7、復讐の誓約は世界を滅ぼす
約二ヶ月ぶりです。
更新が遅れてしまってすみません……。
あえて、誰も殺さずに復讐を一旦終わらせた。最後の仕上げとして、さらなる絶望のそこに沈みながら死んでもらう為だ。
全員を纏めて始末する。巻き込む人間が多すぎるが、あいつらに復讐をする為なら些細なことだ。
俺は復讐の準備をする。大量の魔力を消費する技だ。この復讐が終われば凄まじい量の魔力を取り込むことができるが、その分、そこに至るまでが大変である。
取り敢えず脂肪を全てエネルギーに変え、そこからさらに魔力への変換を行う。宗太の脂肪は生きている上で最低限の量まで減る。
異世界で一度脂肪魔法によって脂肪を落としたが、地球に戻ってきた時には脂肪も元に戻っていた。こっちに来てわざわざ痩せる必要などなかったので放置していたが、魔力が必要になったので、わざわざ痩せた。
不意に気配を感じ、振り向く。自室のドアの隙間から、気味悪そうに母親が覗いていた。彼女は未だに毎晩闇の中を彷徨い続けているはずだ。その証拠に、目元には隈ができている。しかし、まだ人の部屋を除き見れるほどの元気が残っていたとは。さらなる復讐の必要性を、もう一度確認した。
――さて、準備は整った。そろそろ実行に移そう。
今回の復讐に使う魔法は、脂肪魔法ただ一つだ。脂肪を全て魔力に変えたが、この魔力は全て脂肪魔法に使う。
脂肪魔法は脂肪を操ることができる魔法であり、脂肪の解釈を広げることでエネルギーをも操ることができる。脂肪魔法の一番基本的な使い方だ。
しかし、この基本的な使い方だけでも世界を滅ぼせるほど強力なのが脂肪魔法だ。
宗太は、脂肪魔法を使う。最初は、軽く、遠くだ。
――崩壊が始まる。
どこかで、悲鳴が聞こえた気がした。実際はそんなことは有り得ない。崩壊が起こっているのは、遥か彼方なのだから。
脂肪魔法の対象範囲を、段々と近付けていく。まだ日本の人間は、誰も崩壊の始まりに気が付いていないだろう。宗太の復讐が始まるのは、崩壊を知った両親が、教師が、同級生が崩壊に気付き、悲鳴を上げたときだ。その時を気楽に待つ。
世界の崩壊によって崩れたバランスが崩壊を加速させようとするが、それもエネルギーを操ることによって押さえつける。これに流れを委ねてしまうと、世界は一瞬にして跡形もなく消え去り、復讐にならない。
崩壊が日本に乗っかった。沖縄が消える。やがて本州に突入する。崩壊後にあるものは、無。この時、人間は初めて無を見た。その未知への感動などあろうはずもなく、むしろ恐怖が先立ってしまう。
そして、ようやく――
「お、おい! アレは何だ!?」
誰かが叫んだ。教師が気付いた。同級生が気付いた。両親が気付いた。全員が気付いた時、俺の興奮も絶頂に達する。
「きゃああああああああああああああああ!」
「何!? 何なのよアレは!? いやああああああああああ!」
「死ぬのか!? あんな意味わかんないのに巻き込まれて、俺は死ぬのか!?」
普通、世界の崩壊なんてものを見たら誰もが夢だと疑うだろう。だが、本能を怯えさせる恐怖は、現実逃避などという無意味なことを許さなかった。現実逃避しなかったところでやれることなどないのだから変わらないが、死に近付いた人間の本能は諦めない。それ故の、恐怖。
「いやああああああああああああああああああああ!」
「きゃああああああああああああああああああああ!」
「うあああああああああああああああああああああ!」
誰も、何も出来ない。
出来ることと言えば、意味もなく逃げ惑うと、絶望に身を委ねることだけだ。
教師の誰かが、包丁で自分の胸を一刺しにして自殺した。生きる道筋を探すための恐怖と、その恐怖に対する恐怖。二つの矛盾する恐怖に板挟みになり、結局後者の恐怖が打ち勝ち、自殺する。要するに、生きるための感情が、死に繋がった。
もう、本能も理性も、何をしたいのか分からない。
次々と自殺者が出る。約半数か。
阿鼻叫喚。世界が赤に染まる。
そして、崩壊が訪れる。
最初に崩壊に巻き込まれたのは、母親だった。気が狂って、自らそっちの方向に全力で駆けていった。
母親の体が物質からエネルギーに変換されて、文字通り欠片も残さずに消える。
宇宙創世以前。初期の世界は、純粋なエネルギーだった。そのエネルギーが物質を生み出したのだ。
では、その逆をしたらどうだろうか。
物質をエネルギーに変換するのだ。
エネルギーを司る脂肪魔法なら、それが可能だ。
世界は、元の姿に帰していく。全てがエネルギーに返っていくのだ。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
母親が還った。
崩壊は勢いを増す。
「うおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
父親がエネルギーになる。
崩壊は勢いを増す。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
数十人いる教師の声が、数十人いる同級生の声が、その全てが折り重なって一つの歌を奏でる。絶望に満ちた、甘美な歌。
地球での復讐を締めくくる、最高のエンディングだ。
宗太はその歌に黙って耳を澄ませ――。
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そして、全ての音が消え失せた時――ソータは世界をエネルギーとして体内に取り込み、別の世界に転移していた。
この章はこれにて完結。
次回から最終章に入ります。




