走行後
仲間
三つ巴の走行訓練が終わり、
コースにはまだエンジンの余韻が漂っていた。
遼・颯斗・ひかりの三人は、
まるで本物のレースのように火花を散らし、
その迫力に周囲の同期たちも圧倒されていた。
まどかはその光景を見つめながら、
胸の奥に生まれた“置いていかれる不安”を抱えたまま、
一人でヘルメットを抱えて歩いていた。
(……私だけ、全然追いつけてない)
そんな背中に、
静かな声がかかった。
「桐生。」
まどかは驚いて振り返る。
そこには、
汗を拭きながらも凛とした表情のひかりが立っていた。
ひかりはまどかの顔をじっと見つめる。
「……さっきから、顔が暗いわよ。」
まどかは慌てて笑顔を作る。
「えっ……そ、そんなこと……」
ひかりはため息をついた。
「嘘つかなくていい。
あなた、分かりやすいんだから。」
まどかは目を伏せる。
「……ひかりさんたち、すごくて……
私だけ、全然……」
ひかりは少しだけ目を細めた。
「……ああ、そういうこと。」
ひかりはまどかの隣に立ち、
コースを見つめながら言った。
「桐生。
あなた、昨日コーナー曲がれたでしょ。」
まどか「……はい。」
「それって、すごいことよ。
怖かったのに、逃げなかった。」
まどかは驚いてひかりを見る。
ひかりは続ける。
「相馬も神谷も……確かに速い。
でもね、あの二人は“最初から速いタイプ”。
あなたは違う。
怖さを抱えたまま前に進むタイプ。」
まどか「……」
「そういう人の方が、伸びるのよ。」
まどかの胸が少しだけ温かくなる。
ひかりは少しだけ視線を逸らし、
小さな声で付け加えた。
「……それに。
相馬は、あなたのこと気にしてる。」
まどか「えっ……!」
ひかりは慌てて否定するように言う。
「べ、別に変な意味じゃないわよ。
あなたが頑張ってるの、ちゃんと見てるってこと。」
まどかは頬を赤くしながら、
胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
ひかりはまどかの肩を軽く叩く。
「焦らなくていい。
あなたはあなたのペースで強くなればいい。」
まどか「……ひかりさん……」
「それに――」
ひかりは少しだけ笑った。
「私だって、負ける気はないから。」
まどかは思わず笑ってしまう。
「……はい!
私も、頑張ります!」
ひかりは満足そうに頷いた。
「それでいい。」
まどかは胸の不安が少し軽くなり、
ひかりは自分でも気づかないうちに、
まどかを“仲間”として認め始めていた。
三つ巴の火花の裏で、
もう一つの絆が静かに生まれ始めていた。
切磋琢磨




