↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リボンが黒く染まるまで 〜救うほど闇に近づく魔法少女になってしまいました…!〜  作者: ぽころっと
Chapter 4 心に値段はつけられない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/79

第49話 代表候補の招待状

星兎の里へ戻った頃には、夜空には無数の星が瞬いていた。


しかし、里に広がる空気は穏やかではない。


結界の修復に追われる星兎たち。


崩れた建物を直す魔法少女たち。


誰もが、先ほどの出来事の大きさを理解していた。


リノは広場で立ち止まり、静かに息を吐く。


「……あんな組織が、本当にいるなんて。」


肩の上のミミルも珍しく笑顔を見せない。


「ボクも初めて見たよ……。」


ひまりが拳を握る。


「あのメイって子……笑ってた。」


るりも小さく頷く。


「人の心を商品って言って……。」


その時だった。


「リノ。」


振り向くと、ラピスがこちらへ歩いてくる。


その表情はいつも以上に真剣だった。


「長老会議が終わりました。」


「何かわかったんですか?」


ラピスは静かに頷く。


「ノワール・キャンディ商会の狙いが。」


全員が息を呑む。


「彼らは、代表を狙っています。」


「代表……?」


ひまりが驚いた声を上げる。


「はい。」


ラピスは夜空を見上げながら続ける。


「各色の代表は、それぞれの魔法少女たちを導く存在。」


「その象徴を失えば、多くの魔法少女の心が揺らぎます。」


るりは顔を曇らせた。


「だから……私たち?」


「そうです。」


ラピスはリノを見る。


「そして、灰色リボン代表候補であるあなたも。」


リノはゆっくり拳を握った。


「……私も。」


その時だった。


突然、夜空いっぱいに巨大な魔法陣が広がる。


キィィン……


澄んだ鐘のような音が里中へ響いた。


星兎たちが一斉に空を見上げる。


そして青白い文字が浮かび上がった。



《スター・アラート》


緊急魔法会議開催


全代表および代表候補は


三日後


星の神殿へ集合してください。


議題


・黒いキャンディ


・禁止区域への侵入


・ノワール・キャンディ商会について



文字が消える。


静寂が訪れた。


ひまりが小さく呟く。


「魔法会議……。」


るりの表情も強張る。


「こんな急な招集、初めて……。」


ラピスは懐から小さな結晶を取り出した。


星型の青白い結晶。


それをリノへ差し出す。


「受け取ってください。」


「これは?」


「代表候補証。」


リノは驚いて目を見開く。


「えっ……!」


「灰色リボン代表候補として、正式に会議への参加を認めます。」


リノはしばらく結晶を見つめた。


自分が。


代表候補。


まだ実感が湧かない。


「……私でいいんでしょうか。」


ラピスは優しく微笑む。


「だからこそ、来てほしいのです。」


「灰色リボンについて知る者も、神殿には集まります。」


リノは結晶を胸に抱いた。


「……はい。」



その頃。


誰も知らない場所。


真っ黒な壁に囲まれた広い部屋。


棚には無数のキャンディ。


赤。


青。


黄色。


紫。


そして。


黒。


部屋の中央には巨大なテーブル。


そこへ一人の少女が飛び乗った。


「ただいまでーす♪」


甘崎メイだった。


くるくると回りながら笑う。


「リノちゃん、思ってた以上に可愛かったですよぉ。」


部屋の奥から、ゆっくり足音が響く。


コツ。


コツ。


コツ。


黒いローブ。


長いコート。


その人物は逆光で顔が見えない。


メイはすぐに姿勢を正した。


「ミカド様。」


低く落ち着いた声が返る。


「報告を。」


「はい♪」


メイは楽しそうに笑う。


「灰色リボン、確認しました。」


「封印も動き始めています。」


「黒いキャンディも問題なく運用できます。」


静かな沈黙。


やがて男は窓の外を見た。


遠くには、星の神殿が小さく見えている。


「条件は。」


「すべて揃いました。」


メイが嬉しそうに答える。


「じゃあ、今年ですね?」


男はゆっくり頷く。


「今年でなければ意味がない。」


その声には確信があった。


「十年以上待った。」


「灰色リボン。」


「封印の揺らぎ。」


「黒いキャンディ。」


「ようやく始められる。」


メイは嬉しそうに手を叩いた。


「収穫祭ですねぇ♪」


男は静かに首を横へ振る。


「違う。」


少しだけ笑う。


「査定の日だ。」


その言葉に、部屋の空気が冷え切った。


壁一面に映し出される資料。


赤代表。


青代表。


黄色代表。


緑代表。


紫代表。


そして最後に。


灰色リボン代表候補 リノ


その名前だけが、赤く光っていた。



翌日。


出発の日。


里の入口にはラピスと星兎たちが集まっていた。


「神殿までは少しです。」


ラピスが説明する。


るりは少し緊張した様子だった。


「代表さんたち……どんな人なんだろう。」


ポルルが優しく笑う。


「みんな強いよ。」


「でも、怖い人ばかりじゃない。」


ミミルも胸を張る。


「リノなら大丈夫!」


リノは少しだけ笑った。


「ありがとう。」


里のはずれには、丸い透明なカプセルがいくつも並んでいた。


しゃぼん玉みたいに透き通っていて、中には星型のクッションがふわふわと浮かんでいる。


外側には、小さな羽のような星飾りがついていた。


「かわいい……!」


るりが思わず目を輝かせる。


ひまりも少しだけ表情を明るくした。


「なにこれ。遊園地の乗り物みたい!」


ミミルが得意げに胸を張る。


「ほしふねカプセルだよ。星の神殿へ行く正式な移動手段なんだ!」


「これに乗るの?」


リノがカプセルに近づく。


ラピスは頷いた。


「はい。星の神殿は普通の空間にはありません。星の異空間を通らなければ、たどり着けないのです」


「星の異空間……」


リノは透明なカプセルへそっと手を伸ばした。


指先が触れた瞬間。


カプセルの表面が、かすかに震えた。


ひまりのカプセルは赤く光る。


るりのカプセルは青く光る。


けれど、リノのカプセルだけは。


何色にも染まらなかった。


透明なまま、静かに揺れている。


「……あれ?」


ミミルが首を傾げる。


「リノのだけ、色がつかない」


リノは胸元の灰色リボンに手を添えた。


「私が、灰色だから……?」


ラピスはほんの一瞬だけ、表情を曇らせた。


だが、すぐに静かな声で言う。


「灰色リボンは前例がありません。カプセルがまだ、あなたの色を認識できていないのでしょう」


「認識できてない……」


リノはカプセルを見つめた。


透明な光。


まるで、まだ名前のない星みたいだった。



カプセルに乗り込むと、星型のクッションがふわりとリノの体を受け止めた。


思ったより柔らかくて、少し安心する。


「わ、ふかふか!」


るりの声が隣から聞こえた。


「ほんとだ。ちょっと楽しいかも」


ひまりも笑う。


ラピスが前方のカプセルから声をかけた。


「出発します。途中、外へ手を出さないように」


「出せるんですか!?」


ひまりが驚く。


ミミルが慌てて首を振る。


「だめだめ! 星屑にくすぐられるよ!」


「それで済むの!?」


リノは思わず笑った。


次の瞬間。


ほしふねカプセルが、ふわりと浮かび上がる。


足元の地面が遠ざかり、里の灯りが小さくなっていく。


そして、空に浮かぶ星の門がゆっくり開いた。


カプセルたちは一列になって、その門の中へ吸い込まれていく。



星の異空間は、夜空よりも深い青紫色をしていた。


星が川のように流れている。


こんぺいとうみたいな小さな星が、カプセルの周りをくるくる回る。


遠くには、大きな星くじらの影が、ゆっくり泳いでいた。


「すごい……!」


るりが窓に張りつく。


ひまりも目を輝かせた。


「ほんとに星の中を進んでるみたい!」


リノも外を見つめる。


綺麗だった。


怖いことが続いていたのに、この景色だけは少しだけ心を軽くしてくれる。


けれど。


ふと、カプセルの外を何かが横切った。


白い髪。


閉じた瞳。


クリスタルの中で見た少女の影。


「……!」


リノは息を呑んだ。


「今、誰か……」


ミミルが振り返る。


「え? どうしたの?」


「外に、女の子がいた気がして」


ミミルはカプセルの外を見る。


けれど、そこには星屑が流れているだけだった。


「星くじらの影じゃない?」


「……ううん」


リノは胸元のリボンを握る。


灰色リボンが、ほんの少しだけ熱を持っていた。


遠くから、声がした気がする。


見つけて。


リノは小さく息を吸った。


「また……」


けれど、その声はすぐに星の流れに消えていった。



やがて、星の異空間の先に、大きな光が見えた。


カプセルたちがその光へ向かって進んでいく。


光の向こうに浮かんでいたのは、巨大な神殿だった。


星空に浮かぶ円形の建物。


白い柱。


七色に光るリボンの紋章。


その中央に、大きな星の円卓が見える。


リノは息を呑んだ。


「これが……星の神殿」


ほしふねカプセルが、ゆっくりと神殿の入口へ降りていく。


そして、リノの透明なカプセルだけが。


着地する直前、一瞬だけ。


灰色ではなく。


白く、淡く光った。


リノはその光を見つめる。


けれど、誰も気づいていなかった。



遠く離れた崖の上。


一人の男が星の神殿を見下ろいていた。


その隣には甘崎メイ。


メイは楽しそうに笑う。


「もうすぐですねぇ。」


男は静かに答えた。


「ああ。」


「魔法少女、代表狩りを始めよう。」


夜風が黒いコートを揺らす。


その視線の先には、星々に照らされた神殿が静かに輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。