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4、才能の光、王都を塗り潰す。

今回も多分平気……。

 馬車に乗ってから数日が経った真昼。

 王都に入ったソータは、ローズ達一行と別れる。


 結局、ローマンの街で購入した食料は、ほとんど消費しなかった。ローズ達が調理していたものを、一緒に食べたからだ。

 しばらく王都での買い物は必要なさそうだ。


「ルーシャ、買い物は必要ないから先に宿を取ってしまおう」

「えぇー、あたしは街をぶらつきたいんだけど」

「宿を取れなくなるかもしれないから、そっちを先にしたいんだが……」


 そして、議論の末に宿を取ったらすぐに街の中心へ買い物に行くということで話は纏まり、宿を探して歩き回る。

 宿の位置をローズに聞いておけば良かったと思いつつ、しばらくしてようやく王都の外れに良さげな宿を見つける。


 ソータはその宿を見上げた。

 木造の、シンプルながら綺麗な外観は、ソータに心の安らぎを与えてくれる。

 一目見た瞬間、ソータはこの宿に泊まると決めて、ルーシャの反応を顧みることもせずに、中に入っていく。


「二人、取り敢えず一週間分を」

「同じ部屋で良いかい?」

「あぁ、問題ない」


 そんなソータと店主の会話を聞いていたルーシャが、突然短い声を上げ、頬を紅潮させる。


「えっ!?」

「連れは驚いているようだが、本当に良いのかい?」

「え? 何か問題あるか?」

「べ、別に良いわよ!」

「ということだ」


 顔を耳まで赤くして目を逸らしていたルーシャに、平然とした様子のソータは早く行こうと促す。


 そして、宿にしては広めの和室に通され、少ない手荷物を置く。

 荷物は基本的に空間魔法で収納している為、手に持っているものはそこまでの量ではない。少ない荷物に広い部屋は、少し寂しく感じられる。


 ルーシャはプラメト村にもローマン街にもなかった様式の部屋に感動したようで、部屋に入ってからはしきりにキョロキョロと周りを見渡して、目を輝かせている。


「おいルーシャ、街行かなくて良いのか?」

「はっ……!」


 慌てて荷物を置いたルーシャは、部屋を出て行こうとするソータを慌てて追う。


 宿から王都の中心部までは歩いて数十分だ。

 最近は、ソータとルーシャの会話もそこそこ続くようになり、二人で喋りながら歩いていれば、そのくらいの時間はすぐに過ぎ去る。


「ルーシャ、神っていると思うか?」


 歩いている最中、ソータはルーシャに話を振る。

 今までのソータであれば、こんな話を振ろうともしなかったであろう。いくら気になったことでも、ルーシャに聞こうとせずに一人で考えていた。

 二人の関係は、確実に変わり始めている。


「神……、神ねぇ……」


 ルーシャは、首を傾げて考える。

 美しく輝く金髪が、それに合わせて揺れる。

 ソータは、その髪の毛を見て、何故だか綺麗だと思ってしまった。そんな自分に、ソータは疑問を抱く。

 そんなことを考えていたソータの内心など知る由もなく、ルーシャはソータの質問に答える。


「神は……いるかはわからないけど、いないでほしいわ……。いたら、絶対に恨んでしまう……。憎んでしまう……。それで自分の不幸を神のせいにして、この復讐心を忘れてしまう……」


 ――復讐心を忘れてしまう。

 もし本当に神がいて、それをルーシャが認めてしまったら、このルーシャとの関係は終わってしまうのだろうか。

 そう考えたソータは、胸に痛みを感じて顔を顰める。


「はぁ……」


 ソータは溜め息を一つ吐く。

 さっきから何だか変だ。


 話題は途切れ、二人は黙って歩く。

 しかし、あるのは気まずさではなく心地良さだ。


 その時間はあっという間に過ぎ去り、気付くとローマン以上の喧騒に支配される王都の中心街に居た。


「へいらっしゃーい! 今日はマグロが安いよー!」

「新鮮なお肉はいかがー!?」

「ふぉっふぉっふぉっ、わしがお前達の素質値を見てやろう」


 様々な声が交差する中で、ソータは一つ、興味を持つ。

 それは、素質値という単語だ。

 ソータは屋台を出している老婆のところに向かう。


「素質値ってのは何だ?」

「その人が秘めたる力のことじゃよ。わしが開発したオリジナル魔法じゃ。どうだ? おぬしらもやっていかぬか?」

「あぁ、じゃあ頼む」


 眉唾物ではあるが、お金は余っている。楽しそうなので、やってみて損はないだろう。

 ソータは、この手の占いにしては明らかに安い値段を、老婆に手渡す。


「ふぉっふぉっふぉっ、その手を出してくれ」


 先をルーシャに譲る。

 老婆に従って、ルーシャは手を出す。

 その手は、老婆にしっかりと掴まれた。

 その瞬間、ルーシャの顔に疑問が浮かぶ。


「手を離すんじゃないぞ? では始めよう」


 老婆が言った瞬間、手と手の触れ合ったところから光が放たれる。

 それは波打ち、色を変えながら勢いを増していく。

 やがて、光は王都全体を包み込んだ。

 驚いた人々が足を止め、絶え間なく動き続けていた世界が、一瞬にして静止したような感覚すら得られる。


 多くの人が呆然とする中、その光は次第に勢いを失っていき、やがて収まった。


「むぅ、こんな素質、あの人(・・・)にも匹敵するじゃない……」

「どうかしたのか?」

「ふぉっふぉっふぉっ、あまりの素質に驚いただけじゃ」

「そうか。じゃあ次、俺をやってみてくれ」


 そして、先程までのルーシャと同じように、ソータは老婆の手を握る。その手は、ソータに懐かしさのようなものを感じさせた。

 そして発せられる光。


 それは、世界を塗り潰した。

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