暴力
煽り
練習が終わり、
遼がボールを片付けていると、
後輩の一人がわざとらしく近づいてきた。
生意気な後輩・佐野
「相馬先輩ってさぁ……
なんでスタメンなんすか?」
遼「……は?」
佐野
「声出さないし、チームの輪にも入らないし。
正直、先輩より上手い人いっぱいいると思うんすけど」
遼「……」
佐野
「監督に気に入られてるだけっすよね?
“相馬家の息子”ってだけで」
遼の胸が、ズキッと痛んだ。
(……また“家”かよ)
佐野は続ける。
佐野
「兄貴は全国大会のスターでしょ?
でも相馬先輩は“普通”っすよね。
なんか、かわいそうっすね」
遼「……やめろよ」
佐野
「え? 図星でした?」
遼「やめろって言ってんだよ」
佐野はニヤッと笑った。
佐野
「悔しいなら、もっと努力したらどうすか?
兄貴みたいにさ」
その瞬間――
遼の中で、何かが切れた。
遼は佐野の胸ぐらを掴んだ。
佐野
「な、なんすか……!」
遼「兄貴のこと、軽く言うなよ」
佐野
「は? 事実じゃ――」
バンッ
遼の拳が、佐野の頬に入った。
強く殴ったわけじゃない。
でも、はっきりと音が響いた。
佐野
「っ……! なにすんだよ!」
遼「うるせぇ!」
遼はすぐに手を離した。
怒りよりも、
自分がやってしまったことへの後悔が押し寄せた。
(……俺、何やってんだよ)
まわりの部員
「やめろ!相馬!」
体育館がざわめき皆もみくちゃになりながらも二人を引き離した。
その日の部活終わりに量は監督に伝えた
監督は驚いた顔をした。
監督
「相馬、本気で言ってるのか?」
遼
「……はい」
監督
「殴ったことは問題だが……
お前が辞める必要は――」
遼
「俺、チームに向いてないんで」
監督は何も言えなかった。
遼はロッカーに戻り、
静かに荷物をまとめた。
チームメイトは誰も声をかけなかった。
ただ、遠くから見ているだけ。
(……俺は、ここにいても誰の役にも立たない)
そう思った。
父は遼の退部を知ると、
冷たい声で言った。
父
「逃げたのか」
遼
「……違う」
父
「違わない。
お前はいつもそうだ」
遼
「……」
母は心配そうに見ていたが、
何も言えなかった。
その夜、遼は布団の中で思った。
(……俺は、何をやっても兄貴みたいにはなれない)
(……でも、俺は俺の道を探したい)
その“答え”が、
後にオートレースへと繋がっていく。
退部




