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13話 オルゴール


「それはだなぁ……」


答えようとするバンリの横から、シャルが遮った。



「TMIの創設者が、アルディアの年の離れた弟なんだって〜!」


「えぇっ!お、弟?!」


まさかのシャルの発言に、椅子をひっくり返しそうになった。


「そうだ。因みにその弟に、アルディアはおもちゃのプレゼントをあげている。」


バンリの含みのある言い方に、少し引っかかった。



アルディアはサンタだった。

彼からプレゼントをもらったってことは……


「まさかそのおもちゃ、覚醒したのか?」


バンリとシャルは、こくりと頷いた。



「しかも、兄ちゃんのせいで覚醒しちまったらしい。」


「……アルディアのせい?」


「段々とおかしくなっていく兄貴の様子に、弟のアルカは気がついた。だから、とにかく心を落ち着けてほしいと願って、プレゼントでもらったオルゴールの音色を聞かせようとした。」


「まさかその時に……」


「アルディアの前でオルゴールを開くと、アルカの前にはたくさんの音符が現れた。それを見たアルディアは、目の色を変えてこう言った。」



――「お前もおもちゃに救われたんだな!」



救われた……?


「アルディアはこの頃、各地で起きてたおもちゃの武器化が自分の願いが成就したものだと気づいていた。そして、自分はおもちゃに救われたんだって思ってたんだと。」


「相当イカれちまってたんだな……」


「悲しいよね〜…。」


シャルは眉を下げてそう言った。



「……その後、アルカはどうしたんだ?」


「アルカは"救われたってどういう意味だ?"って、疑問が浮かんだ。その瞬間、一つの音符がアルディアの体に、セットされるように差し込まれた。すると、アルカの前にアルディアが"救われた"って思った時の映像が、映し出された。」


「オルゴールの武器の能力は、持ち主が抱いた疑問を調べる、辞書みたいな能力だったんだって。珍しい武器だよね〜。」


……確かに。

そんな、自白をさせるような武器もあるのか。



「で、そこに映った映像は……?」


俺は先を促した。


「アルディアが救われたって思った時の映像は、"おもちゃが武器化した映像"で溢れてたんだとよ。」


「……!」


「その映像を見たアルカは、次の疑問をアルディアに差し込んだ。


——「どうして、おもちゃが武器化した時に救われただなんて感じたんだ?」


すると、音符は再び映像を流した。


それは捨てられていくおもちゃを、アルディアが見つめていた時の映像から始まった。


次に流れてきたのは、プレゼントを見つめながら思い悩んでいた時の映像。


そして最後に流れたのは、子供達に配るプレゼントに、歪んだ願いを込めた時の映像だった。」



つまり……


「……アルカは、そこで知ったんだな?」


「その通り。絶望したアルカは、アルディアを説得しようとしたけど、アルディアは聞く耳をもたなかった。」


「しかもその後、アルディアは逃走して、絶縁状態になっちゃったのに、アルカは兄の秘密を守るために、TMIを立ち上げたんだって〜。」



なんだよそれ……

兄貴だろうが、そんな狂っちまったやつの秘密なんて、守る意味なんてあんのか?



「アルカが、そんな秘密を守った意味がわかんねぇ。」



胸の中から沸々と怒りが込み上がってきた。

TMIはそんな、狂った思想の組織じゃないと信じてたのに……


持っていたルービックキューブに、思わず力が入った時だった。



「世の中の奴らから、サンタのイメージが悪くなると、誰が一番悲しむと思う?」


バンリが唐突に、そんな質問を俺に投げかけてきた。


何の意図があっての質問だ……?

不思議に思いながらも一応答えてみる。


「……子供か?」


「そうだ。子供からしたらサンタは、誰にでも平等にプレゼントをくれる、絶対的に"優しい存在"であり、"大好きな存在"。」


「だからなんだよ?」


意味がわからず、バンリを見つめた。


そんな俺に、彼は強い視線を向けた。



「だからこそ、子供達からそんな存在を奪っちゃいけねぇだろ?」


「……っ!」


その言葉に、ハッとした。


なんだ、そういうことか……

アルカは子供達から、サンタ・クロースという大好きな存在を、奪わないために秘密を守ろうとしたのか!



心の中のモヤモヤが、一気に晴れた気がした。



「なんだよ。バンリが紛らわしい言い方するから、TMIのこと疑っちまったじゃねぇかよ。」


ジロリと睨みつけながら、不満を漏らした。


「俺は事実を言ったまで。受け取る側の問題だろ?」


俺の視線をさらりと交わしたバンリは、いつものようにヘラヘラと笑っていた。



やっぱりこいつ、クソうぜぇ……。

思わず溜息がこぼれた。



「……つまりTMIは、サンタの秘密を守るために作られた組織だけど、その根っこには子供達のことを考えた、アルカの気持ちがあったってことだな?」


「う〜ん、惜しい〜!」


……惜しい?


首を傾げた俺に、バンリは再び問いかける。


「サンタの秘密と、子供の想い。それを繋ぎ合わせているものはなんだ?」


そんなの決まってる。


「おもちゃ。」


「大正解〜!おもちゃの武器は人を傷つけるものではなく、この世界を守るためのものだと、アルカは考えたんだって〜!」


「その結果、このトイカルマが作られたってわけだ。」


「……そういうことだったのか。」


2人の説明を聞いて、今まで散らばっていたもの全てが一つに繋がった気がした。


アルディアの歪んでしまった願い。

それを隠そうとしたアルカ。


結局2人とも、子供とおもちゃを大切に思っていたことだけは確かだった。



サンタの秘密を守ることを徹底したTMIは、結果的には世界を守る組織となった。


その事実に変わりはない。


"誰かを守れる人間になる"

試験の時にマルに伝えた俺の覚悟。


そのために選んだこの道。


俺の選択は間違ってなかったんだ。

そう思ったら、心の底から安堵した。



その直後——


「そろそろ、入ってもいいか?」


背後から突然、聞き覚えのある声が聞こえてきた。



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