ガールズトーク
お茶
食堂の片付けが終わり、
候補生たちはそれぞれ自室へ戻ったり、
整備場へ行ったり、風呂へ向かったりしていた。
そんな中――
玲奈はひかりとまどかを見つけ、
にこっと笑って声をかけた。
「ねぇ、二人とも。
ちょっとお茶しない?」
ひかり「えっ……私たちと?」
まどか「し、白鳥さんと……?」
玲奈「うん。
今日一日、頑張ったご褒美にね。」
二人は顔を見合わせ、
少し緊張しながら頷いた。
玲奈は自販機で買った温かいお茶を三つ置き、
椅子に腰掛けた。
「ふぅ……やっぱり走った後は温かいのが染みるね。」
まどかは緊張しながらも微笑む。
「白鳥さん、今日の指導……すごく分かりやすかったです。」
玲奈「ほんと? よかったぁ。
まどかちゃん、素直だから吸収早いよ。」
まどか「えっ……そ、そんな……!」
ひかりは横で腕を組んだまま、
少し照れたように言う。
「……私も、勉強になりました。」
玲奈はひかりに向き直る。
「ひかりちゃんはね、
“考えすぎるクセ”があるの。
でもそれって、伸びる子の特徴なんだよ。」
ひかり「……っ」
まどか「ひかりさん、褒められてますよ……!」
ひかり「う、うるさい……!」
玲奈はクスクス笑った。
突然の質問に、
二人は同時に固まった。
まどか「えっ……あ、あの……」
ひかり「……急に何ですか」
玲奈はお茶を飲みながら、
優しい声で続ける。
「走りってね、
“誰に勝ちたいか”よりも、
“誰に負けたくないか”の方が強い動機になるの。」
ひかりは少しだけ視線を落とす。
(……負けたくない相手なんて、決まってる)
まどかは胸に手を当てる。
(私も……いる)
玲奈は二人の表情を見て、
にこっと笑った。
「言わなくていいよ。
でもね、その気持ちを大事にしてほしいの。」
まどかは小さな声で言った。
「……私、怖いことも多いけど……
でも、走るの……好きです。」
玲奈「うん、知ってる。」
まどか「今日、相馬くんの走り見て……
私ももっと頑張りたいって思いました。」
ひかりが少しだけ目を細める。
(……まどか、そういう顔するんだ)
玲奈は優しく頷く。
「まどかちゃんはね、
“誰かの走りに背中を押されるタイプ”。
それはすごく強い武器だよ。」
まどかは胸が熱くなる。
玲奈はひかりにも視線を向ける。
「ひかりちゃんは?」
ひかりは一瞬迷ったが、
小さく息を吐いて言った。
「……私は……
負けたくない人がいるだけです。」
玲奈「うん、それでいい。」
ひかり「でも……その人、最近すごく速くなってて……
焦るんです。」
玲奈は優しく微笑む。
「焦るってことは、
“その人をちゃんと見てる”ってことだよ。」
ひかりは少しだけ目を見開いた。
(……そういう考え方もあるんだ)
玲奈は二人を見比べて言った。
「まどかちゃんは“憧れ”で走るタイプ。
ひかりちゃんは“対抗心”で走るタイプ。
どっちも強いよ。」
まどか「……私、そんなに強くないです……」
ひかり「……別に、対抗心なんて……」
玲奈「ふふっ、素直じゃないなぁ。」
二人は同時に顔を赤くした。
玲奈は立ち上がり、
二人の肩に軽く手を置いた。
「明日も走るよ。
二人とも、今日よりもっと速くなれる。」
まどか「……はい!」
ひかり「……負けません。」
玲奈は満足そうに笑った。
「その気持ちがあれば十分。
じゃ、おやすみ。」
玲奈が去ったあと、
ひかりとまどかはしばらく無言だった。
でも――
どちらの胸にも、
静かに火が灯っていた。
走りのタイプ




