2、道中のテンプレ?
推敲完了
ソータとルーシャは、ダラダラと足を進める。
もう何日が経過したかも覚えていない。それ程の時間を歩き続けているが、全く王都に辿り着く気配はない。
「こんな淡々とした旅、いつまで続けていれば良いのよ……」
季節が巡り、夏が近付いてくるにつれて、気温が上昇しルーシャの泣き言は増えていく。
最早ルーシャには、常時展開していた索敵魔法を使えるだけの体力も残っていない。
ソータも、口には出していないものの、内心かなり参っていた。
終わりの見えない旅は、二人の精神力を否応なく削っていく。
「馬車を買っておけば良かったな……」
「空間魔法で戻れないの?」
「戻れることには戻れるけど……多分このまま歩き続けた方が早く着くんだよなぁ……」
「馬も空間魔法に入れて戻れば良いじゃない」
「そんなことしたら、馬がどんな動きをするか分からな――」
そこで、ソータは唐突に言葉を切る。
不思議そうな顔をしているルーシャに、手で喋るなと告げる。
ソータが真剣な目を向けた先には、果たして一台の馬車が止まっていた。
整備された道から少し逸れた、草木が鬱蒼としているところだ。
それだけなら、別段問題もない。問題は、その周りを柄の悪い男達――盗賊と思しき者達が取り囲んでいることだ。
ソータは思う。これは千載一遇のチャンスではないのかと。
馬車があるのが良い。欲しがっていたところで、狙い澄ましたかのようなタイミングだ。
そして、さらに良いのは、その周囲を盗賊が囲っていることだ。
これを助けることができれば恩を売ることができ、王都まで馬車で連れてってくれるかもしれない。
それに、もし交渉が決裂しても、馬車を強奪することができる。盗賊に罪を押し付けて。
誰かにその死体を発見されたとしても、盗賊の仕業だと思わせることができれば、大きな騒ぎにはならない。
横を見ると、ルーシャも同じ考えに至ったらしく、目を輝かせていた。
ソータもルーシャも、過酷な道のりにはとことん滅入っているのだ。
例え手を汚したとしてもそれは今更。
馬車という移動手段には変えられない。
「――――」
話し声が聞こえたので顔を上げると、馬車の中から一人の女性が出てきたところだった。
女性は苦々しい顔を浮かべて、盗賊達と睨み合っている。
「代表として出てきたのが女性ってことは、あの中には女性しかいない可能性が高いわ。相当な強者がいない限り、あの数の男を相手にするのは辛い筈よ」
ルーシャの言う通りだろう。
そうでなければわざわざ女性を出してくる意味がない。
取り敢えず、その女性の動きを見てみることにした。
じっくり観察していると、盗賊のリーダー格が一人動いた。
一人出てきた女性に襲い掛かったのだ。
手に持っていた、錆びた短剣で女性に向かっていく。
女性は身をかがめ、目を閉じる。怖がってのことだろう。初心者だと一目で分かる動きである。
やはり、この女性が強かったわけではないようだ。
女性に向かっていく短剣が刺さることを確信したのか、盗賊は醜い顔をさらに醜く歪め、嗤う。
しかし、結果は盗賊の予想通りにはならなかった。
「なぜ……? だっ、何故だっ!?」
ソータが創った高密度の空気の壁が、攻撃を阻んだのだ。
先を確信していただけに、その通りにならなかった時の驚愕はより大きなものとなる。
「どうして……、どうしてだ……。今のは確かに刺さる筈だった……」
呆けながら、事実を受け入れようとはせずに、ぶつぶつと小声で言葉を並べている。
盗賊には、何が起きたのか全く理解出来ていないのだろう。
時間が経過し、盗賊はもう一度短剣を握り締める。
そして、一気に女性へと突き刺す。
今度は、前とは違う結果になった。
「な、なぜ? なぜだ?」
盗賊達にとっては、前よりも認めがたいであろう結果に。
短剣が、金属部の根元からポッキリと折れたのだ。
地面に落ちて、その衝撃でさらに形を崩したその短剣は、酷く赤茶けていた。
「少し酸素を加えてみたんだけどどうだ? それにしても、思ったより鉄って脆いんだな」
そう言いながら、ソータは盗賊達の前に姿を現す。
それを、盗賊達は愕然と見つめている。
それは、突然姿を現したことに対する驚愕と、短剣を一瞬にして折ったことに対する驚愕。
「お前……何をした……?」
武器を折られた張本人――リーダー格の盗賊は、ソータにそう尋ねる。
「ただ、鉄を酸化させただけだ」
ソータは、事もなさげに、そう告げる。
鉄は錆びると脆くなる。物理魔法、あるいは脂肪魔法を使えば、鉄製の武器を折るくらいは簡単なのだ。
勿論この世界の人間に物理を説明しても分かるはずがない。
現に、盗賊は首を傾げている。
ソータは、相手が理解もできない物理について考えているのを待つ必要もないと思い、攻撃を再開する。
数十人といる盗賊を一人一人倒していくのも骨が折れるので、ソータは高威力の魔法で数人ずつ殺していく。
ソータの魔法に、盗賊達は為す術もなく地に伏していく。
そして、最後の断末魔が辺りに響き、盗賊の全滅を示していた。全滅までに、一分も掛からなかった。
ようやく、安堵した被害者達が次々と馬車の中から出てくる。
それを見て、ソータは助けたことを少し後悔する。
彼女達は、全員が同じ服を着ていた。
真っ白い服に、顔を覆う布。
詰まるところ、宗教団体だったのだ。




