表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/37

14話 おもちゃの名前

「……え?」


 背後から聞こえてきた声に振り返ると、なぜかフォルナが物陰からこちらを覗いていた。


「あ、フォルナ〜!お疲れ〜!」

「おお、来たか」


 シャルとバンリが声をかけると、彼はゆっくりとこちらに向かって歩いて来た。


「みんなすげぇ真剣な顔で喋ってたから、ずっとそこの陰から見てた……」


「あはは!入ってきて全然良かったのに〜!」


「お前らしいなぁ」


 にこやかに会話をする3人に対し、俺だけが首を傾げる。


「えっと……お前も研修の見学に来たのか?」


 その問いかけに、フォルナは一瞬キョトンとした表情をした。だが、すぐに切り替えて真顔に戻った。


「見学っていうか、戦闘訓練しに来た」


「……ん?」


 戦闘訓練ってまさか……


「はっ……!俺の戦闘訓練の相手って、フォルナなの?!」


 フォルナはこくりと頷いた。


「まじか……」


 なんとなく訓練は講師のバンリとやると思ってたから、フォルナが相手というのは少し意外だった。


「あれ〜?そういえばロクはおもちゃの名前、もう決めたの〜?」


 シャルが唐突に、そんな質問をしてきた。


「おもちゃの名前……?」


「そうそう〜!マルと試験した時に、マルはフラフープのことを、(リン)って呼んでたでしょ〜?」


 彼女の言葉を聞き、試験の時の様子が脳裏に蘇った。


 ——「〈(リン)〉、プレイ」


「……ああ!確かに、名前みたいなやつ言ってたな」


「それそれ〜!トイカルマは戦闘を始める時に、おもちゃの名前とプレイ宣言をする事で、おもちゃが覚醒するようにプログラミングされてるんだよ〜!」


「へー!あれは戦闘を始める合図だったのか!」


 シャルは、うんうんと頷いた。


「あーそういや、名前の説明忘れてた」


 そう言って、ヘラヘラと笑うバンリ。


 ……出たよ。適当なやつ。ジト目で見つめる俺に、彼は「すまんすまん」と言って軽く手を上げた。


「……なぁ、バンリのおもちゃの名前は?」


「俺のだるま落としは、(ゼン)


「え、お前のおもちゃって、ダルマじゃなくてだるま落としだったのか!」


 ゼンマイのアビュサーを飲み込んだのが、ダルマだったから、勝手にダルマ単体だと思い込んでた……。


「ダルマっちゃダルマだけどな。俺のおもちゃは、こーれ!」


 彼はつなぎに付けられた巾着から、だるま落としとハンマーを取り出した。


 自分の目の前に差し出されたそれを、じーっと見つめる。


「……このダルマ、思ったよりも可愛い顔してんだな」


「ふふん、そうだろ?」


 俺の言葉に、バンリは嬉しそうに微笑んだ。その表情から、彼にとってこれが大切なものなのだと一瞬で伝わってきた。


「そういや俺、みんなのおもちゃすら知らねぇな。シャルのは?シャボン玉?」


「私のおもちゃは、シャボン玉の吹き具だよ〜!名前は(レイ)って言うんだ〜」


 シャルはそう言って、筒状の水色のシャボン玉の吹き具を見せてくれた。


「綺麗な色だな」


「ありがと〜!」


 彼女もバンリ同様、嬉しそうに微笑んだ。


「フォルナのは?」


「俺のブーメランは、孤月(コゲツ)


 フォルナは手に持っていたブーメランを、俺の目の前に差し出してくれた。


 白地に黄色のラインが入ったブーメランは、彼によく似合っていた。


「孤月か!かっこいい名前だな」


 みんなのおもちゃの名前を聞く限り、おもちゃと名前がしっくりハマってる気がした。



「……そんで、お前はどーすんの?」


「……」


 バンリの問いかけに、チラッと自分のルービックキューブに視線を落とす。


「まっ、すぐに決めなくてもいい。名前を付けるまでは、そのまま"ルービックキューブ"で登録しておくか」


 バンリはそう言って、部屋の中にあった備え付けの電話を手に取り、どこかに連絡をとり始めた。


「ロクのルービックキューブの名前聞くの、楽しみだな〜!」


 ふとシャルが、そんな言葉をかけてくれた。


 名前か……正直みんなみたいに、かっこいい名前が付けられる自信がない。


 じーっとルービックキューブを見つめていると、電話を終えたバンリが戻ってきた。


「今、仮名として、ルービックキューブで登録してもらった。少し時間かかるから、一旦休憩挟んでから訓練始めるぞ」


「分かった!」


 返事をしながら、楽しみな気持ちと少しの緊張が入り混じった。


「よし。じゃあ、とりあえず飯にすっか!」


 バンリはそう言いながら、パンッと手を叩いた。


「でも飯って言っても、どこで食うんだ?」


 俺のその質問に、バンリはニヤリと口角を上げた。


「TMIのしょ・く・ど・う!……行ってみるか?」


「……っ!!」


 TMIの食堂……!確かに興味ある!!

 俺は、コクコクと勢いよく首を縦に振った。


「決まりだな。じゃあ一旦、お疲れした!」


「「「お疲れした〜っ!」」」


 全員で頭を下げた後、俺達はTMI本部と寮の間にあるという食堂へと向かった。



 ***



「ご馳走様でした!」


 はぁ〜〜〜美味すぎた……!!

 満たされた腹をさすりながら、食事の余韻に浸る。


「お前、食い過ぎだろ……」


 バンリは呆れた目で、俺を見つめていた。


「バンリが奢ってくれるとか言うから、限界まで詰め込んだんだ!まじで美味かった!ごちそうさまでした」


 両手を合わせてバンリにお礼を言った後、大満足で食堂から出た俺たちは、再び研修所へと向かった。


「ここの食堂、本当に美味しいんだよね〜!」


 隣を歩くシャルが、ニコニコしながら話しかけてきた。


「マジでそれ!入寮したら、これがタダで食えるなんて最高すぎるだろっ!」


 見た目は普通にレストランだし、メニューは選びたい放題。俺は完全に食堂の虜になってしまった。


「そういえば、ロクは入寮するのか?」


 フォルナが不意に、そんな質問をしてきた。


「そのつもり!親にも相談したら、絶対入寮しろとか言われたし」


「いいねいいね〜!楽しくなりそうだね〜!」


「……あっ、そういえばこの入寮届けって、どこに出せばいいんだ?」


 ポケットにしまってあった、入寮届けを取り出してみんなに見せると、意外なやつが手を挙げた。


「俺」


 ……えっ?


「バンリ……?!」


 驚く俺に、シャルが笑いながら口を開いた。


「バンリはトイカルマの幹部だからね〜。そういう書類とかは、バンリに出しとけば大丈夫だよ〜!」


「そうそう。って事で、その書類は預かってやろう」


 まじか……バンリって、結構なお偉いさんなんじゃねーかよ!正直、意外だった。


「よろしくお願いします……」


 そっとバンリに、書類を手渡す。


「んで、入寮はいつからの予定?」


「んーなるべく早い方がいいかな。朝のバス通勤が、結構面倒なんだよなぁ……」


「ふーん。別にこっちは、即入寮も可能だけど?」


 ……即入寮可能?!


「え、それはつまり……」


「入寮したいやつのタイミングで、荷物運んでいいって事だ」


 フォルナが冷静に答える。


「そんな事ある……?」


「まぁ、いろんな事情のやつが居るからなぁ。その辺の備えはしっかりしてんだよ」


 備えが完璧すぎるだろ……


「家具家電もほとんど備え付けがあるから、本当に着替えとか持ってきたら住めちゃうよ〜!TMIえぐいよねぇ〜」


 ……確かにエグすぎ。


「で、いつにする?」


 バンリが答えを急かすように、俺の顔を覗き込んだ。


「えぇ……」


 腕を組み、頭の中をフル回転させる。


 ……家具家電付きなら、特に何も揃える必要はない。何より、タダであのクオリティの飯が食えるようになるのはアツすぎる。それに、大浴場とかもかなり気になる……。シャルの言う通り、着替えとか必要最低限のものさえ準備すれば住めるなら……


「……明日とか?」


 少し考えた結果、こんな回答を導き出した俺に、3人は揃って目を丸くした。


「ははは!ロクは相当、食堂が気に入ったみてぇだなぁ?」


 吹き出しながら、バンリが俺の背中をポンッと叩いた。


「これは、完全に胃袋掴まれたね〜!」


 シャルもバンリにつられて、楽しそうに笑っている。


「……悪りぃかよ?」


 何だか少し恥ずかしくなって、ムスッとしてしまった。


「全然!むしろ歓迎してやるよ」


「そうそう〜!ロクもきっと寮生活気にいると思うなぁ〜!」


「なんか困った事とかあったら、手伝う」


 3人からそんな言葉を掛けられて、入寮するのが凄く楽しみになった。


「んじゃまぁ、入寮時期も決まったって事で……」


 バンリが研修所の扉を開く。


「食後の運動タイムの始まりだ」


 その言葉を合図に、俺は手に持っていたルービックキューブを構え、フォルナと向かい合った。



 ——「〈孤月(コゲツ)〉、プレイ」


「〈ルービックキューブ〉、プレイ」——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ