表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/48

10、復讐の恐怖は狂乱を引き起こす

グロ注意です。

今まででトップレベルかもしれません。

 三人が死んだ。

 それを静観していた他の団員達も、明らかな恐怖をその表情に刻み込んでいる。


 彼女達は十分に絶望している。

 このまま同じ方法で復讐を続けてもあまり面白くない。

 だから、ソータは魔法を使わないという条件は崩さずに、やり方を変えることにした。


 ナイフを、固まっている団員達に投げる。

 それに習って、ルーシャも同じように投げた。


「二人が一つずつ持て」


 ソータが命令する。

 彼女達はそれに黙って従い、八人いる中の二人が一つずつナイフを持つ。

 何をされるのかと、強張った顔をソータの方に向ける。


「じゃあ、二人で殺し合いをしてくれ。殺した時点で決着。勝者は次の試合に進める」


 詰まるところ、トーナメントだ。

 二つあるナイフを一人一つ持たせ、殺し合わせる。

 生き残ったら、次の試合。

 これで最終的に生き残るのは、一人となる。


 同じ神を信仰する仲間である彼女達は、その絆と仲間意識を無視して――無理矢理意識の外に追い出して、必死に戦うのだろう。

 勝てば勝つほど、親しい人間を自らの手で死に至らしめなければならない。

 しかし、負ければ命を失う。


 説明を聞いて、ナイフを持った二人が、同時に座り込んだ。

 二人は先程まで抱き合っていた。仲が良いのだろう。

 だからこそ、二人は戦いたくないと言う筈だ。


「あ、戦いたくないって言うなら、俺が全員纏めて殺すから」


 一人が、フラフラと立ち上がった。

 ナイフをしっかり握り締める。


「あ、あ……、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 両手で持ったナイフを突き出し、震える足で、しかし転ぶことなく、全速力でもう一人に向かって駆けていく。

 その眼は紅くなり、その端から次々に涙を零していた。


「ごめん! ごめん! ごめん!」


 繰り返し謝りながらも、ナイフを呆然とするもう一人に向かって一気に突き刺した。


「ご、ふ、ゴフッ!」


 口から血を吐く。

 その目は見る見るうちにせいの光を失っていく。

 足の力が抜け、そのまま床に崩れ落ちる。

 そう、死んだのだ。


 しかし、床に崩れ落ちたのはその死体だけではなかった。

 殺した方も、床に倒れ込んだのだ。


「あ、あぁ……」


 返り血で紅く染まった手を呆然と眺めながら、幾度となく涙を零す。


「ごめんっ! 本当にごめん! あっ、ああぁ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 絶叫しながら、床に両肘両膝を付いて蹲る。

 手で頭を搔き毟る。

 そのまま、吐瀉物をそこら中に撒き散らす。


「うっ、ううっ……」


 ニヤニヤと口元を緩めながらその様子を見ていたソータだったが、彼女が落ち着いた様子を見せ始めると、次の指示を出した。

 死体からナイフを引き抜き、死体が握っていたナイフも回収する。

 そして、それをもう一度固まっている団員達の方向に投げる。


 今度は、誰も取ろうとしなかった。

 あの凄惨なものを見せられたら、当然のことだ。

 死にたくないのは勿論のこと。それに、誰もあんな業を背負いたくない。


 ソータは、冷たい目で睨み付ける。

 すると、二人が渋々といった様子でナイフを拾う。

 しかし、そこで止まる。

 どちらも、相手を殺そうとしない。


 しかし、睨むだけでナイフを拾った二人だ。

 もう一度恐怖に曝してやれば、躊躇わず、自分の命を優先するだろう。

 ソータは二度睨み付ける。


 結果は案の定だった。

 すぐに、ナイフを振り回し始める。

 滅茶苦茶に振り回されるナイフが、相手の体を徐々に傷つけていく。


 そして、決定的な一撃が入った。

 片方が放ったナイフが、相手の心臓を刺したのだ。

 口から、胸から、赤い命を流していく。


「ぐ……う……」

「くっ、クハハハハハハハハハ!」


 苦しみと、喜び。

 二人が表す心情は、全くの逆だ。

 人殺しを経験して壊れてしまった一人は、甲高く笑い続ける。


 そして、そこから混沌が始まった。

 仲間を殺して笑っていることに怒ったからか、恐怖が限界値に達したからかは分からない。

 震えながら見ていた一人が笑い続けている彼女に殴り掛かったのだ。


 ――絆は、崩れる。


 二人は掴み合い、殴り合い、やがて、片方が命を落とす。

 別のもう一人が乱入してきて、生き残った方を殺す。

 別の三人が殴り合い、蹴り合い、同時に事切れる。


 もう、彼女達は、自分が何を目的に、何をしているのかも分かっていないのだろう。

 ただ、本能にしたがって、目の前の生命を奪う。

 自分が死なない為に、相手を殺す。


 躊躇など、もうない。

 所詮彼女達の良心などまやかしだったのだ。


 互いの命を、貪り合う。


 ソータとルーシャが、それを喜悦に染まった顔を浮かべていることにも気付かずに。

 ソータとルーシャの手のひらで転がされていることすらも忘れて。


 そして最後。


 体を血で光らせる最後の一人――ローズが、息絶えた。

 リーダーらしく、最後まで生き残ることができる強さは持っていたが、乱戦から生還することはできなかったようだ。


 ソータとルーシャは、血と肉片を踏みながら、聖女(復讐)の元へと向かっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ