直線で並ぶ二人
勝負
コース一周が安定して走れるようになった頃、養成所の空気は少しずつ変わり始めていた。
ただ走るだけではなく、「どう速く走るか」 が問われる段階に入ったからだ。
午後の走行訓練。
榊教官の号令で、遼・高梨・ひかり・成瀬・三浦・まどかの組がコースへ出る。
押しがけでエンジンをかけ、全員が直線へ飛び出した。
遼はアクセルを開け、風を切る。
その横に、ぴたりと高梨が並んだ。
「おい相馬、直線だけは速くなったじゃんか。」
「“だけ”って言うなよ。」
高梨はニヤリと笑い、さらにアクセルを開ける。
「じゃあ、コーナーで勝負だ。」
遼の胸が熱くなる。
(負けたくない……!)
最初のコーナー。
遼は倒し込みを意識し、身体を先に入れる。
高梨は遼より深く倒し込み、ラインを内側に取る。
「ほら相馬、もっと倒せ!」
「うるさい……!」
遼は必死に食らいつく。
コーナー出口でアクセルを開けると、マシンが前へ飛び出した。
高梨が驚いたように振り返る。
「おっ、やるじゃん!」
遼は息を切らしながらも笑った。
「簡単に置いてかれないからな!」
少し前を走るひかりは、後ろの二人の気配に気づいていた。
(……相馬、昨日より速い)
高梨と並んで走る遼の姿は、以前よりずっと“レーサー”に近い。
ひかりはほんの少しだけ口元を緩めた。
二つ目のコーナーを抜け、再び直線へ。
高梨が叫ぶ。
「相馬! ここからはパワー勝負だ!」
「望むところだ!」
二人はほぼ同時にアクセルを開けた。
エンジン音が重なり、風が二人の身体を叩く。
遼は必死に前を見据える。
高梨は余裕の笑みを浮かべながらも、アクセルを緩めない。
(負けたくない……!)
ほんのわずか、遼のマシンが前に出た。
高梨が目を見開く。
「マジかよ……!」
遼は胸が熱くなった。
(俺……高梨に並べてる……!)
マシンを止めた遼に、高梨が歩み寄る。
「相馬……今日の走り、悪くなかったぞ。」
「お前に言われると腹立つな。」
「ははっ、でも本気で言ってる。
お前、伸びてるよ。俺も負けてらんねぇ。」
遼は照れくさそうに笑った。
「俺もだよ。お前がいると……手抜けない。」
高梨は肩を叩きながら言った。
「いいじゃん。切磋琢磨ってやつだろ?」
その言葉に、遼の胸が熱くなる。
(そうだ……俺は一人じゃない。
こいつと競い合って、もっと速くなれる)
少し離れた場所で、ひかりは二人のやり取りを見ていた。
「……いいコンビじゃない。」
その声は小さく、誰にも聞こえなかった。
切磋琢磨




