見てくれてる…
期待
三つ巴の走行訓練が終わり、
コースにはまだエンジンの熱気が残っていた。
颯斗は無言でヘルメットを脱ぎ、
ひかりは淡々とマシンを整備場へ押していく。
遼も息を切らしながらマシンを降りた。
そんな中、
まどかは少し離れた場所で、
ヘルメットを抱えたまま俯いていた。
(……私だけ、全然追いつけてない)
その表情は、
普段の明るいまどかとは違っていた。
遼はふとその姿に気づき、
眉をひそめた。
(……桐生、なんか変だな)
遼はマシンを置くと、
まどかの方へ歩いていった。
「おい、桐生。」
まどかはびくっと肩を揺らし、
慌てて笑顔を作る。
「えっ、あっ……相馬くん。お疲れさまです!」
遼はその不自然な笑顔に、
すぐ違和感を覚えた。
「……どうしたんだよ。
なんか元気ねぇじゃん。」
まどかは視線を落とす。
「い、いえ……そんなこと……」
遼はため息をついた。
「嘘つけよ。
お前、分かりやすいんだよ。」
まどかは驚いて遼を見る。
(……ひかりさんにも言われた……)
まどかは小さな声で言った。
「……相馬くんたち、すごかったです。
颯斗くんも、ひかりさんも……
相馬くんも……」
遼「……ああ。」
「私……全然追いつけてなくて……
なんか……置いていかれちゃう気がして……」
遼は目を丸くした。
(……そんなこと気にしてたのか)
遼は頭をかきながら言った。
「バカ。
誰もお前を置いていかねぇよ。」
まどか「……え?」
遼は少し照れたように続ける。
「お前、昨日コーナー曲がれたじゃん。
あれ、すげぇことなんだぞ。
俺だって最初は転びまくってたし。」
まどかは目を瞬かせる。
遼はさらに言う。
「それに……
お前が頑張ってるの、ちゃんと見てるから。」
まどかの胸がじんわりと熱くなる。
「……相馬くん……」
遼はそっぽを向きながら言った。
「だからさ。
焦んなくていいよ。
お前はお前のペースで強くなりゃいい。」
まどかは、
ひかりに言われた言葉と同じだと気づき、
胸が温かくなった。
(……ひかりさんも、相馬くんも……
私のこと、ちゃんと見てくれてるんだ)
まどかは小さく笑った。
「……ありがとうございます。
私、頑張ります。
相馬くんの隣で走れるように……!」
遼は照れくさそうに笑う。
「お、おう。
期待してるからな。」
そのやり取りを、
少し離れた場所でひかりが見ていた。
ひかり(心の中)
(……また仲良くしてる)
胸の奥が、また少しざわついた。
ざわめき




