2、復讐の閃光は教師を貫く
復讐心を取り戻した宗太は、教師に向き合う。
突然の出来事に、教師は驚愕と恐怖を露わにする。
それを、今までの恨みを全て込めた眼で睨み付ける。
その教師は、顔を歪めた。驚愕を消して、恐怖をより大きくしたことがわかる。
「ど、どうやって火をつけたんだい?」
震える声で、そう尋ねてくる。
勿論彼は、『魔法』など信じないだろう。
だけど、敢えてそれを分かった上で、宗太はそれを告げる。
「魔法だ。信じるかはお前次第だがな」
「嘘だ……。魔法なんて存在しない……。する訳がない……」
「別に、俺はお前が信じようが信じまいが、どうでも良いんだ」
わざわざ、教える必要のないこれを教えたのは、恐怖心を煽り、より増大させる為だ。
人間は、正体不明のものに恐怖心を抱きやすい。それは勿論のことだが、それだけなら『魔法』だとわざわざ伝える必要はない。無言を貫き通すだけでも、正体は分からないままなのだから。
だが、魔法という非現実的なものを話題に出すことで、より不気味に思わせることができるのだ。
ここまできて、ようやく教師は逃げようとした。
宗太の予想よりも、幾らか遅い行動だ。
もっと、少しでも恐怖を覚えた時点で逃げ出すような人間だと思っていた。
宗太のことをネチネチといじめてくるような人間だ。彼は典型的な、下には大きく出て、上には媚を売るタイプなのだろう。
だからこそ、上下が入れ替わったのを認識したらすぐに逃げ出すと思っていた。
それでも逃げるのが遅くなったのは、唐突の出来事に驚愕と恐怖が生まれ、思考が遅くなっていたのと、どこかで宗太のことを舐めていたのが理由だろう。
しかし、結局のところそんな分析はどうでも良い。
重要なのは、如何にしてこの教師を痛め付けるかなのだ。
取り敢えずは、逃がさない。
職員室から射し込む、真っ赤な夕陽。
そのエネルギーを凝縮する。
夕方の太陽の力は弱い。しかし、寄せ集めればかなりの火力を生み出せる。
生まれるのは一筋の紅い閃光。
それが、教師の脚を貫く。
細く空いた穴から溢れる血液が夕陽に照らされて、その真紅をより一層紅く輝かせる。
「「「きゃあああああああああああああああああああああ!」」」
ここに残っている教師は、脚を貫かれて唸っている彼だけではない。
まだ日も沈んでいないこの時間、職員室にはかなりの教師が残っている。
そこでこんなことをすれば、悲鳴が響くのも当然のことだろう。
本来ならば、この時点で悲鳴を聞いた誰がやってきて、教師の誰かが警察に追放して、面倒なことになっている。
しかし、それは飽くまでも『本来ならば』だ。
宗太は、空気の振動を外には伝えずに一切の音が漏れないようにし、電波を操って外と連絡が取れないようにしている。
全ては、ゆっくりと、教師の癖に一介の生徒である宗太をいじめた奴らを嬲る為だ。
もう一度、閃光を放つ。
それは、教師達の腕を貫いていく。
「「「ぐあああああああああああああああああああああああああああああ!」」」
またも、職員室は様々な悲鳴が入り交じる、混沌へと誘われた。
しかし、前回の悲鳴とは、質が明らかに違っている。
前回の悲鳴は、脚を貫かれた場面を見ての、恐怖によるものだ。
今回は違う。実際に腕を貫かれた、激痛によるものだ。
勿論、後者の方が――聞いていて楽しい。
元々ここにいる全員を殺す気でいた。
全員が、宗太がいじめられているのを見て見ぬふりをしていたのだから。
勿論、直接宗太に暴力を振るってきた罪が一番罪深い。だが、見て見ぬふりも、罪だ。彼らが宗太を助けられれば、宗太のいじめが続くこともなかった。
宗太は立て続けに、閃光で教師達を貫いていく。
太陽が沈むまで、打ち放題だ。
教師達はのたうち回る。
日本人は、異世界人に比べて痛みに対する耐性がないのだ。それが、いきなり体のあちこちを貫かれ、焼かれれば、耐えられるようなものではないだろう。
「があああああああああああああああああああああああああああああ!」
「ぐううううううううううううううううううううううううううううう!」
「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
四方八方から悲鳴が聞こえる。まさに阿鼻叫喚だ。
中には、涙を流して泣いている教師までいる。
宗太は思う。ああ、やはり復讐は最高だと。
悲痛な絶叫をを聞くだけで、苦悶に満ちた表情を見ているだけで、心が満たされていく。
気付くと、全員が気を失っていた。
痛みから逃れる為か、或いは、血が少なくなったからか。
どちらにしても、更なる痛みを与えれば、目を覚ますだろう。
宗太はもう一度、もうほとんど沈んでいた太陽からそのエネルギーを拝借すると、今度は頭を貫いた。
二度響く、悲鳴。
しかし、まだ甘い。まだ死なせない。
宗太はそう考えて、回復魔法を施す。
教師達には、これからもっと凄惨な復讐が待っている。ここで死なれては困るのだ。
……そこで一つのことに気が付く。
必死で、無意識だったからここまで気付かなかったが、魔法を使うことが出来ている。
脂肪魔法で脂肪を魔力に変えられるとはいえ、脂肪魔法も魔法だ。魔力が必要になる。
それを当然のように使えていたということは、魔力がこの世界にも存在していたということの証明である。
宗太はほくそ笑む。
魔法が使える今、この世界に怖いものは存在しない。
心置き無く、復讐をすることができる。
一旦、教師は終わりだ。
――宗太は、次の復讐を求めて職員室を後にする。
パッとしないかもしれませんが、これからパッとする展開が待っているのです(多分)
四章は、パパっと駆け抜けたいと思います。




