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路上ライブ対バン?!

ルナは満足げに目を閉じ、心の中で指を折っていく。


(土地、資金、指導員、労働力、そして圧倒的な民意……。これで『スラム再開発ファンド』の第1段階はコンプリートね。)


そして心中で続けた。


(次は、この熱気が冷めないうちに、第一・第二夫人に『進捗報告(追加投資の勧誘)』を入れなくちゃ!)


「....ルナ、....目が、....開いた。....次は、....誰の....財布....狙う....つもり?」


その頃、ギルド職員が、ギルドマスターに「良いのですか?放って置いて?」と確認していた。


「....ほっとけほっとけ。あんなのに首を突っ込んだら、こっちの胃に穴が開くぞ。」


ギルドマスターは、部下が持ってきた「ルナの活動についての報告書」を、まるで見たくもないゴミでも扱うかのように机の端に押しやった。


その顔には、隠しようもないほど大きな文字で『面倒事はごめんだ』と書いてある。


「ですがマスター! あの小娘....いえ、ルナ神官は、冒険者ギルドを通さずに勝手に肉体労働の日当の相場を決めております。」


若い職員が青筋を立てて訴える。


「更にあろうことか、街の有力な職人たちまで抱き込んでいます。これは我々の権益を....。」


「権益? バカを言え。あそこに並んでるのは、うちが『再就職先も見つからねぇ』って放り出した引退者(在庫)ばかりだぞ。」


ギルドマスターは深く椅子に沈み込み、ため息を吐き出した。


「規約を洗ってみろ。引退した者が教会の奉仕活動に参加するのを禁ずる項目がどこにある? 」


心底面倒くさいという感情しか動きからも見えてこない。


「しかも、土地は豪商夫人、金は貴族夫人、看板は大教会長だと?そんな『火薬庫』に、わざわざ火種を持って突っ込むほど俺は若くない。」


「....しかし、このままでは....。」


「いいか、あのガキがやってるのは『ゴミ(失礼、元冒険者)』を『利益』に変える錬金術だ。」


ギルドマスターは職員達に不敵に言った。


「もし失敗すれば教会の責任、成功すれば『ギルド出身者が街を救った』と手柄だけ掠め取ればいい。」


そして職員達に咎める様な口調で釘を刺す。


「....今は、あの『銭女』の手のひらで踊らされているフリをするのが一番賢い選択だ。分かったか?」


マスターは窓の外、ルナが辻説法をよくする広場を遠い目で見つめる。


「....あんな恐ろしい銭ゲバ、敵に回してみろ。今度はギルドの運営体制に説法という名の戦闘をしかけに乗り込んでくるぞ。」


そして、ギルドマスターの本音が漏れ出た。


「そうなったら、俺の退職金(不労所得)が危ない。」


翌日、ルナとリュンヌが辻説法をしている場所に行くと先客が居た。


なんと、第二夫人夫妻だ。護衛を連れて何やら言っており聴衆が意外と真剣に聞いている。


「....ルナ、....先客。....しかも、....超弩級の。....第二夫人、....営業拠点....乗っ取ってる。」


リュンヌは呆然と立ち尽くした。


自分たちが「アーティスト(ルナの認知上)」として君臨していたはずの広場の中心で、あの第二夫人が、少し震える声で民衆に訴えかけている。


「皆様....どうか、ルス神様の慈悲を。皆様のご家庭に眠る、使い古された端布はぎれや、役目を終えた鍋....。」


第二夫人は?どうやら託児所向けの寄付を募っているらしい。


「それらは、未来ある子供たちのオムツに、そして温かいスープを作る器に生まれ変わるのですわ!」


儚げな美貌、控えめな仕草、そして何より『高貴な夫人が、恥を忍んでスラムの子供たちのために頭を下げている』というドラマチックな光景。


それは、ルナの毒舌説法とはまた異なる、強力な「同情心エモーション」という名の市場を形成していた。


「....ルナ、....夫人....すごい。....『勇気を振り絞る貴族』....っていう....最強の演出。....聴衆、....みんな....メロメロ。」


リュンヌはややうっとり。ルナは少し歯ぎしりものである。


「....やるわね、あの夫人。」


ルナは少し聞き入ってこう評した。


「私の『オレンジの方程式』を、まさか『リサイクル・ドネーション(寄付活動)』にまで昇華させるとは思わなかったわ。」


ルナは感心したように腕を組んだ。


彼女の目は、夫人の背後に控える夫(想い人)が、妻の健気な姿に心打たれ、誇らしげに、全面的なバックアップを誓っている様子を逃さない。


「....ルナ、....感心してる....場合? ....敵...出現。....場所、....奪われる。」


リュンヌは意外な第二夫人人気に焦るがルナは冷静だった。


「いいえ、リュンヌ。これは『業務提携アライアンス』のチャンスよ。」


ルナは共棲という道を即座に導き出した。


「彼女が『不用品の回収(現物出資)』という名のボランティア・スキームを回してくれる。」


ルナ自らの役割を即定義し行動に移る。


「私はその分、現金の支出(運営コスト)を抑えられるわ。――見てなさい、アーティストの共演を見せてあげるわよ!」


ルナは聖女の微笑みを顔に貼り付け、群衆を割って夫人の隣へと歩み寄った。


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