5話
御前試合をレックスに申し込まれてから一週間が経った
そして今日、ついにその火蓋が切り落とされる。
ルールは5体5の勝ち抜き戦。
まずは先鋒同士で戦う。そして先鋒の勝った方と負けたチームの次鋒が戦う。
先鋒、次鋒、中堅、副将、大将とそれが続いていく。
もちろんラナとレックスは大将だ。
俺は先鋒を担当する。
正直、納得がいかない。
てっきり副将になると思っていた。
「おい、ラナなんで俺が先鋒なんだ。なんで副将じゃないんだ」
試合の控え室で優雅に紅茶を啜っているラナに詰め寄った。
「なんで?先鋒はチームの要よ。」
「でも…俺が弱いみたいじゃないか」
「それは事実よ。あなたはこのチームで一番弱いわ。」
「騎士団長はともかく執事長や運転手より強いと思うぞ」
「執事長は多くの経験を積んでいる。それに魔法も使える。」
「じゃあ運転手はどうなんだ。あんまり戦いに慣れてないだろ」
「そうかもしれないわ。でも、あの車を運転するのは簡単じゃない。あれは魔力を使って動かすの。だからあの巨体を動かすだけの魔力がある。それだけの魔法が使えるってことよ」
魔法が使えるってあの運転手は貴族なのかよ
なんなんだあいつは
「じゃあ要ってなんだよ」
「あなたにはポテンシャルがある。どんな予想外を起こすか期待しているのよ。」
「全勝してやる」
「やってみなさい。できるものならね」
ここまで言われれば俺だってキレる。
拳を握り、ラナに一歩近づき殴りかかろうとした。
ーーその瞬間。
コンコン、と控室のドアが叩かれ正気に戻った。
「そろそろ時間です。」
「じゃあ行ってくる」
「ええ、頑張ってきなさい」
扉を開け、通路を突き進みしばらくすると、視界が一気に開けた。
試合会場には一面に人がいる。
これまでこんなにたくさんの人間を同時に見たのは初めてだ。
俺が試合会場に入ると同時に相手の先鋒が向かいのゲートから入ってくる。
双方が定位置につくと同時に歓声が沸いた。
合図とともに戦闘が始まる。
「はっ、この程度?」
「舐めんな」
初手で顔面に蹴りを入れられた俺は効いてないふりをして相手の顔面に拳を振り抜いた。
「馬鹿力め。どっからそんなパワーが出るんだよ」
「力がないと生き残れないとこに長くいたからな」
「じゃあ、これは耐えられるかな」
その瞬間相手の目の前に深紅の魔法陣が浮かび上がる。
『ファイヤッ!』
俺は体を横に転がし避けようとしたが飛んでくる火の弾丸に少しかすってしまった。
アルティの仕立てた服は燃えなかったが、かすった肩はジリジリと灼けるようにヒリヒリする。
「くッ!」
「思ったよりも効いてるようだね。これはあくまで初級なんだけど」
「テメェ…」
俺が立ち上がりながら相手を睨みつけながら喋っていると、空中にさっきの魔法陣が大量に浮かび上がった。
「まじかよ…」
さっきのが少しかすっただけでもこれだけなのに、それが大量だ。
『ムルトゥスファイヤ』
その声が聞こえて俺は意識を途絶えた。
「知らない天井だ。」
「試合は終わったわよ」
「結果は!?」
俺は寝転んでいたベットから身を乗り出し聞いた。
「惨敗よ」
ラナは淡々と答えた
聞けば、運転手、執事長、騎士団長の頑張りがありラナとレックスつまり大将同士にまでは持ち込めたけどそこで負けてしまったらしい。
俺は悔しくて夜になっても一向に眠気が訪れなかった。
気づけば俺は屋敷のベランダで1人夜空を眺めていた。
「悔しいか?」
「団長か。…ああ、悔しいよ。手も足も出なかった」
俺は自嘲気味に答えた
「お前がそこまで気に病む必要はない。俺だって負けてる。チームの総合力の差だ」
「でも…」
「でもじゃない!まぁ、悔しいと思うなら次、勝てばいいだけだ。相手より努力するんだ。修行に付き合って欲しけりゃ、俺でも執事長でも頼るんだ」
「気が向いたらな」
俺たち2人は気づいたら笑っていた。
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