6、情報収集と、意外な繋がり
食料は蓄えた。
金も貯められた。
元々予定にはなかったが、物理魔法を習得することもできた。
ソータとルーシャがこの街でやるべきことは、あとは復讐だけである。
「そろそろやるか……」
「あたしは関係ないけど、手伝ってあげた方がいいわよね?」
「まあ、復讐の選択肢が増えるに越したことはないが……」
そして、冒険者ギルドに歩いていく。
相も変わらず賑わっている商店街の中を抜けると、すぐそこだ。
「あら、今回はどのような要件ですか?」
昨日とは打って変わって、丁寧な様子の受付嬢。
しかし、それはソータ達が意外と強い力を持っていると知って、媚びへつらっているだけだろう。
直接口に出した訳ではないが、昨日、散々バカにするような態度をとってしまった。もしこれ以上気に障るようなことを行ってしまったら、怒ったソータに危害を加えられるかもしれない。
そうなったら、ドラゴンを二人で倒すような人達に、受付嬢如きが敵うはずがない。
ソータは頭の中で受付嬢を嘲笑する。
どれだけ媚びを売ってきても、彼女は既にソータの復讐対象に入ってしまっている。もう遅い。
「いや、今回は勇者と聖女についての情報がほしくて……」
「他人の情報を不用意に流すのは禁止――」
そこまでで、言葉が途切れる。
ソータが無言のまま、手のひらに火を灯したからだ。
しばらく無言で睨み合うが、受付嬢が諦めたように溜め息を一つ吐き、静寂が途切れる。
「――わかりました……。何が聞きたいんですか?」
「取りあえず、今どこに居るのかと、今何をしているのかを」
「勇者様と聖女様は、王都で依頼を請けた記録があります……。極秘任務らしく、詳しいことはギルドの連絡網にも書いていません。……これでどうですか?」
嘘ではなさそうだと、ソータは判断する。
「ありがとう。それと、もう一つ。この顔に見覚えはないか?」
そう言いながら、ソータは事前に両親の顔を書いておいた紙を受付嬢に見せる。
すると、受付嬢は露骨にギョッとした顔になった。
「なっ……!? ボス!? それに姐さん!?」
余程驚いたのだろう。口をパクパクさせている。
ボスと姐さん……。ヤクザでもやっているのだろうか。
「で、知っているのか?」
「この人達については、絶対に話すことはできません……」
「これでもか?」
ソータは受付嬢の手に向かって火の弾を飛ばす。
とっさのことに避けられもせず、受付嬢の手に命中する。
「あっつ! あちち! あちっ!」
手を押さえながらのたうち回る。
目からは涙を流し、口からは呻き声を発している。そして、患部は焼けただれてグチャグチャになっている。
「これでも言う気はないか?」
「絶対に……言えません……っ!」
ソータにあんな態度で接してきた両親が、ここではこんなに信頼される何かを積み重ねてきたのだろうか。
いや、そんなことはありえない。きっと利用されているだけだ。
しかし、本当に利用され、上手く騙されているのなら、痛みなどを与えて情報を吐かせることは困難である。
そこまで考えたソータは、対抗策を思索する。
記憶や思念を読み取るのは、生体魔法の領分である。
ルーシャなら読み取れるかもしれない。
結論を導き出したソータは、ルーシャに聞く。
「生体魔法で記憶を読み取れないか?」
「勿論できるわよ。やるわ」
ルーシャは受付嬢の頭に手を置く。そして、ソータとも手を繋ぐ。
次の瞬間、ソータの頭の中を夥しい量の記憶や情報が流れ込んでくる。
「ぐ……ぐぅ……!」
あまりの情報量に、ソータは頭を抱える。襲い来る酷い頭痛。
しかし、それにも次第に慣れてくる。というよりも、流れてくる情報量が調節されたのだろう。
そして、脳裏に映る、受付嬢の過去。
彼女は、孤児だった。
親に捨てられていたのだ。
生きるために、何でもした。
生き抜くために、何でも食べた。
生き残るために、何でも引き受けた。
そんなある時、彼女はある人に拾われた。
ソータの両親だ。
ヤクザをやっていたソータの両親は、幼いながらも様々な技能を身に付けている彼女を買った。
そして、彼女は仮の両親と、その取り巻きたちと、楽しく暮らした。
そのまますくすくと育っていき、色々なことを両親から任されるようになっていた。
その何回目かの任務は、ギルドへの潜入。
それから一年程で受付嬢に就任し、三年間今の地位に落ち着いている。
映像が途切れるとソータは、意識を取り戻した受付嬢に目を向ける。
「なるほど、あいつらはヤクザなんてやっていたのか……。ギルドへの潜入なんていくらなんでもやりすぎだと思うが……まあいい……」
それから数秒間、ソータは考える素振りを見せる。
そして、決断を下す。
「お前は後回しだ。そこにいる冒険者共を先にする」
両親が彼女に愛情を注いでいたのかは分からないが、少なくともソータ以上に大切にされていた様子だった。
彼女は両親への復讐に使えそうだと、ソータは判断する。
それに、使えなくても、逆にこいつへの復讐に両親を使うことは確実にできる。
「まぁ、取りあえずはこいつらだな」
ソータは、昨日とは打って変わって何故か静かだった周りをぐるりと一回り見渡す。
目が合った冒険者達は、怯えた目をしていた。




