コーヒー汁
私はしがない殺し屋である。今日はターゲットが良く通うコーヒー喫茶の店長に成り済まし本物の店長に睡眠薬を投入して眠って貰った。開店の時間が2時間程過ぎてからカランと音を立ててターゲットが入ってくる。何でも結婚しているのに不倫して落ちぶれたミュージシャンとの事だがどうでもいい情報である。
「あれ、店長居ないの?新人さん?」
「そうです、どうぞ席へお座り下さい」
等と行ったやりとりの後彼はいつもの通りに注文を始める。
「コーヒーとサンドイッチ、いつものやつね」
「はーい」
なんつって、いつものやつって何だろうと私はサッサとコーヒーに毒薬を混入する。自分でブレンドした特製の毒粉である。微量でクジラも泡を吹く優れ物。
「どうぞ、先に召し上がり下さい」
「ありがとう、気が利くね」
啜る彼の顔を眺めている。2、3口もすればバタリと倒れるであろう彼の顔は何故か爽やかであった。
「新人さん、これ・・・」
気づかれたか?
「しゅんごい美味いね!!」
マジすか。蕩けた様な笑みが溢れている事から嘘は吐いてないと見てとれる。
「ありがとう御座います」
平気じゃないのはこっちだ。思わず、ぶわっと変な汗が出る。
「もう一杯いいかな?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
私は首を傾げる。何故毒が効かないのか。
それは100年後の事になるが、ある科学者が私の特製毒薬とコーヒーの関係について論文を発表した。コーヒーに含まれるカフェインとの化学反応その他により無害になるどころか、しゅんごい美味いコーヒー汁になるとの事である。とは言え100年後の話。今の私にそんな事を知る術は無く
私はただただ、ひたすらにしゅんごい美味いコーヒー汁をもう一杯作成した。
彼は、蕩けた顔でコーヒーを飲み干した。
「もう、これ病みつきになるわー・・・まだある?」
「・・・すいません、少々お待ちを」
私はそう言って彼に待って貰った。持ってきた毒が何かに変わっていたりはしないか、それともブレンドを間違えて本当に唯しゅんごい美味いパウダーになっているのか。
私は小指に粉を付けてそれを少し味見した。
青ざめながら視界が遠退き、私は泡を吹いて倒れる事となった。




