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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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心を込めるということ

 本番というか、真剣というか、本気という感じが伝わってきて、普段の数割増しに素敵に見える。もちろん、普段から素敵だけど。 

 

「そういえば、今度、ツアーがあるのだったわよね。おめでとう。私たちも、いっそう気合いを入れていかないといけないわね」


「いえ。まだ、由依さんたちには及びませんから」


 人気が出てきていることも、大きめのイベントが(ほぼ)決定したことも嬉しい。

 それでも、まだ、上を見ればいくらでもいるし、『LSG』にだって、実力で勝っているとは全然思っていない。

 実際、養成所での毎月のテストでも、迫ってはいるものの、まだ、及ばないから。

 

「そんなことないわよ。目に見える数字という意味では、SNSのフォロワー数なんかも、ほとんど同じくらいでしょう? 個人のアカウントにしても、私たちのほうが先に開設しているのにね」


 私たちが個人のSNSを開設したのは今年に入ってからで、『LSG』としては、一番の年下である真雪さんも、去年からSNSの個人利用を始めている。

 たしかに、長くやっているからその分有利、というところはあるのかもしれないけど。


「先とか、後とか、そういうことは関係ないと思います。現状でのフォローしてまで応援してくれているファンの数が多いということは、それだけ、人気が高いということですから」


 私たちだって、ユニットとしての活動期間自体は『LSG』とそれほど変わらない。せいぜい、半年くらい? 琴音が入ってから、ということなら、二年半くらい違うことになるけど。

 それでも、個人ではなく、事務所からということでなら、私も奏音もSNSを利用していたわけだから、フォロー数の差は指標にしてかまわないと思う。

 なにも、SNSのフォロワー数だけが絶対だと言っているわけじゃなくて。あくまで、一つの指標としたときに、目に見える数字としてわかりやすい、ということだけど。

 それに、最近、急激ともいえるような感じで増えてきているとはいえ、ユニットとしてだけじゃなくて、個人のアカウントとしても、まだまだ、由依さんたちには及ばないから。

 

「そういうことにしておきましょうか」


 由依さんは楽しそうに微笑む。

 それはそれとして。


「撮影ですけど、見学していてもかまいませんか?」


 どうせ続けてやるのなら、ここで待っていても同じだから。 

 実際、グラビアとしての活躍の期間の長い由依さんや真雪さんからは、参考にできるところも多いだろうし。


「私はかまわないけれど」


 由依さんがそう答えて、六花さんや純玲さん、真雪さんを振り返る。

 

「詩音ちゃんに参考にしてもらえるようなことがあるかしら?」


 六花さんは少しだけ困ったような表情を浮かべて。 

 

「わかります。詩音は視線を引くことに関しては天才的ですから」


 奏音が深く頷く。

 べつに、私が目線とか、カメラ写りとかを意識してやっているわけじゃないからね。いつも、私自身で、私としているだけで。

 それで見つけてもらえるというのなら、アイドル冥利に尽きるけど、それは、撮影での心得みたいなものとはまた違うと思う。

 注目されるということは良いことだけではないけど、アイドルとしてなら良いこと、メリットのほうが大きいだろうから、構わないんだけどね。それが、偶然だろうと、なんだろうと、利用できるものはなんでも利用しないとと思っているから。

 

「でも、自然体で特技が美少女だということと、撮影で魅力的に撮られるということは、また違うと思うので」


「さすが詩音。謙遜している風でも、自己評価が高いね」


 そういうところも可愛いけど、と奏音が抱き着いてくる。

 謙遜、ではないと思うけど。 

 それから、自己評価が高いわけじゃなくて、自信を持つようにしているだけ。そういう姿勢でいるほうが魅力的だから。

 あくまで、比較して、ということ。

 たとえば、普段の真雪さんも魅力的だけど、カメラの前で意識が切り替わっているときはより素敵だとか、そういうこと。 

 スタッフの人たちからも許可が下りて。

 

「それじゃあ、カメラテスト、お願いします」


 水着での撮影でも、メイクアップは忘れない。

 普通、海やプールに入るときにまでメイクをしていることはないか、あっても、ごく少数だとは思うけど、今から私たちがやるのは水着自体の宣伝でも、リゾート、商業施設の宣伝でもない。

 そちらはやったことがないからわからないけど、少なくとも、これからやる私たちの撮影では、水着じゃなくて、私たちが主役だから。

 由依さんたちは四人とも、撮影慣れしていて、撮影の人たちから望まれている意図を、それ以上のクオリティで表現している。

 自分の魅力の引き出し方というものを熟知しているからなんだろう。もちろん、カメラの人たちの技術ということも。つまり、被写体の魅力を引き出すという。同じことだけど。

 それら二つの相乗効果で、実際に撮影された写真がより魅力溢れるものになっているということ。

 それに、それだけじゃなくて、今は私に――私たちに――と感じているけど、なんだろう、こう、由依さんたちから、私たちに向けての気持ちが溢れているというか。

 

「由依さん」


 撮影が――『LSG』のほうの撮影が終わってから、私たちの撮影までに少しだけど間があったので。


「なあに、詩音ちゃん」


「由依さんたちの撮影を見たのは今日が初めてというわけでもないので、いまさらなんですけど、今日はちょうど私たちもすぐ後に撮影があるので」

 

 自分でもよくわからないけど、言い訳をしているみたいだな――って。


「落ち着いて、詩音ちゃん。まだ、余裕はあるわ」


「すみません」


 お言葉に甘えさせてもらい、ひとまず、深呼吸をして。


「カメラを前にしたときの由依さんたちはとてもきらきらしていて、いつも以上に魅力的に見えます。なにか、そういう、意識というか、コツというか、そういったことがあるんでしょうか?」


 感覚的なものだから、説明しようとしても、言葉も曖昧なものになってしまうけれど、由依さんには私の言いたいことが伝わっていたようで。

 

「そうね。もちろん、カメラの角度とか、表情の表現とか、ポーズの研究とか、いろいろとあるけれど……一番はやっぱり、見てくれる人への感謝とか、心を込めることかしら」


「見てくれる人へ心を込める……」


 それは、ファンの人たちとか、スタッフの人たちとか、あるいは事務所や養成所の皆のこととか?

 

「それは、どういう心、気持ちなんですか?」


 感謝とか、希望とか、情熱……ではないと思うけど。


「たとえば、見てくれる人の顔を思い浮かべて、その人たちが私たちを見て嬉しかったり、楽しかったり、憧れだったり、元気になったり、そういう感情を持ってくれたら嬉しいなって」


 見てくれる人の顔を思い浮かべる。

 いつも、自分たちのパフォーマンスだけじゃなくて、見てくれるファンの人たちのことは考えていたつもりだったけど。

 でも、さっき由依さんから感じられた波動というか、印象の元はそれかあ、と妙に納得できる。

 由依さんはくすりと微笑んで。


「心配しなくても、詩音ちゃんはいつもできていると思うわよ。なかなか、見られる側になったときの自分のことってわからないわよね」


 たしかに、私は特技美少女を自称しているけど、自分のトレカとか、グラビアなんかを見て、うっわ最強美少女、とは思わないからなあ。

 

「お時間、アドバイスをありがとうございます」


「私は先輩だし、詩音ちゃんは同じ養成所のライバルで、同じ事務所の仲間だもの。お互い、共有して、高め合っていきましょう」


 

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