まどかの決意
自信
翌日の走行訓練。
遼・颯斗・ひかりの三人が、まるで本物のレースのように火花を散らしながら走っていた。
直線で並び、
コーナーで抜き、
また抜かれ、
互いに一歩も引かない。
その様子を、まどかはコース脇で見つめていた。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
(……すごい……三人とも……)
まどかは思わず息を呑んだ。
颯斗の圧倒的なスピード。
ひかりの鋭いライン取り。
遼の必死の食らいつき。
(相馬くん……あんなに速かったんだ……
ひかりさんも……颯斗くんも……)
自分とは違う世界に見えた。
昨日、遼と一緒にストレッチして笑い合った。
その距離が、ほんの少し近づいた気がした。
でも――
(……私だけ、全然ついていけてない)
三人の走りを見ていると、
その“距離”が一気に遠ざかったように感じた。
(相馬くん……ひかりさんと並んで走ってる……
颯斗くんとも……あんなに競り合って……)
胸がチクッと痛む。
(……私なんて、まだコーナー一つ曲がるのに必死なのに)
まどかは自分の手をぎゅっと握りしめた。
(……置いていかれちゃうのかな
相馬くんも……みんなも……)
昨日の笑顔が、急に遠く感じた。
そんなまどかの様子に、
近くにいた成瀬が気づいた。
「桐生ちゃん。どうした?
顔、暗いぞ。」
まどかは慌てて笑顔を作る。
「い、いえ……なんでも……」
成瀬は優しく言った。
「三人の走り、すごいよな。
でもな――焦る必要はないと思うよ。」
まどかは目を伏せる。
「……でも……私だけ……全然……」
成瀬は首を振った。
「桐生ちゃんは桐生ちゃんのペースでいいんだよ。
昨日だって、コーナーちゃんと曲がれたじゃないか。」
まどかの胸が少しだけ軽くなる。
三人はまだ競り合っている。
遼が颯斗に食らいつき、
ひかりがその二人を追い、
颯斗がさらにアクセルを開ける。
まどかはその姿を見つめながら、
胸の奥で小さく呟いた。
(……私も……あそこに行きたい)
不安と悔しさと、
ほんの少しの憧れ。
その全部が混ざり合って、
まどかの胸に静かに火を灯した。
(……頑張ろう。
相馬くんの隣で走れるように……
ひかりさんにも……颯斗くんにも……負けないように)
まどかは拳を握りしめた。
その小さな決意は、
やがて彼女の大きな成長につながっていく。
喪失




