小さな抵抗
もう、すべてが終わりなのか。この長かった旅も。戦いも。
リカード達は、虫の息だ。たび重なる拷問。体はもう、ズタズタだった。心も。
だが、リカードの心。心の中は、温かい光で満ちている。
我が娘、セシリー。その、姿を死に行く前に、この目で見ることができた。なんと、かわいい我が娘よ。
リカードの瞳から涙が出た。それはそれは、清らかな涙だった。
セシリーの表情は、人形の様に無感情だ。何も、感じない。しかし、セシリーの心の中で、何かが、はじけた。
「もう 止めてよ もう止めて」
震えながら、セシリーが、つぶやいた。
「どうした 玩具?何か言ったか?」
ダリル・メイ が聞き返した。
セシリーが大声をあげた。その瞳は、正気の光が満ち溢れている。
「このままじゃ お父さんも フィオナお姉ちゃんも アステルお姉ちゃんも みんなみんな 死んじゃうよ」
大声で泣き始めた。そして、ダリル・メイの右足に、しがみついた。
「ねえ もう 止めてあげて こんなの もう嫌だよ みんなが死んじゃうよ」
ダリル・メイは、自分に、しがみつき、懇願してくるセシリーを、冷ややかな目で見つめた。
「玩具 これはしょうがない事だ 権力の無い 力も無い人間が我々に逆ったらこうなるしかない運命なのだ お前もあの者達に加担して 以前の贅沢な暮らしを手放したくないだろう?」
「いらないわ もういらない みんなの方が大事だもの 贅沢なんて...いらない」
セシリーが泣きわめき始めた。そんなセシリーを、ダリル・メイは煩わしく思い、セシリーの体を足蹴にした。
「フン 親子揃って無様なものだな 貴様らなど 虫けら以下だ いいか お前の父親や仲間はミカエルド様に反逆した ここでは ミカエルド様こそ神なのだ これが あやつらの運命だ。仕方がない」
セシリーは、抵抗をやめなかった。何度もダリル・メイに、飛びかかろうとも、したが、そのたびに踏みにじられ、足蹴にされた。
リカード達の命の灯も消えようとしていた。だが。何かが空からこちらに向かっている事に、そこにいる誰も、気がつかなかった。
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