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輝きが向かう場所  作者: 白髪銀髪


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希望のない感じのパンドラの箱

 そういうわけで、由依さんからのアドバイスは、奏音と琴音とも共有する。


「たしかに、見てもらう自分のプロデュースに関しては、ある程度考えていたつもりだったけど、見てくれる相手への感謝というところまでは考えていなかったかも」


 奏音も、納得という表情を浮かべる。

 もちろん、ライブとかを見にきてくれる人たちのことを意識してこなかったわけじゃない。

 でも、そこに、私たちの心まできちんと込めていたのかと聞かれると。

 観にきてくれてありがとうという気持ちはあったけど、どちらかといえば、ぜひとも私たちを観ていって、という気持ちのほうが強かったような。

 自己主張というか、自己顕示欲というか、そういうところの大きい人が集まるようなところだからね、アイドル、いや、芸能界なんて。

 全員が全員、というわけではないだろうけど、少なくとも、私はそういうところが『自信を持つということ』だと思ってやってきていたところが大きいと思う。

 その気持ちをなくせということではなく、どちらも持ち合わせるほうがより輝くことができる、ということ。

 養成所でのユニットのテストで私たちが『LSG』に勝つことができていないのは、そういうところかもしれない。あるいは、ユニット以外の、個人成績というところでも。

 

「撮影に関することだけではないわよね。普段の歌やダンスのレッスン、それから、もちろん、ライブや仕事でも、そういう意識が大切ということよね」


 琴音とも頷き合い。

 

「心からのね。これで、今までの百倍良い写真が撮れるようになるね」


「詩音が百倍も良くなったら、眩しすぎてもはや見られないんじゃないの?」


「つっこまないわよ。もう私たちの順番なんだから」

 

 琴音が仕事を放棄している。

 

「べつに、詩音と奏音につっこむことが私の仕事ではないでしょう」


「心を読まれた?」


 それだけできるということは、琴音も、もうすっかり『ファルモニカ』に馴染んでいるということで、喜ぶべきところだよね。


「ポーズに関しては、あんまり参考にはならないよね」


 水着のコンセプトが違うわけで。

 私たちはおそろいのセーラー服っぽい水着だから、それに合ったシチュエーション、たとえば、船長帽子みたいなものを被ったりしてみるとか。

 あとは、そもそも、スタイルが違うから、似合うポーズ、似合わないポーズも異なる。まあ、由依さんたちに似合わないポーズなんてないけどね。だいたいのポーズで満点花丸……若干、身贔屓というか、私のフィルターがかかっていることは認めてもいい。

 

「水兵さんっぽいポーズが良いってこと?」


 奏音は背筋を伸ばして敬礼のポーズを決める。

 

「若干、前傾していたほうが可愛くない?」


 ぽいのは、しっかり背筋の伸びているほうだと思うけど。

 

「小物もあるみたいだけれど」


 琴音の見ているのは、旗とか、浮き輪とか、ホースとか。

 ホースを使うのなら、実際に水が勢いよく出ている、振り撒かれているような構図が映えるような気はするけど。

 ポーズだけ決まっていれば、そのあたりは後から合成してなんとでもなるのかな。

 旗を振るところだったり、浮き輪を抱いているところ、肩にかけているところ――さすがに、自分でつけることはなかった――だったり、ホースを構えて水を撒いているところ――実際に、この場で出すわけではなく――だったり。

 もちろん、なにも持っていないところも、立っているところ、しゃがんでいるところ、大きく伸びをしているところ……全部を使うわけでは、もちろんないけど。


「もしかして、これも特別っていうことで、ランダムにしたりしないよね?」


 奏音が少し心配気味に声を潜める。

 

「さすがにそれは阿漕すぎるでしょう」


 構図はたくさんあって、悪いことじゃない。

 この中から、ベストと思えるものをいくつか選んで、という形になるはず。 

 どれが良いのかなんて、実際に見て判断するしかないわけだからね。判断するのは、私たちじゃなくて、主にスタッフの人たちだけど。

 一種類、ということはないはずだけど、十数種類全部採用、なんていうことにもならないだろうね。

 それに、ファンの人たちからの声でもそうだけど、ランダム商法はあんまり受けがよくないから。仕方のないところはあるにせよ、普段はともかく、今回は限定、というか、記念なんだし、そんなに多くしないほうが。

 あるいは、ランダムじゃなくて、たとえば、十種類全構図コンプリートセット、みたいな感じで、多少割高にして売り出したら、それは売れると思うけど。

 理由は、私なら買うから。

 普段のトレカじゃないんだから、そういうものでもいいと思うけどな。

 ランダムなら全部集めるのが大変だから、みたいな人も、少しお高めだけど、記念だし、コンプリートされてるなら、ということなら、手を伸ばしてくれる人も増えるかもしれない。

 なんにしても、私たちと同じ年代くらいの、学生にとってはお高めなのは、すみませんっていう感じだけどね。

 

「すみません。それは、私の一存では」


 というようなことを提案してみたら、蓉子さんには頭を下げられた。

 

「こちらこそすみません。私もわかっていましたから」


 商売だからね。

 カメラマン、照明、レフ……いや、撮影ということだけじゃなくて、事務とか、営業とか、トレーナーとか――全部兼ねているような蓉子さんもいるけど、とにかく、関わる人が多いということは、それだけ、人件費やらもかかるということ。

 結局、商売である以上、それらを回収するだけじゃなくて、黒字にしないと潰れるわけで。 

 幸いというか、ありがたいことに、ファンの人たちや、企業のほうからの仕事の申し込みとか、あとは、私たちを含めてレッスンの代金(私たちの場合、給料も出ているけど)とか、そういうことで、今のところ『フレアスター』の営業は問題ないみたいだけど。

 

「ファンの人たちも、そのあたりは、うまく回しているところもあるみたいだよ」


 奏音がスマホを見せてくれる。

 それは、SNSの画面で、私も見たことのある様子。

 そこにあるように、SNSで見かける、『譲』とか、『求』みたいな発言は、要するに、推しのトレカ(に限らず、ランダムグッズでということなんだろうけど)を交換しませんか、という誘いらしい。

 それは、『フレアスター』に限らず、どこのアイドルファン界隈でも、ランダム商品みたいなものがあるところのファンの人たちは――ないところのほうが珍しいけど――やっている人が多いみたい。

 

「需要と供給のバランスがとれている場合はそれでいいのでしょうけど、そこで余ったものはどうするのかしらね」


 琴音のひと言に凍り付く場。お通夜とまでは言わないけど。 

 つまり、当てた当人が不要で、かつ、交換などでも欲しい人のいない、余ったもの。

 レアリティ? あるいは、輩出率? 言葉はどれが適当なのかわからないけど、それに差がある以上、ある程度は仕方がないというか。むしろ、それこそ、トレカの醍醐味で、皆が買っている理由だと思うから。

 

「うん、止めよう、この話。誰も幸せにならない」


 止め止め、と奏音が手を叩く。

 

「そ、そうだね」


「そうね」


 私たちは――『フレアスター』に限っては――いいけど。

 私も、他社のアイドルグループのグッズに関しては……これは、考えると負の面に触れていきそうになることは、自分たちのところのことでもわかっているから、考えないようにしておく。

 イベント終了後のゴミ箱とか、暗黒面を煮詰めたような感じになっているかもしれないし。まさにブラックボックス。希望のない感じのパンドラの箱だ。

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