表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/94

全方位隙なしのチャイルドケアセンター

「本音?....そうね、これは将来の『熟練労働力』を確保し、かつ冒険者たちの『可処分所得』を効率的に回収する。」


ルナは両腕を広げ誇らしげに言う。


「全方位隙なしの育児・教育・雇用一体型多目的施設チャイルドケア・センターよ。」


「....目的、....違う。....ただの、....託児所。」


リュンヌは溜息混じりに毒づくが、ルナの脳内には既に違う物が建っていた。、


町外れの格安物件に子供たちと引退冒険者が共生する、極めて「利回り」の良い光景だ。


「あらあら、ぼろ儲け狙いね。」と第一夫人は楽しそうに応じ続けた。


「あの女を入れてやりなさいな。下級貴族の慈善事業として。」


リュンヌは第二夫人の事だと感づく。


「....第二夫人、....また、....厄介な、....予感。」


リュンヌは眉をひそめたが、ルナの瞳は商機を見出した獣のように輝いた。


「下級貴族の慈善事業フィランソロピー? 最高じゃない。」


第一夫人に同意の目をルナは向けた。


「彼女の『徳』を積みたいという虚栄心ニーズを、我がプロジェクトの初期資本として有効活用してあげるわ。」


ルナは第一夫人に向け、共犯者のような不敵な笑みを返す。


「運営は私、資金と権威は彼女。リスクは分散しつつ、利益はしっかりこちらに誘導する....。」


素早く計算している顔のままルナは続けた。


「第一夫人、その『訳あり物件』のリストに、第二夫人の寄付金でリノベーションする予算案も追加しておいて。」


「あなたも出資してくれるなら浄財は....」とルナが言いかけると第一夫人は言葉が終わらないうちに口を開く。


「当然お布施(投資)するわ。リターンは『面白い光景』と『更なる利権』でいいかしら?」


食い気味に言い放った第一夫人の瞳は、もはや慈善家ではなく、新興市場を狙う投資家のそれだ。


「....話が、....早すぎる。....悪の枢軸、....ここに完成。」


リュンヌは戦慄し、ナギナタの石突を床に突き立てた。ルナは満足げに頷き、不敵な笑みを深くする。


「ウィン・ウィンの関係ね。さあ、まずはその『二束三文の幽霊物件』を、この街で最も価値ある『未来のゆりかご』に変えて差し上げるわ!」


「町外れの幽霊屋敷と言われているあばら家に、井戸がある廃屋が隣り合わせであるわ。」


第一夫人は、具体的物件名をあげる。


「土地はこちらが、お布施するから形にしなさいな。」と第一夫人は微笑みかける。


「神官....ルナ....神官。....ルス神様、....見てないで....止めて。」


リュンヌは眩暈を覚え、ナギナタを杖代わりに身体を支えた。


目の前では、聖職者と豪商が「幽霊物件」を囲んで、血も涙もない利権の地図を広げている。


「幽霊? むしろ好都合よ。無料で提供される『動く防犯設備』じゃない。除霊費用を浮かせて、その分を託児所の防犯強化に回せるわ。」


ルナは第一夫人の差し出した地図を、獲物を狙うハゲタカのような鋭い目で見つめる。


「神官の私が『浄化リノベーション』して、第二夫人の権威で『聖域化』する。」


「完璧なスキームだわ。リュンヌ、次の準備をするわ!時は布施なりよ!」


第一夫人の商会を出るが、ルナのご機嫌は続いている。


「土地と建物は清らかなる浄財で手に入るわ。次は如何に浮いている不稼働資産を活かすかよね。」


と言いつつ町外れに向かう。だが方向は土地と違う方向。そこは社会から脱落したと街では勝手に思われている者達が住む地域だ。


「....ルナ、....道、....違う。....こっち、....貧しい街。」


リュンヌが不安げにナギナタで制しようとするが、ルナの足取りは淀みない。


「いいえ、最適解よ。あそこは『脱落者の溜まり場』じゃない。既存の評価基準から漏れた、極めて流動性の高い『休眠労働力』の宝庫だわ。」


ルナは腐敗した空気さえも計算式に組み込むような冷徹な瞳で、薄暗い路地の奥を見据える。


「ギルドが切り捨てた『引退者』や『負傷者』。彼らの経験値という無形資産を、格安で再雇用リバイバルするの....。」


ルナは、いきなりスラムの入口に立ちよく通る営業ボイスで言う。


「今日は、こちらで祈りを捧げさせていただきます。誇りを胸に秘めたる方はお聞き下さい。」


「....ルナ、....いきなり、....過激。....ここ、....戦場より、....危ない。」


リュンヌは即座にナギナタを構え、殺気立つ路地の奥へ鋭い視線を走らせる。


だがルナは、汚泥の匂いすら聖水の香りと変えるような、神々しいまでの「営業スマイル」を浮かべた。


「護衛なら黙って私の背中を死守しなさい。ここにあるのは絶望じゃない、『不当に安く見積もられた労働力』の山よ。」


ルナは瓦礫の上に凛と立ち、銀髪を風に靡かせながら、どん底に生きる者たちの心臓プライドを直接射抜くような声で宣言する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ