お兄様が入国されました ~長男編~
【白媛】
才夏国 侯爵家令嬢 母は王妹
国王夫妻の勧めで、帝国に留学中
借り住まいの皇城の庭園で、蛇姿の皇子を助けた。
皇子妃回避のため、策を練っている最中。
【緑華】
英華帝国 第4皇子
もうひとつの姿は 碧色の美しい蛇
白媛を皇子妃候補として婚約した。
【青夏】
才夏国 侯爵家 長男 次期侯爵
次期宰相候補
白媛が可愛いくて仕方がない
男性だが、たおやかな美貌のヒト
蛇皇子との婚約なんてイヤだ。
蛇なんて大嫌いなのに。
何であの時、助けてしまったのだろう。
困り果てた私は、おにいさまに 助けて欲しいと連絡した。
◇
「お兄様!」「白媛!」
ひしっ、と抱きしめあったあと、お兄様がはらはらと涙をこぼした。
皇帝陛下との謁見を済ませたお兄様は、その足で来てくれたのだ。
「大丈夫だったかい? どうしてこんなことに 」
「ごめんなさい、お兄様」
「いや、いいんだ。おまえは、優しいからな。蛇とはいえ、見捨てることなど出来るわけがない」
兄は次期宰相候補と期待されている優秀な人だ。
その兄が、はらはらと泣く姿は妹の私から見てもとても美しい。
美しいお兄様は私にとても甘い。連絡を受けて、すぐに駆けつけてくれた。
「おまえは、この婚姻を望まないのだろう?」
「もちろんですわ。蛇の嫁など御免です!」
「しかし、どうしたものか」
2人で頭を悩ませていると、来客を告げられる。
「青夏殿? お初にお目にかかる。緑華だ」
「お会い出来、光栄にございます。皇子殿下」
来客は側近を引き連れた皇子殿下だった。
お兄様は、まったくもって嬉しくないという顔をして、挨拶を返す。
「殿下。恐れながら、此度のことは殿下の甘さにも非があったと思われます。それを可愛い妹に咎があるとされるのは、いかに皇子殿下といえど非道ではございませんか?」
「何だと?」
殿下の側近達が剣に手をかけた。
それを殿下に制止され、不承不承引き下がったが、不満なのが透けて見える。
「皇室の方々が蛇のお姿をとられることは、帝国皇室と高位貴族の方々の秘事だと伺いました。
それを、留学したばかりの妹が存じ上げるはずもございません。そもそも秘事でありながら、蛇のお姿で迂闊に庭に出られた殿下にこそ、咎があるのではございませんか?」
妹思いのお兄様は、怒り頂点ですと言わんばかりに捲し立てた。
「貴様!不敬だぞ!」
側近達が青筋をたてて怒っている。
お兄様が断罪されたら、どうしましょう。
「そなたの言い分もわかる。だがな、あの時私は刺客に襲われ、身を隠さなければならなかった。あえて蛇の姿になっていたのだ。仕方あるまい?」
暗殺されかかっていたことを、些事のように平然と口にして、殿下は笑った。
「ならばなおのこと、妹に罪はないではありませんか!」
「しかしな、そなたの妹は受けると申したぞ」
「は?!」
「開戦か、婚姻かと問うた私に、そなたの妹は婚姻を受けると申したのだ」
「白媛?」
お兄様が、綺麗なお顔をこちらに向ける。
「……致し方なかったのです」
「此方としても才夏国との戦は望まぬ。一度受けておきながら、なかったことにするとは言うまいな?」
「………国に持ち帰らせていただきます」
兄は顔をひきつらせて引き下がった。
皇子殿下が側近達と戻っていくのを見送ったあと、お兄様はガックリと腰をおろした。
「白媛? なぜ兄に相談もなく受けたりしたのだ?」
「申し訳ありません。相談したいと申し上げたのですが、開戦かと問われまして……」
「国王陛下と父上に相談してみよう」
はあぁ、と溜め息をついて、お兄様は帰っていった。
◇
その夜 某所のひとりごと。
「さすが皇子、手強い」
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