14、復讐の終結は魂を導く
先に言っておきます。
前回みたく、展開が急です。
(個人的には、無理がある展開だとは思っていませんが……)
勇者に襲い掛かる。
勇者は勇者と呼ばれるだけあって、凄まじい力を持っていた。
恐らく、勇者に太刀打ち出来るのは、この世にソータくらいしかいないだろう。
しかし、物理魔法と生命魔法に加えて脂肪魔法まで使えるソータの力は圧倒的だ。その力は、勇者をも凌駕する。
それに今のソータは、普段は復讐を楽しむ為にしている手加減を出来ない状態である。
最早ソータは、勇者を殺すことしか考えていない。いわば、血塗られた思考に支配され、本能のままに行動する肉食獣だ。
優れた剣技と、並外れた身体能力、桁違いの思考力と、年齢にしては異常な経験値だけしか持たない勇者が、ソータに勝てる道理はない。
それ程に、ソータの力は常軌を逸していた。
本来ならば、「だけしか持たない」ではなく、「をも持つ」とでも言うべきなのだろうが、ソータの力はそれを反転させて余りある程に強大だった。
ソータは、無限にある魔力を惜しげなく消費して、勇者を追い詰めていく。
脂肪魔法、空間魔法、影魔法、雷魔法、生命魔法。
手札はいくらでもある。
それらを全て使って、勇者を確実に追い詰めていく。
「死ねっ! 死ねっ! 死ねっ!」
あらゆる思考能力が失われた頭で、勇者を仕留める方法を導き出していく。
空間魔法で勇者の逃げ場をなくし、それが破られる前に最速で雷魔法を放つ。
勇者は手に握った剣で弾こうとするが、圧倒的なソータの魔力を前にその剣は粉砕され、雷は勇者の体を焼いていく。
「があああぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――――!」
継続する痺れに、勇者は長い悲鳴を上げる。
途切れた悲鳴は広い教会の中を何度も反響しながら、消えていった。
勇者はよろめく体を何とか支えると、鋭くソータを睨み付ける。
ソータはその視線に冷たい視線で返すと、今度は炎を放つ。全力で魔力を注ぎ込んだ、全てを焼き尽くす死の炎。
剣を失った勇者は、自力で避けるしか選択肢を持っていない。
ソータは自身の勝利を確信した。
だが、流石は勇者と言うべきか、その身のこなしは軽い。次々と襲い来る炎を、全て的確に躱していく。
当たれば確実に勇者を殺す高威力の炎も、当たらなければ意味がない。
ソータは躍起になってそれを当てようとする。
連続で放つ。同時に複数個を放つ。様々な試行の末に、その数はどんどん増えていく。
しかし、無尽蔵の魔力は尽きることなく、確実に勇者を追い詰めていく。
気付けば、勇者は部屋の角まで追いやられていた。
――ニヤリ。
嗤ったのは、ソータではなく勇者だった。
ソータは、頭上に疑問符を浮かべる。
その疑問の答えはすぐに示される。
刹那、床が吹き飛んだ。
ソータの視界は揺れて定まらない。
「お前を呼ぶのに、何も罠を仕掛けていないとでも思ったか? ハッ、刺し違えてでもお前を殺すつもりだったんだよ! じゃあな、ソータ!」
追い詰めていると思っていたソータが、実は勇者の思い通りに踊らされていた。
絶望に染まると思っていた勇者の顔は絶望に染まらず、代わりにソータの顔が絶望に染まっていく。
その圧倒的な火力を秘めた爆発は、ソータと、さらには勇者をも巻き込んで広がっていく。
その威力は、何が何でもソータを殺すという勇者の恨みの大きさだった。
カラダが高温に曝され、焼けて、焦げて、溶けていくのを感じる。
その爆発の渦に巻き込まれて――
――ソータは死んだ。
――勇者も死んだ。
――勇者は復讐を果たした。
――ソータも復讐を果たした。
だけど――ソータの胸の内には、微塵の達成感も快感も、存在していなかった。
最後の復讐とも言えない復讐は、全て勇者の思惑通りに進んでいたのだから。
▽
そして――
『滑稽だな……』
声が響き――
――ソータが目を覚ましたそこは、紛れもない地球だった。
これで三章は終了です。
次回から四章にはいります。




