中で、何かが切れた。

遼は佐野の胸ぐらを掴んだ。

佐野

「な、なんすか……!」

遼「兄貴のこと、軽く言うなよ」

佐野

「は? 事実じゃ――」

バンッ

遼の拳が、佐野の頬に入った。

強く殴ったわけじゃない。

でも、はっきりと音が響いた。

佐野

「っ……! なにすんだよ!」

遼「うるせぇ!」

遼はすぐに手を離した。

怒りよりも、

自分がやってしまったことへの後悔が押し寄せた。

(……俺、何やってんだよ)

まわりの部員

「やめろ!相馬!」

体育館がざわめき皆もみくちゃになりながらも二人を引き離した。

その日の部活終わりに量は監督に伝えた

監督は驚いた顔をした。

監督

「相馬、本気で言ってるのか?」

「……はい」

監督

「殴ったことは問題だが……

お前が辞める必要は――」

「俺、チームに向いてないんで」

監督は何も言えなかった。

遼はロッカーに戻り、

静かに荷物をまとめた。

チームメイトは誰も声をかけなかった。

ただ、遠くから見ているだけ。

(……俺は、ここにいても誰の役にも立たない)

そう思った。

父は遼の退部を知ると、

冷たい声で言った。

「逃げたのか」

「……違う」

「違わない。

お前はいつもそうだ」

「……」

母は心配そうに見ていたが、

何も言えなかった。

その夜、遼は布団の中で思った。

(……俺は、何をやっても兄貴みたいにはなれない)

(……でも、俺は俺の道を探したい)

その“答え”が、

後にオートレースへと繋がっていく。




退部

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