3、宗教、転生せし者達
今回は目が覚めているときに書いたので大丈夫!
「良かったら、わたくし共と一緒に王都まで来てくださいませんか?」
そう言ってソータを見つめるのは、盗賊から助けた女性達の中で最も位が高そうな人物だ。
布で顔と頭を覆っている為どんな容姿をしているのかは分からないが、唯一見える目は金色に光っている。
この申し出は、歩くことに疲れていたソータ達にはありがたかった。もし相手側から言われなくても、こちらから頼み込んでいただろう。
しかし、相手が宗教団体だと、何となく頷くのも憚られる。
宗教という存在自体を貶している訳ではないが、信仰心は時に面倒事を呼び込む。
「…………」
ソータは押し黙ったまま、横のルーシャに目を向ける。
同じくソータを見ていたルーシャは、ソータの内心の葛藤など知らずに、不思議そうに顔を傾げている。
ソータは、その顔と態度に毒気を抜かれる。
「分かった……俺達も付いていこう」
ようやく決意をしたソータは、そう返事をする。
考えてみれば、わざわざ悩む必要もなかった。
面倒事に巻き込まれたとしても、ソータとルーシャ程の力があれば大抵のことは片付けられる。
「ありがとうございます……。あぁ、我が神よ、この幸運に感謝します……」
「「「ありがとうございます……」」」
恐ろしく前向きな連中だ。
この幸運というのは、ソータ達に窮地を救われたことに対して言っているのだろう。
しかし、そもそも、盗賊に襲われたこと自体が不幸なのだ。
分かりやすく言うならば、不幸中の幸い。
これを感謝するなんて、普通の人間にはできないだろう。
ソータが胡散げに見ていると、女性がそちらを見る。
そして、女性は言う。
「我が神は、仰りました。人生は、出逢いによって絡み合い、出逢いによって一つの有るべき終着点へと導かれるのだと。どんな過程、どんな事情での出逢いにも、感謝をしろと。それが出来ない者が、不幸になるのだと」
胡散臭い。
「わたくしの名前は、ローズです。短い間ではありますが、よろしくお願いします」
「あ、あぁ、こちらこそよろしく」
そしてソータは、何やら集まって話している女性達の方に目を向ける。
彼女達は、一様に困った表情を浮かべていた。
同乗する以上、知らんぷりはできないだろう。
ソータは女性達に声を掛ける。
「どうかしたのか?」
「え、えぇ……。賊達を避けようとして、馬車が脇道に逸れてしまって……。上手く元の位置に戻すことができないのです……」
困った顔をしていた女性達のうち、最年長と思しきおばさんが、そう答える。
このまま待っていても、出発が遅れるだけだ。
「ルーシャ、強化魔法を頼む」
「わざわざあたしに頼らなくても、アンタならどうにかできるでしょ? まあいいわ。やってあげる」
ソータは身体が強化されたのを感じると、馬車のところへと歩いていく。
そして、馬車を軽々と持ち上げると、丁寧に道へと運んで乗せる。
「ありがとうございました。本当に助かりましたわ」
ローズはそう告げると、馬車の中に入っていく。
運転をするのは、最年長に見えるおばさんらしい。彼女だけが馬車の中に入らず、馬車馬に跨がる。
次々と乗り込んでいく女性達に続いて、最後にソータが乗り込むと、馬車は音を立てて走り始める。
「この宗教はどんな宗教なんだ?」
ソータは、馬車が走り始めると最初にそれを聞く。
ローズはそれに嫌な顔一つせずに答えてくれる。
「実は、ここにいる方達は、皆一度死んでいるのですわ」
ソータは、ギョッとしてローズの顔を見る。
通常、死んだ人が生き返るなんてことはない。
あるいは、生命魔法を極めればできるのかもしれないが、沢山の魔法理論や魔法史を読み解いてきたソータも、そんな事例を聞いたことはない。
しかし、ソータは一人だけ知っている。死んで生き返った者のことを。
「どういう……ことだ……?」
「我が神は、死んだ人の魂を導くことができるのです。わたくし達は、一度死にました。しかし、その魂を導いて、新たな人生を授けてくださったのです」
詰まるところ、転生である。
ソータは、宗教団体なんて、神なんて嘘っぱちだと思っていた。
しかし、人を転生させられるのなんて、魔法を極めた天才か、神くらいのものだろう。
もしかしたら――神は居るのかもしれない。
「あなた方は、王都には何をしにいくのですか?」
「ソータと、ルーシャだ。目的は……そうだな、観光だ」
「ソータ様ですか、名前も聞かず、失礼しました。それで、観光なら、わたくし共の教会に止まりませんか? 我が神も、それを望んでいます」
ソータは考える。
教会に泊まったりしても良いのだろうか、と。
教会は、宗教の中心となる場所であろう。
そんなところに、教徒でもない自分達が入っていくのは止めた方が良い。
何より――何かが引っ掛かる。
「悪いが、それはやめておこう」
「そうですか……。我が神は寛容な方なので、教徒以外を招くことも許可されております。もし気が変わることがあったら、いらっしゃってください」
「あぁ、ありがとう」
ソータが覚えた違和感は、正体を突き止められないままに忘れ去られる。
そして、何事も起きずに快適な旅は進み、数日が経過した後、ようやく目的である王都に到着した。




