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親方釣りは入れ食い

「まあ、夫人! 素晴らしい....! ルス神様の光が、夫人のその気高き献身を通じて、今まさにこの街に降り注いでおりますわ!」


ルナが夫人の手を取り、共に祈りのポーズを捧げる。


「皆様! 夫人の勇気に報いましょう! 」


いきなり標語に展開させる。


「捨てればゴミ、夫人に託せば『聖なる救済のアセット』! さあ、今すぐ、広場に不用品を持って集まりなさい!」


ライブの対バンはルナの完勝であった。


「....ルナ、....一瞬で....共同主催....に....書き換えた。....夫人の....手柄、....半分....貰った。」


リュンヌの「おふっ」付きの祈りも加わり、広場の熱気は「チャリティ・フェスティバル」の様相を呈し始めた。


集まった不用品は建設現場にスラムの男達が共同して運ぶ。


「....ルナ、....あっち。....人足ギルドの...親方。....目が、....ガチ。....獲物を....値踏みする....肉食獣の....目。」


リュンヌが小声で警戒を促した。


広場の中心では、第二夫人夫妻が「民衆の圧倒的支持」という貴族にとっては何物にも代えがたい政治的・社会的リターンを得て満面の笑みだ。


夫妻はその無形資産をたっぷりと抱えて、満足げに帰路につこうとしている。


その後ろで、スラムの男たちが列をなし、集まった大量の端布や鍋、資材を整然と建設現場へと運び出している。


昨日まで「ただの浮浪者」だった彼らが、今は「街の期待」と「夫人の慈悲」を背負い、誇らしげに背筋を伸ばして歩いているのだ。


「ふふ、いいわね。あの人足業者の親方、きっと今、頭の中で銅貨を数えすぎて火が出そうになっているはずよ。」


ルナは、人だかりの隅で食い入るようにその光景を見つめる親方を、獲物を誘い出すような目で見やった。


「....ルナ、....あの親方、....何、....見てる? ....ただの....運搬?」


「いいえ、リュンヌ。彼は『教育スクリーニング済みの労働力』を見ているのよ。


自分たちが『使い物にならない』と切り捨てた連中が、ルナ・システム(正直申告制)の下で、こうも規律正しく動いている....。


彼にとっては、宝の山が目の前を歩いているように見えているはずだわ。」


人足業の親方にとって、一番のコストは「現場でサボる、嘘をつく、喧嘩をする」といった人的リスクだ。


しかし、目の前の男たちは、自分の「できないこと」を認め、その上で与えられた「できる役割(集まった品物の運搬)」を全うしている。


「....ルナ、....親方....一歩....踏み出した。....交渉、....来る。」


「当然よ。あんなに良質な『即戦力候補』を黙って見過ごすようなら、親方は廃業したほうがいいわ。」


ルナは、ちょっといたずらっぽく微笑む。


「さて、向こうから声をかけてくるのを待つのは時間の無駄(機会損失)ね。こちらから『神の仲介』を提案してあげましょうか。」


ルナは営業スマイルを整えると、運搬の列を指揮するフリをしながら、自然な足取りで親方の方へと近づいていった。


「あら、親方様。お仕事熱心で素晴らしきことでございます。」


ルナは祈りの態勢を取り、挨拶する。


「....この方たちの『無駄のない動き(物流効率)』、プロのあなたの目には、一体いくらの価値に見えていますかしら?」


リュンヌは、その人足の親方の背後を見てのけぞった。


「....ルナ、....入れ食い。....親方、....一人じゃない。....後ろに、....採掘業者に、....川の船の業者。」


リュンヌは思わず指を折って数えてみた。


「....みんな、....『学び済み』の....労働力を....狙ってる。」


リュンヌは、親方たちのギラついた視線に、思わずナギナタの柄を握り直す。


彼らにとって、自分の限界を正直に申告し、指示通りに動くスラムの住人たちは、今や「安くて信頼できる最高の素材」に見えている。


「あら、皆様お揃いですか。ご苦労さまでございます。」


ルナは改めて丁寧に挨拶をし、満面の笑みを振りまく。


あの『オレンジ』の方たちの働きぶりに、それほどまでの将来性(インベストメント価値)を感じていただけるとは、ルス神様もお喜びですわ。」


ルナは、親方たちのガッつくような視線を、扇子でも広げるような優雅さで受け流し、極上の営業スマイルを向けた。


「おい、小娘....いや神官様。あいつらの中に、重いもん運ぶのを嫌がらねぇタフな奴が数人いたな。」


人足親方が口火を切った。


「あれをうちに回してもらうには、あんたと話を付けりゃいいのか?」


川の船を運行する業者の親方が指を差して詰め寄る。


「うちもだ! あの薬師上がりの小僧、帳面が書けるなら、うちの倉庫番に欲しい!」


殺到する親方たちに対し、ルナは人差し指を唇に当て、静かに、しかし抗い難い威厳を持って制した。


「慌てないでくださいませ。今は皆様、ルス神様の『慈悲の託児所』という神聖なプロジェクト(公共事業)の最中でいらっしゃいます。」


ルナはもったいぶる。


「ですが、それが一段落し、お試し期間を無事に終えましたら....。」


ルナは、背後で重い鍋や資材を運んでいる男たちを指差した。


「手前共が責任を持って、彼らを『再就職先』としてご紹介いたしますわ。――紹介料として、お一人につき銅貨3枚でいかがかしら?」


まるで、当初から予定していたかの様にすらすらと口から提案を発するルナ。


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