表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄を「労災認定」しました 〜「冷たすぎる」と追放された監査令嬢、左遷先でブラックギルドに是正勧告を叩きつけます〜  作者: 小鳥遊ミント


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/51

第41話:王都からの便り

 宿に戻ると、王都からの書状が届いていた。差出人は、ミリィ・ロッタ。


『監査官さま


 ご無沙汰しております。王都は、変わらずです。グレゴール院長は、相変わらず書類仕事を私に押し付けて、ほっほ、と笑っています。


 ご依頼の件、進捗をご報告します。査定と実績の乖離――類例、当初の十七件から、二十三件に増えました。共通点も見えてきています。低ランク査定を受けた者の出身は、いずれも王都近郊の平民地区。査定を行ったのは、同一の査定官が関わった案件が多く見られます。


 それと――もう一つ、ご報告したいことがあります。文章にするのが難しいので、詳しくは、お会いした時に。


 実は、私、そちらへ伺いたいのです。院長には、もう話をつけました。「ここぞという時のために、あんたを飼い殺しにする趣味はないよ」と、笑って送り出してくださいました。留守は、営繕組のロイドさんたちが手伝ってくれるそうです。


 監査官さまと、ヴァンさんに、直接お渡ししたい書類もあります。近々、そちらに参ります。


                      ミリィ・ロッタ』


 私は、その手紙を、何度か読み返した。几帳面な字は、王都にいた頃と変わらない。だが、行間に、これまでとは違う緊張が滲んでいる気がした。


「……ミリィさんが、来るのか」


 ヴァンが、覗き込むようにして訊いた。


「ええ。院長の許可も得ているようです」

「あの怖がりが、単身でここまで来る気になったのか」

「怖がりではありますが、彼女は臆病ではありません。区別が必要です」


 私は手紙の一文を、もう一度見た。『文章にするのが難しい』。事務処理においては誰よりも的確な言葉を選ぶミリィが、そう書くのは珍しい。


「何か、思い当たることでも」

「いいえ。ですが――査定不正の調査を進める中で、彼女自身に関わる何かに突き当たった可能性があります」


 私は、これまでのミリィの様子を思い返した。台帳の読み方が、教わったにしては正確すぎる。数字の扱いに、どこか年季が入っている。拾って以来、何度か覚えた違和感だった。


「杞憂かもしれません。ですが、記録は、いつも思わぬところから繋がります」


 私は返信をしたためた。歓迎の言葉と、到着予定日の確認、それに――念のため、道中の護衛について、川港の輸送組合とは無関係の経路を使うよう指示を添えて。書きながら、少し口元が緩んだ。感情語を使わないと決めている私にしては、珍しいことだった。


「ヴィンセル氏は、こちらの動きを常に見ています。ミリィさんの到着を、悟られたくありません」

「用心深いな」

「彼女は、私たちの記録係であり、この調査の生き証人にもなり得ます。守るべき人が増えるのは、悪いことではありません」

「……あんたがそう言うなら、いいんだけどよ」

「心配なら、あなたも護衛の段取りを一緒に考えてください。二人で考えた方が、抜けが少なくなります」


 懐中時計の蓋を開ける。十九時四十分。窓の外、川面に町の灯りが揺れていた。


「数日のうちに、彼女が来ます。それまでに、ヴィンセル氏の帳簿の隙間を、もう少し広げておきましょう」


ミリィさんの合流予告です! 事務処理最強の助っ人が来てくれるのは嬉しい限りですが、彼女の「文章にするのが難しい」報告――少し気になります。


次話、再会です。


ブックマークと評価(☆☆☆☆☆)は、ミリィさんへのお土産として、川港の名物と一緒に用意しております。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ