三つ巴
男
朝のコースは、まだ冷たい空気が残っていた。
だが、その空気よりも冷たく、そして熱い視線が交差していた。
遼。
颯斗。
そして、ひかり。
昨日のストレッチでの“妙な空気”と、颯斗の挑発。
それが三人の間に、見えない火種を残していた。
榊教官が声を張る。
「今日はコーナーと直線の連続走行だ。
無茶はするな。昨日みたいな真似は二度と許さん。」
颯斗が横目で遼を見る。
「聞いたか、相馬。
“無茶するな”だってさ。」
遼「お前が言うなよ。」
ひかりは二人のやり取りを聞きながら、
ヘルメット越しに小さくため息をついた。
(……また始まった)
だが、胸の奥はざわついている。
(相馬……昨日、桐生と楽しそうにしてたくせに……
神谷とまで張り合う気?)
押しがけでエンジンがかかり、
三人はほぼ同時にコースへ飛び出した。
直線で颯斗が一気に前へ出る。
颯斗(心の中)
(相馬……昨日の続きだ。
お前がどれだけやれるか、見せてもらう)
遼はアクセルを開け、必死に食らいつく。
遼(心の中)
(負けるかよ……!
昨日のストレッチでまどかに笑われたままじゃ終われねぇ!)
ひかりは二人の後ろにつきながら、
冷静にラインを読みつつも、胸がざわついていた。
ひかり(心の中)
(……なんで私までこんな気持ちになるのよ)
最初のコーナー。
颯斗は新人とは思えない深い倒し込みで鋭く入る。
遼も負けじと倒し込む。
ひかりは二人のラインを読み、
あえて外側からスピードを乗せて入る。
高梨がコース脇で叫ぶ。
「おいおい……あの三人、レベル違うぞ!」
成瀬「完全に火花散ってるな……」
まどかは手を胸に当てて見つめる。
「相馬くん……ひかりさん……颯斗くん……」
コーナー出口で、颯斗が遼に言う。
「相馬、遅いぞ。」
遼「言ってろ!」
遼はアクセルを開け、颯斗の後輪に食らいつく。
颯斗は少し驚いたように目を細める。
(……昨日より速い)
次のコーナーで、ひかりが遼の横に並ぶ。
ひかり「相馬、ライン甘い。」
遼「うるせぇ……!」
ひかりは遼の前にスッと入り、
颯斗のラインを追う。
遼(心の中)
(くそ……ひかりまで……!)
颯斗はひかりの存在に気づき、
少しだけアクセルを開ける。
颯斗「白石。
お前、相馬の後ろにいるより……前の方が似合ってるな。」
ひかり「当たり前でしょ。」
颯斗は笑う。
(……面白い)
三人は互いに譲らず、
直線でもコーナーでも火花を散らし続けた。
榊教官は腕を組みながら呟く。
「……あいつら、勝手に競争してやがる。
だが……悪くない。」
マシンを止めた三人は、
息を切らしながらも互いを見た。
颯斗「相馬。
昨日よりはマシになったな。」
遼「お前こそ……調子乗んなよ。」
ひかりは二人を見て、
少しだけ微笑んだ。
「……二人とも、悪くなかったわよ。」
だがその目には、
まだ消えない火が宿っていた。
(……負けない。
相馬にも、神谷にも。)
三つ巴の関係は、
この日を境に本格的に動き始めた。
女




