ぶつかる“理由”と“意地”
因縁
フィジカルトレーニング。
候補生たちはコース内をランニングしていた。
息が上がり、汗がにじむ。
それでもペースは落とさない。
そんな中――
相馬の横に、わざわざ歩幅を合わせてくる男がいた。
神谷。
父親が元トップレーサーというサラブレッド。
プライドが高く、負けず嫌い。
神谷「……お前、今日ペース遅くねぇ?」
相馬「は? 普通だろ」
神谷「いや、遅い。
そんな走りでオートレーサーになれると思ってんのかよ」
相馬「……言い方ムカつくんだよ、お前」
二人の間に、ピリッとした空気が走る。
神谷はわざと相馬の前に出て、
振り返りながら言った。
神谷「お前さ、なんでオートレーサー目指してんの?」
相馬「……急に何だよ」
神谷「いや、気になってさ。
お前、整備はできるけど走りはまだまだだろ。
“なんとなく”で来たんじゃねぇの?」
相馬「……っ」
神谷はさらに言葉を重ねる。
神谷「俺は違う。
俺は“父親を超えるため”にここにいる。
あの人の背中を追って、追って……
それでも届かねぇから、ここに来た」
相馬「……」
神谷「お前は?
何の覚悟があってここにいる?」
相馬の拳がわずかに握られる。
相馬「……覚悟ならあるよ」
神谷「へぇ? どんな?」
相馬「俺は――」
言いかけた瞬間、
教官の笛が鋭く鳴り響いた。
榊教官「お前ら! 前見て走れ!
私語してんじゃねぇ!!」
二人「……っ、はい!」
神谷は前を向きながら、
横目で相馬を見た。
神谷「……続き、あとで聞くからな」
相馬「……勝手にしろよ」
二人は並んだまま、
黙って走り続けた。
相馬の胸の奥には、
言いかけた“理由”がまだ熱く残っていた。
理由




