気づくのは、いつも一番近くにいる子
見てる
整備場を出て、
ひかりはそのまま寮の方へ歩いていた。
歩幅はいつもより少し早い。
表情はいつもより少し硬い。
そんなひかりの背中を、
まどかは見逃さなかった。
小走りで追いついたまどかが、
ひかりの横に並ぶ。
ひかり「……なに?」
まどか「えっと……その……
さっきから、ちょっと元気ないように見えて……」
ひかり「別に。元気よ」
まどかは首を横に振る。
まどか「ううん。
ひかりさん、そういう時は目が合わないの」
ひかり「……っ」
図星だった。
まどか「整備、疲れちゃった……とか?」
ひかり「……違う」
まどか「じゃあ……相馬くんと佐伯さんのこと?」
ひかり「っ……!」
ひかりの足が止まった。
まどかは慌てて手を振る。
まどか「ご、ごめん!
責めてるとかじゃなくて……
なんか、見てて嫌そうだったから……」
ひかり「……別に、関係無いわよ」
まどか「でも、ひかりさん……
あの時、ずっと二人の方見てたよ」
ひかり「……見てない」
まどか「見てたよ」
ひかり「……っ」
ひかりは言葉に詰まった。
ひかり「……なんか、ムカついたのよ」
まどか「ムカついた……?」
ひかり「相馬がペラペラ教えてるのが!自分もたいして上手くないくせに」
まどかは優しく微笑んだ。
まどか「それは言いすぎだよ」
ひかり「……まぁ、確かに…」
まどか「ひかりさん、いつも相馬くんの事みてるね」
ひかり「見てない」
まどか「見てるよ」
ひかり「……っ」
まどかは続ける。
まどか「ひかりさん、相馬くんの走りも、整備も、
いつも気にしてる。
それって……悪いことじゃないよ」
ひかりは視線を落とした。
まどかはひかりの横に立ち、
そっと言った。
まどか「ひかりさんは強いけど……
ちゃんと“気持ち”がある人だよ」
ひかり「……気持ちなんて、別に」
まどか「ううん。
ひかりさんは、優しいから」
ひかり「……優しくなんかない」
まどか「優しいよ。
だから、モヤッとしたんだと思う」
ひかりはしばらく黙っていたが、
やがて小さく息を吐いた。
ひかり「……まどかって、たまに鋭いわね」
まどか「えへへ……」
ひかりは少しだけ笑った。
ひかりは小さな声で言った。
ひかり「……まどか。
ありがと」
まどか「うん」
二人は並んで歩き出した。
ひかりの足取りは、さっきより少しだけ軽い。
イライラ




