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366 皆はどうだった?

◇◇◇



「お疲れ様でした。これにてチャプター10は完了となります」


 朗らかに、でも本気で労う気持ちがあるのかはよくわからない例の口調で女神がチャプターの終わりを宣言する。ちょっと癪ではあるけどやっぱりこうしてちゃんと言葉にされるとホッとする部分もあるな……今回のチャプターもこれまでと一緒でキツかったもんだからさ。や、これまでのキツさとは内容的にまたちょっと違ってはいたけど、若干方向性が違うってだけですげーしんどいのは同じだった。へっとへとだよもう。


 疲れ切っているのはさっきまで異層とやらにいて不在だった皆も同じだ。床に座り込んで立てずにいる。私もそう。五人全員が思い思いに地べたにへたり込んでいるその様はとても女神を前にしたしもべの姿ではないけど、知ったことじゃない。とにかく私たちには休息が要るのだ。心も体も少しでも休めないといけない。それは単にそうしたいっていう欲望からくるものじゃなく(もちろん欲望こそが大半を占めることは否定しないけれども)、続くチャプター。いよいよ最終となるそれに挑む前に最低限の回復を図らないと大変なことになるのが目に見えているからでもあった。


「私は他の世界の灰とらされたけど、皆はどうだった?」

「同じく、他所の灰と戦いましたよ。コマレたちとはだいぶ毛色が違う感じでしたけど……」

「毛色が違うって、どんな?」

「自らを精霊だと名乗っていました。外見も、やはり人のそれではありませんでしたね」


 せ、精霊。そうか、灰にはそういう種族? もいたりするのか。私たちの感覚から言えば精霊なんて元から特別な存在だけど、管理者からすれば「灰」か「そうでないか」が区別の前提であって人間だろうと精霊だろうと大差はないのかもしれない。


「こちらの世界でエルフが交信しているという精霊と近しい存在なのかはわかりませんが、彼らの世界でも人に精霊の力を貸し与えることがあると教えてくれましたよ。面白いですよね」


 疲労困憊であってもファンタジーチックな話になるとやっぱりコマレちゃんは前のめりだった。正直に言っちゃうと私としてはどこに面白ポイントがあるのかよくわからなかったんだけど、とりあえず頷いておく。それを見抜かれたわけじゃないだろうけど続けてナゴミちゃんが。


「ウチも灰の子と戦った~」

「へえ、そっちはどんな?」

「盾を使うシスターさんだったよぉ。すごく強かったな~、どれだけ攻めても簡単に防がれちゃってどうしようかと思っちゃった」


 シスターで、盾使い。これまた結構な色物じゃない? 私からするとシスターはもう、こっちの世界の教会で「人を治す職業」ってイメージになっちゃってるから戦うイメージはどうにも湧きにくいけど……それは別に元の世界の聖職者である普通のシスターからしてもそうだけど、だからこそ余計にバリバリ武闘派な姿なんて想像が難しい。が、いくら盾を持っているからってナゴミちゃんの攻撃をシャットアウトできるなんてただ事じゃないし、ただ者じゃない。


 私が頭の中で壁みたいな大楯を装備したゴリラみたいなムキムキシスターを思い浮かべていると、いつの間にかシズキちゃんへと話題が向けられていて。


「わ、わたしのところには……ネクロマンサーだっていう女の子が、来ました。可愛らしい子だったんですけど、その。使う術はとっても怖かったです……」


 私の対戦はお互いに術の使用を禁じられていたけど、レギュレーションはそれぞれの層で微妙に異なっていたようで、シズキちゃんのところはどちらも存分に術(シズキちゃんの場合は異能力ショーちゃんだけど)をぶつけ合ったらしい。どこぞの灰との一対一、という内容自体は変わらなくてもそれだと私たちの経験した戦いは各々でだいぶ違っていそうだな。実際、シズキちゃんVSそのネクロマンサーだという子との戦いは数対数、巨大対巨大の大乱闘&怪獣バトルのものすごい様相を呈していたみだいだし。


「数って言うと、向こうは何を?」

「が、骸骨の軍勢でした……ショーちゃんの分体をたくさん作って対抗したんですけど、なかなか決着がつかなくて」


 カザリちゃんの質問に答えるシズキちゃんの苦笑いからは本物の苦労が滲んでいて、やっぱり彼女も大変な思いをしたんだなってのがよくわかる。神力が搭載されたことでシズキちゃんの異能の力も更に進化しており、前は精々数体が限度だった分体も何十、サイズやディティールに拘らなければ何百も生み出せるようになっている。


 その圧倒的な物量に互角以上に対抗できるとはやるね、ネクロマンサーの子。ビッグショーちゃんを抑えられる怪物まで操っていたようだし、その見た目もまた骸骨に負けず劣らずおどろおどろしかったと言うんだから気の弱いシズキちゃんだと相当に参っただろうな。もしかしたら泣きそうになってたかも? 対戦を変わってあげたかったとも思うけど私だと何もできずに負けてそうだな……コマレちゃんも異世界の精霊との火力勝負に躍起になっていたというし、やっぱり誰がどの相手とどう戦うかはちゃんと考えられてるっぽいね。


 そしてこうして皆で無事に戦闘訓練を終えて、疲れてはいてもそのぶんだけ確かな成長も経ている──と皆の顔付きを見ていれば聞かずともわかる──以上は、悔しいけど女神のマッチアップとレギュレーション指定は実に正しいものだったと認めざるを得ない、かな。マジで悔しいんだけどね。女神が慧眼を持っていると認めるのは。でもこれから仕える相手なんだから持ってないほうが困りもするわけで……そこら辺の感情は色々と複雑である。


「で、カザリちゃんは? どんな相手と戦ったのさ」

「私は……不死身の女子高生だった」

「ふ、不死身の女子高生?」


 トンチキなワードに思わずおうむ返しで聞き返してしまったが、カザリちゃんはしかつめらしい表情でしっかりと頷いた。


「そう、不死身だった。どれだけ怪我しようが一瞬で治る。そして治るっていうことを武器にして信じられないような戦い方をしてくる……これまで出会ったどんな存在よりも化け物めいた相手だった」


 げっそりした表情とうんざり感たっぷりの声音でカザリちゃんがそう言った。それはそれは、彼女も彼女でシズキちゃんとは別の意味でのトラウマめいた経験をしちゃったようだな。


 女子高生、ということは私たちみたいに現代日本から異世界へ呼ばれてなんだかんだと灰になったパターンの人だろうか。だとしても出身の時代や、なんなら私たちの知る日本とだって同じとは限らないわけで……女神から聞いた世界の仕組みを思えば、私たちの世界とよく似た別世界だって無数にあることになるだろうからさ。そういう意味じゃ同郷とは言えないかもしれないけど、それでもちょっとは親近感も湧くよね。


 なんて感想はその人と直接向かい合っていないから抱けるものかもしれない。と、私の言葉に無言でジトリとした視線を向けてくるカザリちゃんを見ているとそう思う。いやホント、いったいどんな経験をしたのやら。


「それだけの不死性を所持しているとなると、コマレたちよりもずっと段階の進んだ灰の方だったのでしょうか」


 灰は基本として、死なない。それはガチで死がないってわけじゃなくて普通の生き物よりも死が遠いって意味での……つまりは「しぶとい」っていう意味だけど、当然に段階が進めば進むほど、灰らしくなればなるほど不死性も強まっていく。それも女神からの説明にあったことだけど──。


「いいえ。彼女とあなた方の間に完成度でそれ程の差はありませんよ」


 少しの違和感を覚えたところに、私たちの会話を聞くのみだった女神がそう割って入ってきた。



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