助けて下さい、おにいさま
和風、中華、どっちつかずです。
爬虫類苦手な方は申し訳ありません。蛇がでます。
R15は念のため。
まぁ、こんなに傷ついて!
さあ、こちらにいらっしゃい。
手当てしてあげる。
あ、逃げないで、逃げないで。
ほら、怖がらなくていいのよ。
大丈夫。すぐに治るわ。
散歩中の庭園、傷だらけの蛇を見つけた。
南の海のような碧色に、虹を纏ったような光沢の鱗を持つその蛇は、とても美しかった。
蛇なんて、怖くて近寄れないはずなのに、連れて帰って手当てをした。だって、本当に美しい碧色だったのだ、頬擦りするほどに。
それを激しく悔やむことになるなんて。
私は、大勢の貴族の目の前で、跪かされている。
隣には、この帝国の第4皇子様。
さすが、皇子様。助けに来てくれた────わけではなく、一緒に正座中である。
さすがに、縛られてはいないが。
4番目とはいえ、皇子は皇子だ。臣下である貴族達の前で、この仕打ちは屈辱的だろう。
光沢のある緑色の髪をした皇子は、拳を握りしめ、青ざめた美しい顔を玉座の陛下に向けている。
それより!
留学して来たばかりの、隣国の侯爵家令嬢である私を、罪人扱いするなど、開戦まったなしである。
いやいや、留学生とはいえ、国を代表して来ているのだ、開戦は避けたい。国民の為に。
あと主に、おにいさまのために。
「恐れながら陛下、この仕打ちは、一体、どういうことでございますか?」
まだ混乱していたのか、礼節を忘れて訴える。
先日の謁見で、歓迎のお言葉をくださった陛下は、鋭く目を細めて、冷えた目をこちらに向けた。
「どういうこと……か、まだ己れの罪を知らぬと申すか」
「わたくしは、このような仕打ちを受ける覚えはございません!」
「緑華よ。このように申しておるが?」
「恐れながら。陛下、私を傷ものにしたのはこの者で間違いございません。」
何を言うのか、この皇子?
私が、皇子をキズモノにしたですって?
逆じゃなくて?
意味がわからなくて呆けた。
「白媛と申したな? そなた、緑色の蛇に触れた覚えはないか?」
「!」
「あるのだな。そこな皇子がその蛇じゃ」
ギギギ、とゆっくり首を皇子に向ける。
皇子は冷たい瞳で私を見ていた。
「我が国の皇室には、成人した皇子は、婚姻するまで蛇の姿で女性に触れてはならぬ、という決まりがあるのじゃが、知っておったか?」
ブンブンと首を振る。
知るわけがない、皇室の方が蛇になることすら知らなかった。
「皇子が言うには、嫌がり避ける皇子に、無理やり触れ、あまつさえ、頬擦りまでしたそうじゃが?」
「も、申し訳ございません! あの蛇が皇子様だとは存じ上げず、ただ…」
「もうよい。そなたのおかげで、緑華はもう縁談は望めぬ。そなた以外はな」
「あ、あの、陛下。触れたといいましても、傷の手当てをして差し上げただけで……」
「本来、皇子妃は我が国の貴族から選ぶ。
じゃが、皇子を傷ものにはしておけぬ。そなたが、緑華に嫁ぐのじゃ」
「そんな!」
いくら美しくても、蛇の嫁はいやだ。
どうにかしてくれと皇子を見ると
「そなたは罪を認めたろう。たとえ、手当てだったとしても触れたことには変わらぬ」
そう宣った。
謁見の間を下がり、連れて来られたのは牢獄、ではなく、皇子の私室。
今の私には同じようなものけど。
「あの、殿下。国の父と兄に相談致しまして、相応のお詫びを……」
「ほう。私との婚姻が嫌だと?」
皇子が近づいて、私の顔を上向かせる。
「それとも、婚姻せず、皇室の掟を破ったとして、私が罪人になればよいと?」
いくら侯爵家令嬢とはいえ、隣国の皇子を罪人にしたとあっては、処罰は免れない。
それどころか侯爵家も祖国もただではすまない。
「開戦か皇子妃か、考えるまでもないと思うが?」
「…………前向きに考えさせていただきます」
「うん?」
「………………………謹んで…お受け…致します」
私は蛇に屈した。
助けて下さい、おにいさま。




