体重管理
胃袋
養成所の食堂は、いつも独特の緊張感に包まれている。
理由はひとつ。食事も訓練の一部だからだ。
- 制限時間は 10分以内
- 体重は 60kg以下を維持
- 食べ残し禁止
- 早食い必須
そんな中、遼とまどかは同じテーブルに座って夕食を取っていた。
遼の前には、白米・味噌汁・鶏肉の照り焼き・サラダ。
普通の量だが、体重ギリギリの遼にとっては重い。
(くそ……今日の走行で汗かいたけど……まだ59.6kg……
これ全部食ったら60kg超えるかもしれねぇ……)
遼は米を少しずつ口に運び、噛む回数を減らして飲み込む。
時計を見ると、残り7分。
(やべぇ……急がねぇと……)
一方のまどかは――
「んっ……おいしい……! 今日の照り焼き最高……!」
白米をかき込み、味噌汁を飲み、サラダを一瞬で消し去る。
体重が軽いまどかは、むしろもっと食べろと言われる側。
遼は横目で見て、思わずイラッとする。
(なんでそんなに食えるんだよ……!
こっちは一口で体重が気になるってのに……!)
まどかは気づかず、さらに白米を追加しようと立ち上がる。
「おかわり行ってきます!」
遼「はやっ!? まだ3分しか経ってねぇぞ!」
まどか「え? だってお腹すいてて……」
遼「……羨ましいわ、その胃袋。」
遼は残りの鶏肉を一気に口へ運ぶ。
(やべぇ……あとサラダと米半分……!
60kg超えたら榊に怒られる……!)
まどかが戻ってきて、山盛りの白米を前に嬉しそうに言う。
「相馬くん、食べないんですか? おいしいのに!」
遼「食べたいよ! でも体重が……!」
まどかは首をかしげる。
「私、今日52.3kgでした!」
遼「軽っ!!」
まどか「だからいっぱい食べないと怒られちゃうんです……」
遼「……俺と逆だな……」
榊教官の声が響く。
「そこまで! 食器を置け!」
「自分の体重も管理できない奴がマシンの管理などできないからな」
遼はギリギリ完食。
だが、胃が重くて苦しい。
まどかは満面の笑み。
「ふぅ〜、おいしかったぁ!」
遼は思わず言う。
「お前……ほんと羨ましいわ……」
まどかは笑いながら答える。
「相馬くんは体重制限大変ですね。でも……頑張ってください!」
遼は苦笑しつつ、少しだけ元気をもらった。
(……まあ、こいつの明るさに救われてる部分もあるか)
食堂を出るとき、まどかがぽつりと言った。
「相馬くん、明日の走行……一緒に頑張りましょうね。」
遼は照れ隠しのようにそっぽを向く。
「……ああ。お前も食いすぎて動けなくなるなよ。」
まどかは笑って頷いた。
二人の距離は、また少しだけ近くなった。
十分




