【第2話 】予期せぬ嵐と苦渋の決断
サークルに入会してからの日々は、私にとって人生のオアシスのような時間だった。
諸先輩方の柔らかい言葉遣いに触れるうち、自分の中にあった「言葉のトゲ」が少しずつ丸くなっていくのを実感していた。
しかし、都合の良いことばかりが続かないのが現実というものだ。
ある日、サークルを揺るがす大事件が起きた。初期役員の一人である飯田さんが、初代会長の音羽さんと激しく衝突したのだ。
原因は些細な口論だったかもしれない。
だが、感情がこじれ、飯田さんが先に手を出してしまうという、あってはならない事態に発展してしまった。
「今回の騒動の責任を取って、私は会長を降ります」
音羽さんの口からその言葉を聞いたとき、私は居ても立ってもいられず、言葉を尽くして猛反対した。
「先に手を出したのは飯田さんです。音羽さんは応戦しただけじゃないですか。あなたが引責辞任する必要なんて、どこにもありません!」
サークルのために身を粉にしてきた音羽さんを知っているからこそ、私は必死に引き留めた。
しかし、音羽さんの意志は固かった。サークルの秩序を守るため、自分が身を引くという決意は変えられなかった。
後日、次の役員会に出てほしいと、音羽さんの奥様から声がかかった。呼び出された場所には、サークル内で一目置かれていた50代後半の女性会員、金子さんの姿もあった。
「主人が辞任する以上、次のサークルを引っ張っていく人が必要です。お二人にお願いできないでしょうか」奥様の切実な眼差しが、金子さんと私に注がれる。
正直に言って、私は自分がリーダーに向いている人間だとは思えなかった。
「私はそんな、会長なんて器ではないですから……」と、思わず一歩引いてしまった。
すると、隣にいた金子さんが口を開いた。「それなら、私が会長をやります。その代わり、あなたに副会長として私を支えてほしい」
金子さんはサークル内でも芯が強く、テキパキと物事を進める姉御肌の女性だった。
彼女が引き受けてくれるなら、それが一番丸く収まるのかもしれない。
私は少しの不安を覚えながらも、「わかりました。副会長としてお手伝いします」と答えた。
こうして、金子さんが二代目会長、私が副会長という新体制がスタートした。
この時の私はまだ知らなかった。金子さんのその強いリーダーシップが、やがて独裁的な「横暴さ」へと変わり、サークルにさらなる波乱を巻き起こすことになるなどとは――。
(第3話へ続く)




