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リボンが黒く染まるまで 〜救うほど闇に近づく魔法少女になってしまいました…!〜  作者: ぽころっと
Chapter 4 心に値段はつけられない

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第53話 後編 約束

黒い値札が静かに宙を舞う。


一枚だけ。


だが、その一枚から放たれる圧力は、今までとは比べものにならなかった。


ラピスの顔色が変わる。


「皆さん!」


「あの値札には絶対に触れないでください!」


リゼは無表情のまま、その値札を放った。


一直線に飛ぶ。


狙いは――


夕凪ひまり。


「ひまり!!」


リノが叫ぶ。


ひまりは炎を放つ。


しかし、値札は炎をすり抜ける。


「えっ!?」


避けられない。


そう思った、その瞬間。


バチィィィッ!!


神殿を裂く雷鳴。


「……!」


こはくが飛び出していた。


「こはく!?」


ひまりを思いきり突き飛ばす。


「きゃっ!」


ひまりは床へ転がる。


助かった。


けれど。


黒い値札は、そのまま真っ直ぐ進む。


「しまっ……!」


パチルが叫ぶ。


リノも灰色リボンを伸ばした。


「間に合って!!」


灰色リボンが値札へ届こうとした、その瞬間。


ペタリ。


黒い値札が、こはくの胸元へ貼り付いた。


「っ!!」


こはくの身体が硬直する。


「こはくちゃん!!」


リノが駆け寄る。


しかし、黒い鎖のような光が値札から伸び、こはくを包み始めた。


ラピスが叫ぶ。


「下がってください!」


「値札に触れれば、皆さんまで巻き込まれます!」


リノは足を止める。


「そんな……。」


メイは満足そうに微笑んだ。


「大当たりですねぇ♪」


ユキノも静かに頷く。


「自己犠牲。」


「とても価値の高い感情です。」


ひまりは涙を流しながら叫ぶ。


「なんで!!」


「なんで私なんか庇ったの!!」


こはくは苦しそうに笑った。


「……代表だから。」


「そんなの関係ない!!」


「あるよ。」


こはくは小さく首を振る。


「赤代表がいなくなったら。」


「みんな困る。」


ひまりは首を振る。


「私は……!」


「また守られちゃった……。」


その言葉に、リノははっとした。


“また”――。


小春。


あの日の出来事が、ひまりの頭をよぎっている。


ひまりはその場へ膝をついた。


「私……。」


「何も変われてない……。」


「また誰かに守られて……。」


肩が震える。


その肩へ、リノはそっと手を置いた。


「違う。」


ひまりが顔を上げる。


「今度は。」


「私たちが助ける番。」


リノは真っ直ぐこはくを見る。


「絶対に。」


「迎えに行く。」


こはくは少し驚いたように笑った。


「……うん。」


「約束。」


その言葉に、リノは力強く頷く。


「約束。」


その横で。


パチルは必死に飛び続けていた。


「こはく!」


「ボクも行く!」


「一緒に行く!」


涙が止まらない。


こはくは苦しそうに笑う。


「ダメ。」


「え?」


「パチル。」


「お願いがある。」


「お願い……?」


「リノたちを。」


「お願い。」


パチルは首を横に振る。


「イヤだ!」


「ボクは!」


「こはくと一緒がいい!」


こはくは優しく微笑んだ。


「知ってる。」


「でも。」


「今、一番必要なのは。」


ゆっくりリノを見る。


「みんな。」


「お願い。」


パチルは涙を流しながら、小さく頷いた。


「……うん。」


「約束する。」


その瞬間。


黒い魔法陣が開く。


こはくの身体がゆっくり浮かび上がる。


リノは思わず一歩踏み出した。


「待って!!」


灰色リボンを伸ばす。


あと少し。


あと少しで届く。


しかし。


リゼが静かに指を鳴らした。


パチン。


黒い壁が現れる。


灰色リボンは弾かれた。


「リノ!!」


ミミルが叫ぶ。


こはくは最後に笑った。


「ちゃんと。」


「迎えに来なさいよ。」


リノの瞳から涙が溢れる。


「もちろん!」


「絶対に!!」


「約束だから!!」


こはくは安心したように目を閉じた。


そのまま。


闇の中へ消えていった。


神殿に静寂が訪れる。


誰も声を出せない。


パチルだけが泣き続けていた。


「こはく……。」


「ごめんね……。」


「約束。」


「守るから……。」



いきなり場面は変わる。


敵組織によって強制的に現実世界に戻されたのか


「こはく…」


「やっと仲良くなれたと思ったのに」


「ここは一体どこ?」


見渡すと一室の机いっぱいに資料が広げられていた。


地図。


写真。


新聞記事。


黒いキャンディの目撃情報。


赤い糸で何本も繋がれている。


ルルが勢いよく扉を開けた。


「ノア!」


息を切らしている。


「神殿から連絡が……!」


ノアは振り向かなかった。


静かに地図を見つめたまま、小さく呟く。


「……黄代表か。」


ルルは驚く。


「どうして分かったの?」


ノアは机の資料を一枚めくる。


「商会は。」


「感情が最も高まった者を狙う。」


「今回なら。」


「黄代表になる可能性が一番高かった。」


ルルは言葉を失う。


机の上を見る。


そこには何日も徹夜で調べたような資料の山。


「ノア……。」


ノアはゆっくり目を閉じる。


「……間に合わなかった。」


短く呟く。


だが。


すぐに地図の一点を指差した。


赤い丸が描かれている。


「ここ。」


「商会のアジト候補だ。」


ルルが息を呑む。


「本当に?」


「まだ確証はない。」


「でも。」


「一番可能性が高い。」


ノアは静かに立ち上がる。


「助けに行こう。」


ルルも力強く頷いた。


「うん。」


窓の外には、静かな夜空が広がっていた。


その星空の下で。


それぞれの”約束”を胸に、新たな戦いが始まろうとしていた。

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