7、侵入者の正体は――
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ソータは寝ていた。
食事を終えてしばらくゆっくりした後、宿に備え付けられた風呂に入ると疲れがドッと出てきたので、早々に床に着くことにしたのだ。
そして深夜。ソータは目を覚ます。
知らない気配を感じ取った為だ。
いくら疲れていようとも、警戒は常にしている。
本来は索敵魔法を使うことのできるルーシャの仕事だが、彼女一人に任せておくのは心配なのだ。
実際、彼女は今もまだ、この気配に気付かずに寝ている。
ソータは、その気配に気付かずに暢気に寝ているフリをしながら、警戒を強める。
気配が徐々に近付いてくる。
ルーシャはこれだけ近付いてきても起きる気配がない。索敵魔法を本当に使用しているのか、疑ってしまう。
ソータはこの後の対応を考える。
ここは捕まっておいた方が早いかもしれない。
ソータとルーシャの力を持ってすれば、何をされたとしても大概は脱走出来るだろうし、相手を殺すこともできるかもしれない。
ならば、自分達を狙う相手が誰なのかを突き止めておいた方が、後で楽だ。
日本に比べると、この世界のセキュリティは甘い。
特に魔法などを使わなくても、音を立てずに部屋へ侵入するくらいはできる。
案の定、相手は音を立てずに窓を外して入ってきた。
ソータは寝た振りを続ける。
そして、空間魔法と風魔法を使って侵入者の動きを確かめる。
その顔は、仮面が付けられていて見えない。体も服に覆われていて、性別すら分からない。
侵入者はソータを一瞥すると、まずはルーシャの近くにしゃがみ込んだ。
暫くすると、ガチャンという音が部屋に響き、ルーシャの手首に手錠が嵌められる。更に、足首にも。
そして最後に魔法が使われる。
「あ……く……」
ルーシャが苦しそうな声を出し、みるみるうちに生気が失われていく。
恐らく生命魔法だろう。
それも、この吸収速度から見るに、相当な手練れだ。
それが終わると、視線はソータに向けられる。
意識を奪われて動けなくなるのは少々心配だが、ルーシャが生かされている以上、殺される心配はないだろう。
ここは大人しく相手の思惑に乗っておくことにする。
侵入者は手錠と足枷をソータに付ける。
さらに、生命魔法で生気を吸われる。
その時に漏れ出た侵入者の魔力はどこまでも濁り、そして……ソータは、その魔力に懐かしさを感じた。
意識が薄まっていき、暗転する――
――目はすぐに覚めた。
寝ている間の時間というのは、早く流れるものだ。
ソータはすぐに周りの気配を探る。
勿論、索敵魔法を使える訳ではない。
だが、精度は索敵魔法ほどではないものの、風魔法と空間魔法を複合することによって、その場の広さや物の配置などはある程度把握することができる。宿でやったことと同じだ。
結果、ここにいる人の数は四人、広い聖堂のようなところだということが分かった。
四人のうち一人はソータと同じように転がされている。恐らくルーシャだろう。
それ以外の三人が会話をしている。
ソータはそれを盗み聞きする。
「この素質値、ようやく見つけたわ」
「えぇ、ようやくこれで我が神の役に立てます……」
「それにしても、ソータ殿がこんな素質を持っていたなんて予想外でしたわ」
「わたしからしてみれば、豚がこんながこんな素質を持っていたことも、豚がいつの間にか痩せていることも、豚がルーシャと一緒にいることも、全てが予想外だわ」
ソータはその声を聞いて驚く。
三つとも、聞き覚えのある声だ。
一つは忘れようもない、恨めしい声。
後の二つは、先日聞いたばかりの声。
そう――《聖女》シエットとローズ、もう一人は宗教団体の中で最も高齢だった女性だ。
話の内容からしても、それは間違いないだろう。
ソータは、聖女が宗教団体と関わっていたことと、聖女がわざわざソータを誘ったこと、この二つに驚く。
そして、それと共にふつふつと怒りが沸いてくる。
自分を攫ったことと、自分のことを立て続けに豚、豚、と罵ったこと。攫われたのはわざととはいえ、やはり怒りは沸いてくる。
もしかして、あの宗教団体は聖女の言いなりなのか。
狙って、ソータ達を陥れたのだろうか。
そうだとしたら、復讐をしなければならない。
ソータは、自分の身を脅かす存在を決して許さない。
数日間に渡る同行で、ローズ達にも親愛の情は多少ながら湧いてきていた。
だが、復讐と自分の身が第一だ。
それを脅かすやつは、それが誰であろうと許さない。
ソータは決める。
ルーシャが起きたら復讐をしよう。
もしこのまま泳がせておけば、勇者の行方も探ることが出来るかもしれない。
しかし、もう耐えられそうにない。我慢できない。
只でさえここまで、長年聖女相手には怒りを溜め続けてきていたのだ。
これ以上お預けなんて有り得ない、そうソータは思う。
ローズ達を前菜に、そして聖女をメインにして嬲ってやる。
ソータは密かに、ほくそ笑んだ。




