4話
あれから一週間が経った。
あそこに住みついてた魔獣はあの一体だけだったようで街の被害はパタリと止んだそうだ。
俺は今、あの魔獣の頑丈な皮で仕立ててもらった服を取りに行くとこだ。
「今回の戦利品よ」とラナが一流の職人に仕立てを頼んでくれていたみたいだ。
仕立て屋はあの街にあるらしい。
屋敷から遠いからとラナが運転手を遣わせてくれた。
「あら、遅いじゃない」
俺が車に乗ると、そこには優雅に腰掛けているラナがいた。
「…なんでお前がここにいるんだ」
「いちゃ悪いかしら。一応仕立てを頼んだのは私なんだからね」
「まあいいや。とっとと行こうぜ」
「それもそうね。コッキーレ出してもらえる?」
「承知いたしました、お嬢様」
以前、車に乗せられた時何度か顔を合わせたが何気にこの運転手の名前初めて聞いたな。
コッキーレというのか。
車が走り出してしばらくするとラナが思い出したように語り出した。
「あー、そうそうあの仕立て屋、気難しいから気をつけてね。最悪仕立ててもらった服破かれるわよ」
「えぇ…。ヤバいやつじゃん」
「あなたほどじゃないわよ」
俺は少し不安になりつつ着くまでの間、車でくつろいでいた。
仕立て屋の前で服を破かれないよう、覚悟を決める準備をしていたら、ラナがドアをバーン!と豪快に開け放った。
「邪魔するわ」
あまりに無遠慮な入り方に俺は(こいつがこんなんだから気難しく感じてるだけでは…)と思い、「ごめんください」と言いながら入ろうとすると
「邪魔するなら帰りな、今忙しいんだ。あぁ?なんだお嬢か。頼まれてたものはできてるよ」
「えぇ、ありがとね」
奥から出てきた職人の親方が、ラナの背後にいた俺を値踏みするようにじぃっと眺めてきた
「で、あそこの兄ちゃんが例の?」
「そうよ」
「なぁ、兄ちゃん名はなんだ?」
「…俺はヴィンスだ。あんたは?」
「俺はアルティだ。…お嬢から魔法なしで魔獣を撃ち倒したと聞いていたからあの騎士団長ぐらい筋骨隆々のやつだと思ってたが、思ったよりも華奢なんだな」
「期待ハズレか?」
「いや何も戦いはパワーだけじゃない。技術があるってことだ。」
アルティは「ちょっと待ってろ」と店の奥の方に戻って行った。
しばらくしてアルティはあの魔獣と同じ漆黒の服を持ってきた。
「あの魔獣がこんないい服になったのか?」
「あぁ、いい出来だろ」
話している限り気難しくは感じない。やっぱりラナがあんなんだからだとーーそう思っていた、その時にだ。
「この服が欲しかったら、俺に勝ってからだ」
「はぁ?」
そんなことを言いながらこいつは拳を振り上げ、いきなり殴りかかってきたのだ。
俺は軽く避けて、ガラ空きだった胴体を蹴り払った。
アルティは少し吹き飛び気絶してしまった。
「勝ってからだ。」なんていうくらいだからそれなりの実力はあるもんだと思ったが、普通に弱かった。
結局、こいつが気絶して目をなかなか覚さないせいで結構な時間待つことになり、服を受け取るのも、屋敷に戻るのもすっかり遅くなってしまった。
ラナには帰り道、車の中で「強く蹴りすぎよ」と小言を言われたが、誰だって一発で倒れるとは思わないだろ。
「ずいぶんと遅いお帰りじゃないか。ラナ」
車を降りてすぐのことだった。見覚えのない大柄の男が不敵な笑みを浮かべながら出迎えた
「なんのようかしら。レックス…!」
「ひどいなぁ。昔みたいにお兄ちゃんって呼んでくれもいいんだぜ」
「なぁラナこいつはいったい誰なんだ?」
「自己紹介がまだだったね。俺はレックス、フェリーチェ•レックスだ。君の名前を聞いてもいいかな」
レックスはにこやかに笑いながら手を差し出した。
俺はその手を掴み不気味な笑みを浮かべる相手の目をしっかり捉え、答えた
「俺はヴィンスだ」
その手を握るだけで相当な実力者だとわかる。
軽く握ってるように見えて相当なパワーだ、いや本人は軽く握ってるつもりなのだろう。
「そろそろやめなさいレックス。」
「おや、強く握りすぎたかな。昔から人にレベルを合わせるのは苦手でね。」
「てめぇ…、俺が弱いって言いてえのか」
「いやいや、そういうわけじゃないよ。勘違いさせて悪かったね」
「で、一体何のようかしら。ただちょっかいをかけるために来たわけじゃないでしょ」
「ああ、御前試合を申し込もうと思ってね。次期領主有力候補としてどちらが相応しいか。領民たちも知りたいと思ってね」
「まあいいけど、領主というのは力だけでなれるものじゃないわよ」
「それは理解してるさ、でも領主は領地を守る義務がある。力は必須だよ、ラナ」
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