↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/50

38占いの結果

「正直なところ、“一人で魔物の蔓延る森に入る”より危険なことが起こり得るとは思えないけどねえ」


無言のまま、パウモイもまた「それはそうっす…!」と激しく同意を見せた。


「それも、『魔色感知』があるなら頷けるわ」

「ええ。血に飢えた魔物の気配なんて、ビンビンに感じるんじゃないっすかね」


呆れたように笑うパウモイに、ムーシュラも頷く。


「感情の機微だけでなく、魔法の発動も分かるのかしら?」


そう言いながら、机に置かれたカードを一枚ずつ確認するように指で触れる。

十数秒かけて七枚全てを触り終えたムーシュラは、腕を上げパチンと指を鳴らした。


「これは…へぇ、綺麗っすね」

「ふふっ、でしょう?」


薄暗い部屋の丸机の上が光り輝いた。

カードの縁から青い閃光が迸り、金色の光柱が噴き上がる。


「これもかなりの力を使うからねえ。この豪華さはある意味、制御漏れというとこかしら?」

「制御漏れ…?やっぱり、相当な魔力を使うんすか?」

「そうね。ざっと───十七万マナぐらい」


ニッと、らしくもなく悪戯めいた笑いを見せるムーシュラさんに、パウモイは絶句した。

十七万マナ…その数字の膨大さに。


「じゅっ、じゅ…じゅうななっ…?!」

「だから制御の方は少し効かないところもあるから、ごめんなさいね?」


その瞬間、部屋が震撼した。


「うおおおおおおっ?!」


ガタガタガタガタ!!!と丸机も、椅子も何もかも。

机の上のカードまでも、光を放ちながら震えていた。室内に溢れかえる魔力の奔流によって服や髪もバサバサと荒れ狂う。


「ちょっ、こんな中で占いするんすかっ?!手元ぶれてっ、変な結果になんないっすよね?!」

「どうかしらねえ?じゃあ、始めるとしましょう」


カードの上に浮かせたムーシュラさんの手が淡く青色に輝く。


「この七枚のカードはそれぞれニィコちゃんの運命を示すわ。貴方から見て左から、『不幸』『幸福』『出会い』『成就』『死』…」

「し…っ?!しって、あの『死』っすよね?」

「そう…『死』のカードはこれから1年間の間にニィコちゃんが“死に至る”可能性を示す。それからその次のカードが『変化』、そして───『恋愛』」

「れ…恋愛っすか。そんなところまで占えるんすね…」

「恋愛も欠かせないわね。どれも、今後のニィコちゃんに関わる大事な情報だわ」


ムーシュラさんがそう言うなり、部屋はもとに戻った。

カードも光を失い、部屋を揺るがす振動も消えた。


「さあ、占いは終わったわ。」

「こ、これ…めくっていいんすか?」

「ええ。どうぞ」


恐る恐るカードへ指を伸ばしたパウモイに、ムーシュラさんはコクリと頷いた。

カードの端を摘み、パウモイは一番左の『不幸』のカードを表にした。


「えーっと…『不幸の波は遠く及ばず 』だけ、っすね」


思ったよりもあっさりしていたことに、パウモイは拍子抜けする。


「ふふっ。確かにあっさりしているけれど、さっき『死』のカードで説明した通りこのカードの占える範囲は大体一年…つまり、その間は酷い目に合わないということなのよ?」

「そうか、そうっすよね…この一枚をめくるだけでも凄い情報なわけだ…!」


パウモイは感心しながら次のカード、『幸福』をめくった。


「『幸福の光に包まれた日々が続く 』…ですってムーシュラさん!」

「何が幸福なのか、それはニィコちゃんの主観を元にされているのよね」


その言葉に、パウモイはムーシュラさんの言わんとしていることが分かった。

要するにニィコは、ビルクと共にいる今の日々が既に幸福だと思っているんじゃないか?と。


「そうっすよね。命の危険から救ってもらったらしいからなあ。そりゃあそうだ」


同時に、大体一年くらいはビルクとニィコの生活が保証される可能性が高い。

そう考えたパウモイは静かに微笑んだ。

それから三枚目の『出会い』をめくった。


「『多くの縁が芽吹くだろう 』へぇ、いいっすねえ」

「そうねえ。冒険者に成ったことで、もしくは三年に成った学院でかしら」

「じゃあ、次の『成就』をめくりますよ」

「ええ」


パウモイは流れるように次のカードに指を添える。

その表情に漂う僅かな焦燥は、五枚目のカードによるものだろうか。


「『躓きながらも、天へと駆け上がる 』」

「順調じゃない、ニィコちゃん」


そう言いながら、二人の視線は次のカードに向けられていた。

震える手が五枚目のカード、『死』に触れる。

最後の関門を前に、パウモイは深く息を吐いた。


「ふーっ……んじゃ、行きますよ」


全ての思いがここにのしかかる。

重い指先がゆっくりと、カードを表にした。

パウモイは、口を丸く開いた。


「はっ…?」


二人の眉が、徐々に沈んでいく。

カードを捲ったパウモイの手が、机にすとんと落ちた。


「────『死の影が迫る。ただし、立ち止まらなければ光明あり』」


刻まれたその文字に、室内は静寂に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。