紛失
整備の厳しさ
午後の整備実習。
候補生たちは作業台に並び、エンジン分解の授業に取り組んでいた。
榊教官の声が響く。
「いいか。オートのエンジンは“命”だ。
パーツ一つでも欠ければ、走行中に死ぬぞ。
絶対に無くすな。絶対にだ。」
全員が緊張した面持ちで頷く。
榊教官が作業台の前に立ち、低い声で言う。
「今日やるのはエンジン分解だ。
いいか、オートのエンジンは“命”だ。
パーツ一つでも欠ければ、走行中に死ぬ。」
全員が背筋を伸ばす。
高梨「……相変わらず物騒だな。」
遼「でも本当のことだろ。」
ひかりは真剣な目でパーツトレイを見つめていた。
まどかは緊張で手が震えている。
三浦はすでに顔が青い。
エンジンを開けると、細かいパーツが次々と姿を現す。
遼
「うわ……こんなに細かいのかよ……」
高梨「相馬、落とすなよ? 絶対落とすなよ?」
遼「フラグ立てんな!」
ひかり
淡々と作業を進め、パーツを綺麗に並べていく。
「順番通りに置けば迷わない。
あなたたちも、ちゃんと並べなさい。」
高梨「先生かよ……」
まどか
「ひ、ひかりさん……これってどっち向きですか……?」
ひかり「逆。ほら、こう。」
まどか「すごい……!」
成瀬
「いやぁ……バイクってこんなに複雑なんだな……
俺、家でこんなの触ったことないぞ……」
三浦
「ひぃ……ひぃ……細かい……怖い……」
遼「三浦、落ち着けって。」
三浦「む、無理だよぉ……!」
三浦は汗だくになりながら、ピンセットで小さなピンを掴もうとしていた。
「こ、これ……小さすぎ……」
遼「ゆっくりでいいから。」
高梨「三浦、深呼吸しろ。ほら、吸って……吐いて……」
三浦「ひゅっ……ひゅー……」
まどか「三浦くん、頑張って……!」
ひかり「そんなに震えてたら逆に危ないわよ。」
三浦「わ、分かってるけど……!」
成瀬は苦笑しながら言う。
「三浦くん、そんなに緊張したら倒れちゃうぞ。」
三浦「だ、だって……パーツ無くしたら死ぬって……!」
遼「死ぬのは俺たちだよ!」
高梨「お前のせいでな!」
三浦「ひぃぃぃ!!」
三浦が震える手でピンを掴んだ瞬間。
カチッ……
コロコロコロ……
三浦「……あれ?」
遼「おい、今なんか転がったぞ?」
高梨「おい三浦……まさか……」
三浦「……な、ない……! ピンが……ない!!」
まどか「ええええええええっ!?」
ひかり「……最悪。」
成瀬「おいおいおい……!」
三浦は真っ青になり、膝から崩れ落ちた。
「ご、ごめんなさい……! ごめんなさい……!」
その瞬間、榊教官の影が背後に落ちる。
榊「……何の騒ぎだ。」
全員が凍りついた。
榊の表情が一変した。
「三浦ァ!!
パーツ一つ無くすということはな……
走行中に死ぬということだ!!」
三浦は肩を震わせ、まどかは顔を真っ青にする。
榊は全員に向けて怒鳴る。
「お前ら全員、探せ!!
この部屋から一歩も出るな!!
見つかるまで終わらん!!」
候補生たちは床に這いつくばり、作業台の下、工具箱の隙間、
ありとあらゆる場所を探し始めた。
遼「三浦、落とした時の動き覚えてるか?」
三浦「わ、分かんない……緊張してて……」
成瀬「大丈夫だ、落ち着け。順番に辿れば見つかる。」
まどかは床を這いながら言う。
「三浦くん、泣かないで……! 一緒に探すから!」
高梨は工具棚を動かしながら叫ぶ。
「おい相馬! そっち見たか!?」
遼「まだだ! そっち頼む!」
ひかりは冷静に周囲を見渡し、
「……落ちるとしたら、作業台の縁。
そこから転がるなら……この方向。」
と、推理しながら探し始める。
数分後。
「……あっ!!」
まどかが小さく叫んだ。
全員が顔を上げる。
まどかは作業台の脚の影から、小さな銀色のピンをつまみ上げた。
「ありました!!」
三浦はその場に崩れ落ちる。
「うぅ……よかったぁ……!」
遼も胸を撫で下ろす。
「助かった……!」
高梨「まどか、ナイス!」
ひかりも小さく頷く。
「……よく見つけたね。」
榊教官はまどかからピンを受け取り、全員を見渡した。
「……よく見つけた。
だが、忘れるな。」
榊はピンを掲げる。
「この小さな一つが、お前らの命を左右する。
整備は走行と同じくらい重要だ。
今日のことを絶対に忘れるな。」
全員が真剣な表情で頷く。
三浦は涙目で言った。
「みんな……ありがとう……」
遼は肩を叩く。
「仲間だろ。こういう時は助け合うんだよ。」
成瀬も笑う。
「いい同期を持ったな、三浦。」
まどかも微笑む。
「次は無くさないように、一緒に頑張ろうね。」
ひかりも静かに言った。
「……もう勘弁してよね」
榊は腕を組み、少しだけ表情を緩めた。
「……まあ、悪くないチームだ。」
みんなで




