お兄様が入国されました ~次男編~
次男、三男…編は皇子と似たような遣り取り。
タイプの違う兄による皇子の説得。
面倒であれば、次男、三男編は、
冒頭と終り以外を読み飛ばして下さい。
兄達がいかにメンドクサイか、粘る皇子との言葉遊びです。
長男政治家思考、次男脳筋、三男商人タイプ
【白媛】
才夏国 侯爵家令嬢 母は王妹
国王夫妻の勧めで、帝国に留学中
借り住まいの皇城の庭園で、蛇姿の皇子を助けた。
皇子妃回避のため、策を練っている最中。
【緑華】
英華帝国 第4皇子
もうひとつの姿は 碧色の美しい蛇
自分を助けた白媛を皇子妃候補として婚約した。
【黄秋】
才夏国 侯爵家 次男
次期騎士団長候補
白媛は目に入れても痛くない
質実剛健を地でいく騎士の鏡
緑華皇子から供寝のお誘いがあった。
睡眠中は無意識に蛇になり冷えるからだという。
「婚姻前だから」とお断りした。
私は、祖国にいる、おにいさまに、報告し相談しておいた。
◇
「お兄様!」 「白媛!」
ひしっ、と抱きしめあったあと、お兄様は眉を下げた。
皇帝陛下の謁見を済ませたその足で来てくれた。
お兄様は次期騎士団長と期待されている騎士だ。
そのお兄様が、肩を落として嘆く様は妹の私から見ても痛々しい。凛々しいだけに。
逞しいお兄様は私にとても優しい。連絡を受けて、すぐに駆けつけてくれた。
「無事か? なぜこんな事態に」
「ごめんなさい、お兄様」
「いや、お前は悪くないだろう? 弱い者を助けたのだからな」
「だが、どうしたものか」
2人が考え込んでいると、来客が告げられた。
来客は側近を引き連れた緑華皇子だった。
「黄秋殿? お初にお目にかかる。緑華だ」
「お会い出来、感激の極みにございます」
お兄様は、無表情で挨拶を返す。
「恐れながら殿下。優しい妹が、傷ついた殿下をお助けした咎で責めを負ったと言うのは真にございますか? 万が一、事実であるならば、剣にかけましてもお諌め致します」
「何だと!」
側近達が怒りにまかせ剣に手を伸ばす。
皇子に制止され、不承不承に引き下がる。
この人達、導火線が短いのねぇ。
「弱きものを助けるのは強者の務めにございます。たとえ蛇に対してであっても、妹がその務めを果たしたことには違いありません。優しい妹は此度も、貴族として民を守る務めを果たしております。殿下は如何にございますか?」
妹思いのお兄様は、お覚悟をと言わんばかりに捲し立てた。
「貴様!無礼な!」
側近達がいきり立っている。
お兄様が斬られてしまったら、どうしましょう。
「そなたの言い分もわかる。だがな、あの時私は傷を負っていた。身を隠さねば私の護衛が責めを負ってしまう。あえて蛇の姿になっていたのだ。仕方あるまい?」
護衛騎士を守る為だったと、皇子は笑った。
「ならば、責めを負うのは護衛でしょう!」
「しかしな、そなたの妹は受けると申したぞ」
「は?!」
「開戦か、婚姻かと問うた私に、そなたの妹は婚姻を受けると申したのだ」
「白媛?」
お兄様が、凛々しいお顔をこちらに向ける。
「……致し方なかったのです」
「此方としても才夏国との戦は望まぬ。騎士たるものが、よもや違えるとは言うまいな?」
「………国に持ち帰らせていただきます」
兄は肩を怒らせて引き下がった。
緑華皇子が側近達と戻っていくのを見送ったあと、お兄様はイラただしげに壁を叩いた。
「白媛? なぜ兄に断りもなく受けたりしたのだ?」
「申し訳ありません。相談したいと申し上げたのですが、開戦かと問われまして……」
「国王陛下と父上に相談してみよう」
はあぁ、と深い溜め息をついて、お兄様は帰っていった。
◇
その日の夜半 才夏国にて。
「さすが蛇、しつこいなぁ」
いかに兄達の相手がメンドクサイか、それにつきるページです。




