サラブレッド
エリート
午後の走行訓練前。
整備場に、見慣れない少年が歩いてきた。
背筋はまっすぐ、歩き方に迷いがない。
新人とは思えない落ち着きと鋭さをまとっている。
榊教官が前に立ち、同期に告げる。
「今日から途中合流する候補生だ。
神谷颯斗。18だ。」
ざわつく同期たち。
高梨「途中合流? なんでだよ。」
三浦「か、神谷って……あの……?」
榊は続ける。
「父親の神谷迅が重度の怪我を負い入院していたため、入所が遅れた。
だが、モトクロスでの実績を評価され、特例制度で合格している。
走行技術は高い。お前らも気を抜くな。」
ひかりは目を細める。
(……やっぱり。神谷迅の息子……)
颯斗は淡々と頭を下げる。
「……よろしくお願いします。」
だが、その目は同期を値踏みするように冷たかった。
颯斗は遼のマシンを見て、ふっと鼻で笑う。
「相馬遼。
お前がこの組の中心って聞いたけど……」
遼「なんだよ。」
「……生意気な奴だな。
でも、嫌いじゃない。
そういう奴の方が、潰しがいがある。」
遼の胸が熱くなる。
(こいつ……最初から喧嘩売ってきてるのか)
颯斗が走り出すと、同期全員が息を呑む。
- 倒し込みの深さ
- アクセルの開け方
- ライン取りの正確さ
- 姿勢の安定感
新人とは思えない。
まるで“完成された走り”。
ひかり「……父親譲りの走り。」
遼は拳を握る。
(負けたくない……!)
次の組で遼と颯斗が同時にコースへ。
颯斗「相馬。ついて来れるなら来てみろよ。」
遼「言われなくても行く!」
二人は新人がやってはいけないレベルのスピードで走り出す。
高梨「おいおい……あいつら攻めすぎだろ!」
ひかり「……完全に禁止されてる走りだよ。」
二周目に入った瞬間、榊の怒鳴り声が響く。
「相馬!! 神谷!!
貴様ら何をやっている!!」
二人は同時にビクッとする。
榊「降りろ!!」
榊「基礎段階で攻めた走りは禁止だと言ったはずだ!
怪我したらどうする! 死んだらどうする!!」
颯斗は唇を噛む。
榊「神谷!
父親がどうだろうと関係ない!
ここでは“新人”だ!!」
颯斗の目が揺れる。
榊「相馬!
挑発に乗るな! お前まで暴走してどうする!」
遼「……すみません。」
榊「二人とも……腕立て伏せ100回だ。」
遼「ひゃ、100……!?」
颯斗「……上等だ。」
二人は並んで腕立て伏せを始める。
高梨「お前ら……バカだろ……」
ひかり「……でも、いい走りしてた。」
雑種




