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リボンが黒く染まるまで 〜救うほど闇に近づく魔法少女になってしまいました…!〜  作者: ぽころっと
Chapter 4 心に値段はつけられない

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第50話 星の魔法会議

ほしふねカプセルが、星の異空間を抜けていく。


透明なしゃぼん玉のような丸いカプセルの外では、深い青紫色の空間がどこまでも広がっていた。


星屑が川のように流れ、こんぺいとうみたいな小さな星たちが、カプセルの周りをくるくると回っている。


遠くには、大きな星くじらの影が、ゆっくりと泳いでいた。


「わぁ……!」


るりはカプセルの窓に両手をつき、目を輝かせている。


「すごい……本当に星の中を進んでるみたい」


ポルルがるりの膝の上で、穏やかに頷いた。


「星の神殿は、普通の空間にはないからね。この道を通らないと、たどり着けないんだ」


隣のカプセルでは、ひまりが少し落ち着かない様子で座っていた。


その肩には、白い体の星兎がちょこんと乗っている。


耳の先と星形のしっぽだけが、赤橙色に淡く光っていた。


首には、小さな赤いリボン。


ピリカだ。


「ひまり、顔かたい」


ピリカが胸を張って言う。


「べ、別にかたくないし!」


「かたいよ。石みたい」


「そこまで!?」


ひまりが思わず声を上げる。


そのやりとりに、リノは少しだけ笑った。


けれど、胸の奥はずっと落ち着かなかった。


――見つけて。


前に聞いた声。


クリスタルの中にいた少女。


白い髪。


閉じた瞳。


そして、さっき。


神殿へ向かう途中、カプセルの外を横切った白い影。


あれは、本当に星屑だったのだろうか。


「リノ?」


肩に乗ったミミルが、心配そうに顔を覗き込む。


「また、あの声のこと考えてる?」


リノは小さく頷いた。


「うん。でも……今は大丈夫」


そう言って、胸元の灰色リボンに手を添える。


リノのカプセルだけは、最後まで色がつかなかった。


ひまりのカプセルは赤く。


るりのカプセルは青く。


けれどリノのカプセルは、透明なまま。


まるで、まだ名前を持っていない星みたいだった。


その時、前方に大きな光が広がった。


カプセルたちが星の川を抜ける。


光の向こうに浮かんでいたのは、巨大な神殿だった。


白く輝く丸い屋根。


星をかたどった高い柱。


空中に浮かぶ七色のリボンの紋章。


その中央には、大きな円形の建物があり、神殿全体が星明かりに包まれている。


「見えてきました」


ラピスの声が、先頭のカプセルから響いた。


「星の神殿です」


リノは息を呑んだ。


「ここが……」


ほしふねカプセルは、神殿の入口にある丸い発着場へ、ゆっくりと降りていく。


ぽん、と軽い音を立てて扉が開いた。


リノが外へ足を下ろす。


その瞬間、床に小さな星の光が灯った。


一歩進むたび、足元に光の粒が広がっていく。


「なんか……迎えられてるみたい」


リノが呟くと、ミミルが少し誇らしげに言った。


「星の神殿は、来た人のリボンを感じ取るんだよ」


「私のことも?」


「たぶん……」


ミミルはリノの胸元を見た。


灰色リボンは、静かに揺れている。


その光はまだ弱く、どこか不安定だった。


ラピスがリノたちを振り返る。


「行きましょう。代表たちは、すでに集まっています」


神殿の大扉が、ゆっくりと開いた。


中から、まばゆい光があふれる。


リノは息を整え、ひまりとるりの後に続いた。



神殿の中は、想像していたよりもずっと広かった。


天井には本物の夜空のような星々が広がり、床には巨大な星形の魔法陣が描かれている。


中央には、白い円卓。


その周りに、それぞれの色を宿した椅子が並んでいた。


赤。


青。


黄。


緑。


紫。


桃。


橙。


そして、まだ色のついていない透明な席がひとつ。


リノは、その席を見て小さく息を止めた。


「……あれ」


ラピスが静かに言う。


「灰色代表候補の席です。まだ正式な色としては刻まれていません」


「だから、透明なんですね」


「はい」


ラピスは少しだけ目を伏せた。


「神殿もまだ、灰色をどう記録するべきか迷っているのでしょう」


円卓の椅子の横には、小さな星形の台座が並んでいた。


そこには、それぞれの代表を支える星兎たちが座る。


代表と担当星兎。


その絆もまた、魔法会議に認められた力のひとつだった。


ひまりが赤代表の席へ向かう。


ピリカはその肩からぴょんと降り、赤い星形の台座に乗った。


「ひまり、ちゃんと背筋伸ばして」


「わかってるってば!」


るりは青代表の席へ向かい、ポルルが隣の台座に静かに座る。


「るり、大丈夫。ゆっくりでいいよ」


「うん……ありがとう、ポルル」


リノはミミルと一緒に、透明な席の前へ立った。


まだ正式な代表ではない。


でも、ここに呼ばれた。


灰色リボン代表候補として。


その事実が、胸の奥に重たく響く。


その時だった。


「へぇ」


少し強気な声がした。


リノが振り向く。


そこにいたのは、リノたちと同じくらいの年齢の少女だった。


琥珀色の髪をサイドポニーにまとめ、星型のヘアピンをつけている。


黄色いリボンには、ほんの少し橙色の光が混じっていた。


勝ち気そうな目。


腕を組んだ堂々とした立ち方。


その隣の星形台座には、耳先としっぽが琥珀色に光る星兎が座っていた。


首には黄色い小さなリボン。


星兎はにやっと笑うように、リノとミミルを見比べた。


「こはく、この子が灰色の子だよ」


「見れば分かるし、パチル」


少女はそっけなく返す。


そしてリノをまっすぐ見た。


「あんたが灰色リボン?」


リノは少し緊張しながら頷く。


「うん。リノです」


「ふーん」


少女はじっとリノを見つめた。


「あたしは橙野(とうの)こはく。黄色リボン代表」


「こはくちゃん……」


「ちゃん付けは早い」


ぴしゃりと言われ、リノは思わず固まった。


ひまりがすぐに眉を上げる。


「こはく、最初からそんな言い方しなくてもいいでしょ」


「別に。確認してるだけ」


こはくはリノから目をそらさない。


「灰色リボンなんて聞いたことない。代表候補って言われても、実力を見ないと信用できないし」


ミミルがむっとして前に出る。


「リノはちゃんと強いよ!」


パチルが横からくすっと笑った。


「こはく、ほんとは気になってるだけでしょ」


「パチル!」


こはくの頬が少し赤くなる。


「余計なこと言わないで!」


リノは少しだけ目を丸くした。


きつい子なのかと思ったけれど、完全に怖いわけではない。


その奥に、どこか素直になれない優しさが隠れている気がした。


こはくは小さく咳払いをして、もう一度リノを見た。


「まあ……逃げないなら、見ててあげる」


「うん」


リノは静かに頷いた。


「逃げないよ」


こはくは一瞬だけ目を細めた。


「……そう」


そのやり取りを見ていた緑代表の少女が、やわらかく微笑んだ。


「こはくさんは、言葉より先に雷が走るタイプですから」


「こはね、余計な説明いらない」


緑色のリボンを結んだ少女は、穏やかに立ち上がる。


淡い緑の髪。


周りには小さな葉っぱの光が漂っている。


「私は森宮(もりみや)こはね。緑リボン代表です。リノさん、初めまして」


「初めまして」


こはねの隣には、若葉色の耳をした星兎が静かに座っていた。


続いて、桃色のリボンを揺らした少女が、ぱっと笑顔を向ける。


桃瀬(ももせ)まひるだよ。桃リボン代表。よろしくね、リノちゃん」


ふわふわした雰囲気なのに、その瞳にはまっすぐな強さがある。


桃色の星兎が、まひるの横で小さく手を振った。


そして最後に、紫色のリボンを結んだ少女が、静かに目を細める。


月代(つきしろ)しおん。紫リボン代表」


月明かりのように冷たい雰囲気。


しおんの隣には、紫の耳先を持つ星兎が座っている。


しおんはリノを見つめたまま言った。


「灰色は記録にない色。警戒されるのは当然よ」


ひまりがすぐに反論する。


「だからって、リノちゃんを疑うのは違うでしょ」


「疑っているわけではないわ」


しおんは淡々と答える。


「前例のない力ほど、危険も大きい。それだけ」


円卓の空気が少し重くなる。


リノは胸元の灰色リボンを握った。


怖くないと言えば嘘になる。


自分でも、灰色リボンのことを全部知っているわけじゃない。


でも。


ここで黙っていたら、きっとまた誰かに決められてしまう。


自分の心の意味を。


自分の色の価値を。


「私は」


リノの声に、代表たちの視線が集まった。


「自分の力のことを、まだ全部知りません」


ミミルが心配そうにリノを見る。


リノは続けた。


「でも、自分の心を誰かに決めさせたくない」


灰色リボンが、ふわりと揺れる。


「人の心に値段をつけるような人たちには、絶対に負けたくないです」


円卓が静まり返った。


こはねが静かに頷く。


「心は、守るものですから」


まひるも微笑む。


「私は好きだな、その答え」


しおんは何も言わなかった。


けれど、リノを見る目がほんの少しだけ変わった。


こはくは腕を組んだまま、ふいっと顔をそらす。


「……まあ、言うだけなら誰でもできるけど」


パチルがすかさず言う。


「こはく、今ちょっと認めた顔してる」


「してない!」


その小さなやり取りに、重かった空気が少しだけほぐれた。


ラピスが円卓の中央へ進む。


「それでは、緊急魔法会議を始めます」


中央の魔法陣が光り、空中に映像が浮かび上がる。


黒いキャンディ。


禁止区域の研究施設。


巨大なクリスタル。


そして、ノワール・キャンディ商会の紋章。


三つの飴玉。


その中央を貫く、値札のような印。


代表たちと星兎たちの表情が一斉に険しくなった。


「ノワール・キャンディ商会」


ラピスの声が神殿に響く。


「彼らは、人の感情をキャンディに変え、それを商品として扱う組織です」


まひるの笑顔が消える。


「心を……商品に」


こはくが舌打ちする。


「趣味悪すぎ」


ラピスは続ける。


「彼らの狙いは、各色の代表です」


その言葉に、空気が凍った。


「代表は、その色の魔法少女たちの象徴です」


「代表を奪えば、その色に属する多くの魔法少女の心が揺らぐ」


「さらに、代表級の感情は、商会にとって最高級の素材になります」


ひまりが拳を握る。


「ふざけないで……!」


ピリカも赤いしっぽをぴんと立てる。


「ひまり、落ち着いて。でも怒っていい」


「うん。怒ってる」


るりは胸元の青いリボンに手を添えた。


「涙も痛みも、売り物なんかじゃない」


ポルルが静かに頷く。


「その通りだよ」


しおんが口を開く。


「問題は、なぜ今年なのか」


ラピスの瞳が細くなる。


「条件が揃ったからです」


リノは顔を上げる。


「条件……?」


「灰色リボンの出現」


ラピスはリノを見た。


「封印の揺らぎ」


空中の映像に、ひび割れた巨大クリスタルが映る。


「そして、黒いキャンディの完成」


黒いキャンディの映像が、不気味に回転する。


「この三つが揃ったことで、商会は大きく動き出しました」


リノの胸が冷たくなる。


自分がきっかけの一つになっている。


そう感じた。


ミミルがリノの手にそっと前足を重ねる。


「リノのせいじゃないよ」


「……うん」


リノは小さく頷いた。


けれど、その直後。


神殿全体が、大きく揺れた。


ドォンッ!


天井の星空に、黒い亀裂が走る。


「なに!?」


るりが叫ぶ。


次の瞬間、神殿の空中に青白い文字が浮かび上がった。



《スター・アラート起動》


緊急警報


星の神殿上空に未登録魔法反応。


黒いキャンディ反応、多数。


脅威レベル:測定不能。



ラピスが険しい顔で叫ぶ。


「来ました!」


神殿の天井に走った黒い亀裂が、ぱっくりと開く。


そこから無数の黒いキャンディが雨のように降り注いだ。


床に触れた瞬間、キャンディが割れる。


ぱきん。


ぱきん。


ぱきん。


割れた欠片から黒い結晶が伸び、次々とノイズへ変わっていく。


一体。


五体。


十体。


数えきれないほどの黒い結晶ノイズが、神殿の中にあふれ出した。


星兎たちが一斉に台座から飛び降りる。


それぞれの色の光が、代表たちのリボンへ流れ込んだ。


ピリカがひまりの肩へ飛び乗る。


「ひまり!」


「うん!」


ポルルがるりの隣へ。


「るり、落ち着いて」


「大丈夫……やるよ」


ミミルがリノの肩で小さく震えながらも、前を向いた。


「リノ、ボクもいる」


「うん。一緒に」


こはくの隣では、パチルがしっぽをぴんと立てる。


「こはく、出番だよ」


「言われなくても!」


こはくの足元に、琥珀色の火花が散った。


その中心に、ひらりと少女が降り立つ。


ふわふわのツインテール。


キャンディの包み紙のようなリボン。


甘い笑顔。


甘崎メイだった。


「ごきげんよう、代表のみなさま♪」


メイはスカートの裾をつまみ、楽しそうにお辞儀をする。


「本日は、ノワール・キャンディ商会の特別査定会へようこそ」


ひまりが炎のような目で睨む。


「ここはあなたたちの店じゃない!」


「でもぉ」


メイはにこにこ笑ったまま言う。


「最高級品が、こんなに集まってるんですよ?」


こはくのこめかみがぴくりと動いた。


「その呼び方、やめなさいよ」


メイはこはくを見る。


「あら。黄色代表、橙野こはくさん」


「あなたの光、すごく人気が出そうですねぇ」


こはくの周囲に、琥珀色の雷が走った。


「言ってろ」


次の瞬間。


ぱちん、と空気が弾けた。


こはくの姿が消える。


リノが瞬きした時には、こはくはもうメイの目の前にいた。


「遅い!」


琥珀色の雷をまとった蹴りが、メイへ向かって放たれる。


だが、メイの前に黒い結晶の盾が生まれた。


雷と結晶がぶつかり、神殿中に火花が散る。


ばちばちばちっ!


「わぁ、速い」


メイは嬉しそうに目を輝かせる。


「代表って、やっぱり高品質ですねぇ」


「商品扱いすんなって言ってんの!」


こはくが後ろへ跳ぶ。


その横に、ひまりが並んだ。


「こはく、合わせるよ!」


「命令しないで。合わせてあげるだけ」


「はいはい!」


ひまりの赤い炎が広がる。


こはくの琥珀色の雷が、その炎の周りを走った。


炎と雷が絡み合い、黒いノイズの群れへ向かって弾ける。


ドォンッ!


神殿の床が震え、ノイズがまとめて吹き飛んだ。


るりは両手を広げ、青い水の膜を作る。


逃げ遅れた星兎たちを包み込み、黒い結晶の破片から守った。


「みんな、こっちへ!」


ポルルが星兎たちを誘導する。


「焦らなくていい。るりの水壁の中へ!」


こはねが静かに手をかざすと、床から緑の光が伸びた。


蔦のようなリボンが神殿の柱に絡みつき、崩れかけた天井を支える。


「傷つける力だけが、強さではありません」


まひるの桃色の光が広がり、恐怖で動けなくなった星兎たちの心を包む。


「大丈夫。怖い気持ちは、ここに置いていって」


しおんは紫の影を広げ、ノイズの足元を縛り上げた。


「数は多い。でも動きは単純」


代表たちの力が、一斉に神殿を満たしていく。


リノは圧倒されていた。


これが、代表。


それぞれの色の中で、一番強い魔法少女たち。


ただ強いだけじゃない。


守る力。


支える力。


前に進む力。


それぞれの色に、それぞれの意味がある。


けれど、メイは少しも焦っていなかった。


「すごいすごい」


ぱちぱちと手を叩く。


「じゃあ、こちらも追加しますね♪」


メイが指を鳴らす。


黒い亀裂が、さらに広がった。


そこから、灰色がかった髪の少女が静かに降り立つ。


黒い制服のような衣装。


感情の薄い瞳。


「回収担当、灰音リゼ」


少女は淡々と名乗った。


「代表反応、複数確認。回収開始」


さらに、白銀の髪をした清楚な少女が、ふわりと現れる。


優しげな笑顔。


けれど、その瞳はどこか空っぽだった。


「宣伝担当、砂糖ユキノです」


ユキノは柔らかく微笑む。


「つらい気持ちは、売ってしまえば楽になりますよ」


リノの背筋が冷える。


メイ。


リゼ。


ユキノ。


商会の手下たち。


その全員が、代表たちを人として見ていない。


まるで、棚に並ぶ商品を見るような目だった。


ラピスが叫ぶ。


「全代表、戦闘準備!」


神殿の床に、六色の魔法陣が広がる。


赤。


青。


黄。


緑。


紫。


桃。


その光のそばで、星兎たちもそれぞれの担当の隣に並ぶ。


代表と星兎。


願いと契約。


その絆が、神殿の光を強くしていく。


ひまりが一歩前へ出た。


「もう二度と、諦めない!」


ピリカの赤橙色のしっぽが光る。


ひまりの周りに、赤い炎のリボンが舞い上がった。


「赤いリボンに願いを結んで!」


「レッド・リボン・ドレスアップ!」


るりは両手を胸に重ねる。


ポルルがそっと寄り添う。


「涙も痛みも、ぜんぶ包んで」


青い水の光が、花のように広がった。


「青いリボンに願いを結ぶ」


「ブルー・リボン・ドレスアップ」


こはくは黄色いリボンを強く握った。


パチルが隣でにやりと笑う。


「こはく、本気でいく?」


「最初から本気だし!」


琥珀色の雷が、こはくの足元から弾ける。


「泣いてる暇なんて、ないでしょ!」


雷が星形に弾け、黄色い光が彼女を包んだ。


「黄色いリボンに願いを結んで!」


「イエロー・リボン・ドレスアップ!」


こはねが緑の風をまとい、まひるが桃色の光を散らす。


しおんの周りには、紫の月影が広がった。


次々と代表たちが変身していく。


神殿の中が、色と光で満たされた。


最後に、リノ。


透明な席の前で、リノは立っていた。


代表候補証は、まだ色を持たない。


神殿もまだ、灰色を完全には認めていないのかもしれない。


けれど。


ミミルが肩の上で言った。


「リノ」


「うん」


リノは小さく頷く。


「色がなくても」


灰色リボンがふわりと揺れた。


「私は、ここにいる」


リノは胸元のリボンを握りしめる。


「くるくる結んで、きらきら光れ!」


灰色の光が広がる。


「涙も勇気も、未来へ結んで! 魔法になあれ!」


「マジカル・リボン・ドレスアップ!」


七色の魔法陣の中央で、灰色の光が星のように広がった。


その瞬間。


神殿の透明な席が、一瞬だけ白く光った。


リノは振り返る。


けれど、その光はすぐに消えてしまった。


誰も気づいていない。


ミミルだけが、小さく耳を震わせた。


「今……?」


しかし、考える時間はなかった。


メイがうっとりと笑っている。


「わぁ……」


「最高級品が、こんなにたくさん」


ひまりが炎のリボンを構える。


「私たちは商品じゃない!」


こはくが琥珀色の雷をまとい、前へ出る。


「代表を狩るっていうなら、やってみなさいよ」


るりも杖を構える。


「誰の心も、渡さない」


リノは一歩前へ出た。


「値段なんて、つけさせない」


その瞬間。


神殿の上空に、巨大な黒い値札の魔法陣が浮かび上がった。


低い男の声が、空から響く。


「では、始めましょう」


リノは息を呑む。


この声。


この前の通信で、メイを止めた声。


黒須ミカド。


「星の魔法会議」


「代表査定を」


黒い光が弾ける。


ノイズの群れが、一斉に代表たちへ襲いかかった。


リノは灰色のリボンを構える。


隣には、ひまり。


反対側には、るり。


そして少し前には、琥珀色の雷をまとったこはくが立っている。


こはくは振り返らずに言った。


「足引っ張らないでよ、灰色」


リノは少しだけ笑った。


「うん。こはくちゃんもね」


「ちゃん付けするなって言ったでしょ!」


パチルが横で笑う。


「でも、ちょっと嬉しそう」


「パチル!」


その声と同時に、代表たちの光が黒いノイズの群れへ向かって放たれた。


赤い炎。


青い水。


琥珀色の雷。


緑の風。


紫の影。


桃色の光。


そして、灰色のリボン。


星の神殿が、戦場になる。

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