↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リボンが黒く染まるまで 〜救うほど闇に近づく魔法少女になってしまいました…!〜  作者: ぽころっと
Chapter 4 心に値段はつけられない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/76

第47話 キャンディ組織

黒いノイズが消滅したあとも、星兎の里には重苦しい空気が流れていた。


空を覆っていた赤い警報表示は消えていたが、結界を修復する星兎たちが慌ただしく行き来している。


禁止区域の石門には、新たに刻まれた大きな亀裂。


先ほどの戦いの激しさを物語っていた。


リノはその門を見つめながら、小さく息を吐く。


「間に合って……よかった。」


「うん。」


ひまりも静かに頷く。


「あと少し遅かったら、門が壊れてたかもしれないね。」


るりはポルルにもたれかかりながら苦笑した。


「今日はいっぱい魔法使ったぁ……。」


「よく頑張ったね。」


ポルルは優しく頭を撫でる。


その時だった。


ラピスがゆっくり振り返る。


その表情は、里へ来た時とは別人のように険しかった。


「皆さん。」


「長老会へ来てください。」


「……?」


リノたちは顔を見合わせる。


「今回の件は、皆さんにも知っていただく必要があります。」


その一言だけで、事態の深刻さが伝わってきた。



星兎長老会


里の中央。


大きな円形の建物。


普段は誰も入れない場所らしい。


扉が静かに開く。


中には十数匹の年老いた星兎たちが集まっていた。


皆、表情が硬い。


ラピスが中央へ歩く。


黒いキャンディは銀色の結界に包まれ、台座の上へ置かれていた。


一匹の長老が震える声で呟く。


「……間違いありません。」


「黒いキャンディです。」


別の長老が目を閉じる。


「また現れたのですね……。」


部屋が静まり返る。


ひまりが我慢できず尋ねた。


「また……って?」


ラピスはゆっくり答える。


「昔にも、一度ありました。」


「星兎の里が襲われた事件です。」


「その時も……。」


ラピスは黒いキャンディを見る。


「この黒いキャンディが残されていました。」



商品


リノは恐る恐る聞く。


「これって……天城先生のキャンディなんですか?」


ラピスは首を横に振る。


「違います。」


即答だった。


「天城が作るキャンディとは根本から違います。」


るりが首を傾げる。


「どう違うの?」


ラピスは静かに説明を始めた。


「天城は、人の苦しみを止めるためにキャンディを使いました。」


「ですが、このキャンディは違います。」


ラピスの瞳が鋭くなる。


「これは。」


「売るために作られたキャンディです。」


「……え?」


リノたちは息を呑む。


長老の一人が続きを話す。


「人の心。」


「悲しみ。」


「絶望。」


「願い。」


「それらを無理やり取り出し。」


「価値を付け。」


「商品として売る。」


ひまりの拳が震える。


「そんなこと……。」


るりは信じられないという顔をする。


「人の気持ちを売るの……?」


「はい。」


ラピスは苦しそうに頷く。


「彼らは感情を”資源”としか見ていません。」



天城という男


リノは静かに口を開く。


「でも……。」


「天城先生もキャンディを使っていました。」


「なら……。」


「同じなんじゃ……。」


部屋が静かになる。


ラピスはしばらく黙っていた。


そして。


「違います。」


「天城も間違えました。」


「ですが。」


「少女たちを商品として扱ったことは、一度もありません。」


リノは目を見開く。


ラピスは続けた。


「昔。」


「組織は天城へ協力を求めました。」


「天城なら、より質の高いキャンディを作れると考えたのです。」


「ですが。」


「彼は拒否しました。」


「『救いを売り物にするつもりはない』」


「そう言って。」


リノの胸が少しだけ苦しくなる。


敵。


それでも。


天城先生は。


最後まで守ろうとしていたものがあった。



禁止区域


ラピスは立ち上がる。


「皆さん。」


「見ていただきたい場所があります。」


石門の前。


長老たちが魔法陣を展開する。


何重もの鍵。


封印。


ゆっくり。


門が開いていく。


ゴゴゴゴ……


冷たい空気が流れ出した。


中は廃墟だった。


崩れた研究施設。


砕けたクリスタル。


折れた柱。


壁には古い魔法陣。


るりが震える。


「ここ……。」


「昔。」


ラピスが答える。


「キャンディ研究施設でした。」


全員が息を呑む。




リノだけ。


灰色リボンが淡く光る。


「……?」


誰にも聞こえない。


小さな声。


「助けて……。」


リノは振り返る。


誰もいない。


もう一度。


「まだ……終わってない。」


「誰!?」


ひまりが驚く。


「え?」


「リノちゃん?」


「今……聞こえなかった?」


全員首を横に振る。


ラピスだけが。


リノを見つめていた。


「灰色リボン……。」


小さく呟く。


―――


一方その頃


暗い部屋。


棚いっぱいに並ぶ黒いキャンディ。


値札。


番号。


品質。


まるで商品だった。


ローブの人物が座っている。


部下が頭を下げた。


「試作品No.7。」


「失敗しました。」


「星兎の里の結界は破れませんでした。」


ローブの人物は笑う。


「問題ない。」


机の上には資料。


魔法少女一覧。


最後のページ。


灰色リボン代表候補 リノ


その名前を指でなぞる。


「面白い。」


「灰色とは。」


「まだ誰も味わったことのない感情。」


ゆっくり立ち上がる。


窓の外には夜空。


黒いキャンディを一粒持ち上げる。


「最高の商品になる。」


その言葉とともに、部屋の奥で無数の黒いキャンディが妖しく輝いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。