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リボンが黒く染まるまで 〜救うほど闇に近づく魔法少女になってしまいました…!〜  作者: ぽころっと
Chapter 3 もう一度、歩き出すために。

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第40話 ② 選択

リノは静かにクリスタルへ額を寄せた。


透明な結晶の向こう。


ミミルは眠ったまま、ぴくりとも動かない。


「……ねぇ。」


「ミミル。」


「聞こえてる……?」


返事はない。


静かな寝息だけが聞こえてきそうなほど、穏やかな表情だった。


リノはそっと笑う。


けれど、その笑顔はすぐに崩れた。


「ごめんね……。」


「約束したのに。」


『絶対守る!』


ミミルの笑顔が脳裏によみがえる。


『リノは一人じゃない!』


『ボクがずっと一緒だから!』


「……なのに。」


「私……。」


「何も守れなかった。」


ぽたり。


涙がクリスタルへ落ちた。


その雫はゆっくりと結晶を伝い、足元へ落ちる。


静かな音だけが広場へ響いた。


天城はリノの少し後ろで、その姿を見守っている。


決して急かさない。


決して声を荒らげない。


ただ、リノが自分の答えを見つけるのを待っていた。


しばらく沈黙が続く。


やがて天城が静かに口を開いた。


「リノさん。」


リノはゆっくり振り返る。


「あなたは、本当によく頑張りました。」


「……。」


「たくさん傷つきました。」


「苦しみました。」


「それでも、人を想い続けました。」


「……。」


「誰かを守ろうとした。」


「誰かのために泣いた。」


「だからこそ。」


天城は優しく微笑む。


「あなたの心は、とても美しい。」


リノは目を伏せる。


「……そんなこと。」


「ありません。」


「私は弱いだけです。」


「みんなに迷惑ばっかりかけて。」


「ミミルも失って。」


「何も……。」


「何も残ってない。」


天城は静かに首を横へ振った。


「残っています。」


「あなたの想いです。」


「その想いは、今も消えていません。」


リノは胸へ手を当てる。


そこには、もう契約の温もりはない。


けれど。


痛いほど鼓動だけは伝わってきた。


天城はゆっくり手を差し出す。


「リノさん。」


「もう、自分を責めなくてもいいのです。」


「苦しまなくても。」


「泣かなくても。」


「あなたは、もう十分頑張りました。」


リノは差し出された手を見る。


その手は温かそうだった。


怖くない。


優しい。


だからこそ。


心が揺れる。


鏡のリノが静かに現れる。


『もう頑張らなくていいよ。』


『誰も責めない。』


『ここなら、苦しくない。』


『もう学校へ行かなくてもいい。』


『車椅子で苦しまなくてもいい。』


『泣かなくてもいい。』


『ミミルも苦しまなくて済む。』


リノの瞳から涙がこぼれる。


「私……。」


「もう……。」


「疲れちゃった……。」


その言葉を聞いた天城は、優しく頷いた。


「ええ。」


「だからこそ。」


「休んでもいいのです。」


風が優しく吹く。


花びらが二人の間を舞う。


広場全体が静まり返っていた。


天城はもう一度手を差し出した。


「ここには、あなたを否定する者はいません。」


「焦る必要もありません。」


「誰かと比べる必要もありません。」


「あなたは、あなたのままでいい。」


リノはゆっくりと手を伸ばす。


震えている。


怖い。


でも。


その優しさに、心が救われそうだった。


「……。」


「私……。」


天城は穏やかな笑みを浮かべたまま言う。


「選ぶのは、あなたです。」


「私は、その選択を尊重します。」


リノは小さく頷いた。


そして。


「じゃあ……。」


震える声で呟く。


「お願いしま──」



「待ってーーーーーーー!!!!」


庭園中に響き渡る、大きな叫び声。


リノの身体がびくりと震える。


天城も静かに振り返った。


夜空を切り裂くように、一筋の赤い光が走る。


次の瞬間。


星の門が勢いよく開いた。


「リノちゃーーーーん!!」


聞き慣れた声。


忘れるはずのない声。


リノは目を見開く。


「……ひまり?」


門の向こうから、全力で駆け出してくるひまり。


肩にはピリカ。


その後ろには、ルルとノアの姿もあった。


息を切らしながら、それでもひまりは止まらない。


ただ真っすぐ、リノだけを見つめて走ってくる。


天城はその様子を静かに見つめ、小さく目を閉じた。


そして、穏やかな声で告げる。


「……皆さん。」


「お願いします。」


その一言が合図となるように、庭園の奥からゆっくりと複数の足音が響き始めた。


木々の影から現れる、新たな人影――。

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