もう一つの始まり
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病室を後にした私は屋上の扉を開く。そこには、
「・・・やあ、待ってたよ。・・・・・・ええっと・・・」
少年だろうか、それとも少女? 少なくとも私よりは年下であろう中性的な人が立っていた。
「・・・・・・皆見凪茶だ。知らずに呼び出したのか?」
「あぁー、そうだそうだ思い出した。皆見凪茶さんね? 彼には凪先輩って呼ばれてたっけ?」
刹那、私は彼(彼女?)の胸ぐらを掴みあげていた。
「あなたの素性はこの際どうだっていい。だが、恭平はどこだ? 何をあなたは知っている?」
「ち・・・血の気の多い人だなぁ・・・。話すよ、話すから取り敢えず下ろしてくれない?」
しぶしぶ私は彼(彼女?)の胸ぐら離して1歩引く。すると、
「・・・ふぅ。まず要点から話そうか? あ、その前に誤解を解いておこうかな? 恭平君の昏睡状態は君の責任じゃない。何たって君攻撃あの日当ててないんだもんププッ・・・ってわァ!!? ごめんごめん!! えっ!? いつ出したのその木刀!!?」
「・・・・・・自分で言うぶんにはいいが人に言われるのは腹が立つな・・・!!」
台詞の途中の一瞬で抜刀して喉元に突きつける。と言うか解くべき誤解はそっちなのか。もっとこう・・・他にあるだろう!!
「・・・・・・うう・・・ホントに血の気多いし・・・。まぁいいや、話を進めよう。結論から言って、恭平君は君とは住む世界が違うんだよ。彼はこの世界で生まれたわけじゃ無いからね・・・」
「・・・・・・どういう事だ? この世界?」
「・・・・・・あぁー、君って異世界の存在は信じてる方?」
「・・・・・・恭平がそういう系の小説を好んで読むから全く知らないって訳では無いが・・・そういうのは信じていない方だ」
「・・・・・・小説とか読むんだ彼・・・。まぁいいや、君は信じていないかもだけど、異世界というのは存在するんだよ。神薙恭平の意識が戻らないのは、僕が彼の意識を飛ばしてるからさ。あんまり過度な接触は出来ないから、そこまでで留まってるけど」
と、そこで言葉を切り、
「けど・・・このままだと多分・・・いや、ほぼ確実に彼は死ぬだろうね。・・・そして、彼は本当の意味で彼の元いた世界へと帰ることが出来るだろうね」
「元いた世界? どういう──────」
事だと聞こうとする私を制して、
「さっきも言っただろう? 彼・・・神薙恭平はこの世界の人間ではないって。今、彼がいる世界こそが彼が本来過ごした世界。そして、1度死に近い経験をした世界なんだ」
「死に近い経験? 老いたってことか?」
少なくともこの世界で死ぬのであれば、老いて死ぬか又は事故や他殺以外ではそんなにないだろう。
「・・・違う違う。彼がその経験をしたのは17歳の時だよ。そして、この世界に飛ばされたんだ。本来彼は運命を変えるために転生したんだけど、あろう事か記憶がね・・・」
「・・・そんなこと関係ない!!」
恭平の生い立ちには興味があるが、今ははっきり言ってどうでもいい。今重要なのは・・・
「お前は、言ったよな? 『恭平を助けたいか』って? 助けられるのか!?」
そう、今大事なのはそこだ。随分脱線した気がするが。私がここに足を運んだのは、神薙恭平を救う事が出来る可能性がある、と聞いたからだ。すると、
「・・・・・・それは君次第だ。そして、それには代償もある。けど、0では無いよ」
そう返される。要は可能性は自分で開け、通行の手助けならば出来る、という事だろう。それなら・・・、
「それなら構わない。教えてくれ、私はどうしたらいい?」
迷う必要はない。
「・・・・・・分かった。けど本来、これはルール違反だ。協力者を送り込むのはフェアじゃないからね。・・・だから、君1つ条件を付けさせてもらう。それは『神薙恭平に皆見凪茶の存在が認められた場合、すぐに強制送還。尚、その際に君の身体に後遺症を残させてもらう』っていうルールだ。日常生活を送るぶんには問題ないようにするけど、今までのように剣道に打ち込むのは難しいだろうね。そしてもう一つ、今のルールは君が死んでしまった場合も適応される。だから・・・気をつけて欲しい」
「────ちょっ、ちょっと待て!! なら私はどうやって恭平を救えばいい!? それでは接触も出来ないではないか!?」
そう、このルールでは、私は恭平との接触はほぼ無理だ。恭平が私を忘れていない限り、顔を見られた段階でアウト。無理ゲーにも程がある。
「話は最後まで聞きなよ。だから君には、姿も名前も変えて転移してもらう。これならいくら神薙恭平が鋭くても、気づかれることはまず無いだろう。これでも不服かい?」
なるほど。それならば可能性はある。要は【皆見凪茶】として行くわけではない、という事か。確かにこれならリスクは減るだろう。
「・・・・・・分かった。それでいい。それで? 具体的にどうやって転移する?」
私は了承し、転移の方法を聞く。
「・・・・・・おーけい分かった。契約成立だね。」
彼(彼女?)はパチンと指を鳴らして、
「・・・・・・こうやって♡」
瞬間、私の足元の空間が消えた。
「・・・・・・へ?」
そして重力に従って落下。
「・・・・・・ヒッ、ヒアアアアアアア!!!?」
そこから先は覚えていない。最後に聞いたのは、私の甲高い悲鳴だった。




