4、復讐の鬼は神へ挑む
本日三話完結まで投稿します。
時間は10時、14時、20時です。
神々しい光を放ちながら現れた神。
ソータは始めて転生した時のことを思い出す。その時は絶対にこんなに光っていなかった。この光はただの演出なのだろうか。
『そんなわけがないだろう。よく見てみろ』
ソータは眩しさに目を細めながら、言われた通りに神を見る。
神が言っていることは一瞬で理解出来た。光っているのは神そのものではなく、神が握っている二振りの剣だ。
片方が金色に光り、もう片方が橙色に輝いている。
『くっくっくっ……。お前がさっきまで戦っていた人間とドラゴンを剣にしたものだ。強いぞ?』
恐らく、ブラックとファイヤードラゴンのことだろう。それくらいしか、思い当たる人物がいない。
しかし、どういうことだろうか。人間もドラゴンも、剣に鋳造できるようなものではない。
『俺は神だぞ? 神の力を使えば、それくらい容易いわ。二匹ともなかなかの力を持っていてな。剣にしたらそこそこの業物ができたわ』
神の力……。それは強力で当然だ。ソータが転生したのも、その神の力とやらによることだろう。
こんな相手に喧嘩を売る。普通に考えれば馬鹿だ。
神の力がどこまで及ぶ何を指すのかはわからない。しかし、転生などで生命を操っているのは生命魔法の上位互換、ソータの思考を読み取っているのも神の力なのだと考えるのが妥当だ。
「質問だ。神の力ってのは何なんだ?」
『…………』
少し考えた素振りを見せた後、神は口を開く。
『まあいい。教えてやろう。神はある魔法を使える。世界魔法とでも言うべき魔法だな』
世界魔法。とんでもなさそうな魔法が出てきたものだ。
ソータは、自身の勝ち目が失われた気がして短い息を吐く。
『生命、物質、現象……。世界魔法は、世界を構築するあらゆるものを好きに操ることができる。勿論お前の思考も読めるし、異世界転生なんてことも容易だ』
強力だ。強力すぎる。
ソータは正直、こんな化け物に勝てる気がしなかった。
思考が読まれている以上、読まれた上で防ぎようがない攻撃を放つ以外にこの神へ復讐する方法がない。
しかし、実力でも相手の方が上なので、それは実質不可能に近い。
「最後の質問だ……。どうして、何度も俺に構う? わざわざ一人の人間である俺を苛める必要はないだろう」
神の存在を確信した時から、ずっと感じていた疑問だ。
神にとって、ソータは一人の人間である。圧倒的な力を持つ神がわざわざソータに構う理由などないはずだ。
理不尽な苛め。何年も、ソータを苦しめてきたものだ。苛めがなければ今のような歪んだソータはいなかったはずだ。その理由は当然気になる。
『お前は人間の中でも特殊でな。唯一神に昇華できる可能性がある人間なんだ』
神に昇華? 人間が神になるなんて馬鹿らしいことが実際に起こるはずがない。
『前世の知識があるとはいえ、新たな魔法を開発する魔法のセンス。《聖女》にお前の才能を測らせたが、その結果を見てもお前の才能がずば抜けていることは疑いようがない』
「じゃあ、神になる可能性があるなら、尚更意味がわからない。どうして自分を倒せる敵を増やすような真似をする?」
『神の中にも争いがあってな。神へと昇華したお前を手駒に出来れば、恐らく俺は神の中で最強になれるだろう』
どうして、ソータをいじめるように仕掛け、長年苦しめて性格すら歪ませた神がソータを手駒にできると思ったのだろうか。
この神も、ソータが復讐の為に動いていることは知っているはずだ。むしろ、そうなるように計画を練ったのも、この神だろう。
『簡単なことだ。神になる前のお前には絶対に負けないからな。神になる前に調教してしまえば良い』
ソータは、神のそんな言葉を聞き流しながら、――地面を蹴る。
最後の復讐対象が、みるみるうちに近付いてくる。
イケる! と、そう確信した瞬間。神は剣を振るった。金色の光がソータの腹を捉える。
「ぐふああああああああああああ!」
痛みに、ソータは絶叫する。
ソータは全力を込めた一撃を放った。
それなのに、当たらないどころか軽く剣で叩かれる。
体もそうだが、心はもっと痛かった。圧倒的な力の前で、今までの復讐を全て嘲笑われたような気がした。
「くそっ! クソおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
腹からの声、心からの叫びが、黒い空間で反響することもなく吸収されていく。
ソータはもう一度攻撃を仕掛ける。何度も何度も、闇雲に魔法を放ち、闇雲に拳を振るう。
しかし、そんな攻撃が神に当たるはずもなく、避けられ、躱され、いなされ、時に反撃される。
力の差は歴然としていた。
何をしてもソータは敵わない。
ソータは冷静さを失い、神はまだ力を全く出し切っていない。
こんな状況をひっくり返せる奇跡を起こせるとしたら、それはもう神しかいない。でも、その神はまさに今、ソータと敵対している。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
喉が枯れるまで叫び、拳が潰れるまで殴り、足が擦り切れるまで踏ん張る。
しかし、神はその声に耳を傾けることもせず、拳を全て処理し、力を入れることなくその場に立ち続ける。
「ぐぞっ! ぐぞっ! ぐぞおおぉぉぉぉおおおおおお!」
その姿はまさに鬼。放たれるプレッシャーは、鬼と形容するに相応しいものだった。
復讐に憑かれた、鬼。
溢れる感情に身を任せ、復讐のみを遂行しようとする復讐鬼。
「がああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ――――」
――その時、頭の中を金髪の少女の顔が過ぎった。
失った少女。失ってしまった少女。
笑った顔、泣いた顔、怒った顔……。様々な顔が脳裏に浮かぶ。
頭の中の少女を前に、ソータは冷静さを取り戻す。
――あぁ、何だ、簡単なことじゃないか。
ヒントは神の言葉の中に沢山隠されていた。
ソータは、最後の復讐を成すために、最後の力を振り絞る。
次回の投稿は本日一八時です。
新作始めました。
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